作品タイトル不明
119.王都からの移籍組②
「で?お前ら名前は?」
ホモ疑惑のある奴はティッチの所に向かわせて残った3人に話を聞くことにした。ホモ疑惑の彼は多分失礼な事言ってティッチに牢屋にぶち込まれるだろうから数日は戻ってこないだろう。その期間に襲われただろうかもしれない誰かの尻は守ってやったぜ。
「僕はルスト。この4人パーティ『華開く』のリーダーです。王都では無所属です。盾使いなのでカルガーさんに教えを受けています」
口調が穏やかで害の無さそうな顔したルストがリーダーなのか?どっちかというとあの赤毛ツンツン頭で口調の悪いホモ疑惑の彼がリーダーっぽいけどな。
「私はエゲル。エルメトラさんに師事しています」
女神の名前を出した茶髪のこいつは、動きやすい恰好をしているが、装備をよく見れば魔法使いだと分かる。魔法使いってのはパっと見で魔法使いって分かる恰好している奴もいれば、モレリアやシリトラみたいに動きやすい恰好している魔法使いもいる。デカい魔法が得意で遠くから戦う奴は前者、小さい魔法で接近して戦うのが後者の場合が多い。
「・・・わ、私・・・ハーサ・・・ザリアさんを尊敬しています」
ザリアと同じでおどおどした感じのエルフの女。ザリアに師事しているだけあって性格もよく似ているな。斥候って臆病な奴が得意なのかな?
「そして今はいないけど口の悪いあいつはクタイッシュ。剣士なのでアーリットさんやクイトさんを師と仰いでいます」
自己紹介が終わった所で俺はようやく『アーリット』の顔を思い出した。
・・・・・・おお!ようやく分かった!アーリットってあの主人公みたいなお人よし野郎か!そしてこの街の男組合員ならみんなこっちの方が覚えているぜ。
「『アーリット』って『ナンバー3』か。だったらそう言えよ!」
「ああ、コーバスの3番目か。思い出したあいつか。そう言えばカルガーのパーティリーダーってそんな名前だったな」
「『ナンバー3』?えっと、それって何の話なの?アーリットさんの上に二人いるって本当?」
ペコーとゲレロの呟きにエゲルって女が反応したが、これって詳しい事言っていいのか?そうなるとあの『最低な3日間』の話になるんだけど・・・・。
・・・・いや、これは教えなくていいな。知りたきゃアーリット達に聞け。
「上に二人いるのは本当だ。聞きたきゃアーリット達に聞け!ここの連中は絶対に言わねえだろう。アーリット達からお前らが本当の仲間だと認められたら教えてもらえるはずだ」
うん。あの事件は俺らでもトラウマだからな。ゲレロなんて、組合長のせいで娼婦の言葉を素直に喜べなくなったと嘆いているんだ。それだけあの事件はコーバスに深い傷を負わせた悲しい事件だった。
って言っても女にとってはどうでもいい話だ。
「エルの名前久しぶりに聞いたなあ。元気にやっているみたいで良かったよ」
モレリアが女神の名前聞いてしみじみしている。女神がいなくなってどれくらいだ?まだ心が汚れてないといいけど、汚れてたらクイトをボコボコに・・・いや、それは女神が怒るだろうし、俺がとやかく文句言う事でもねえ。だったら大人の仲間入りを盛大に祝ってやろう。
「も、もしかしてあなたが・・・いえ、あなた様がモレリア様ですか?」
エゲルって女がモレリアをキラキラした目で見始めたんだけど・・・・こいつそんな目で見られる存在じゃねえぞ。
「そうだね。僕がモレリアだよ。聞くに君はエルから色々教えてもらっているみたいだね?エルの魔法はどうだい?かなり強くなったんじゃない?」
「はい、エルメトラ様より訓練で色々教えてもらっています。エルメトラ様の魔法ですが、既に5級にも劣りません。あの方の一撃で野盗の拠点をほぼ壊滅させた事もあります」
「へえー。エルは僕と違って一発の出力が大きかったけど、あれからもまだちゃんと修行は続けているみたいだねー。僕の事は何か言っていたかい?」
「はい、素晴らしいお師匠様と伺っています。エルメトラ様は今でも『師匠』には負けると本気で言ってました」
「それは言い過ぎだよ。単純な大魔法の連発なら多分僕はすぐに負けちゃうよ」
「『師匠』ならそう言うとエルメトラ様が言ってました。ただ、そうなる前に『師匠』なら近づいてきて近接魔法戦になって私は負けると言ってました」
近接魔法戦って何だ?普通の魔法使い同士の戦い方は魔法連発してそれをいかに打ち消すか押し切るかの勝負になる。それは距離が遠くても近くても同じだと思ったけど距離で言い方違うんだ。って事は遠くから魔法打ち合うのは遠距離魔法戦って言うのか?
「買い被りすぎだと思うけど・・・そう言えばエルはこれ指何本出来るようになった?」
そう言ってモレリアは片手の親指以外の指先4本からそれぞれ色の違うきれいな光の柱を生み出した。こいつは多分魔力で出来ていて、色が違うのはそれぞれの属性の色だからだろう。
「おお!何だこれ?モレリアこんなん出来るの?宴会芸にピッタリじゃねえか!」
「フフフ、ベイルこれはまだ初歩も初歩。見てごらん・・・・こうやると・・・」
俺が驚くと、モレリアが得意げに今度は両手の指全てから光の柱を生み出しやがった。しかも順番に色が変わっていくという芸まで見せる。
「おお!お前凄いな!今度俺が大道芸人やるから横でそれやってくれよ」
「な、な、な!何言ってるの!!??」
モレリアの凄い特技を見た瞬間、『これ俺が一張羅着て紙芝居している横でやってもらえればウケるんじゃねえ?』と思って言ったら、何故かエゲルが怒り出したんだけど・・・・?
「・・・え?普通にこんなん出来れば客が集まってくるだろ?」
「あなた馬鹿じゃないの??これがどれだけ凄いか分かってないの?」
・・・・・?凄いのこれ?宴会芸でしか輝かないだろ?
「私はまだ自分の得意属性で5本が限界。色変えは3本まで。エルメトラ様は10本出来ますが、色変えは7本までで、ここまで鮮やかに属性を変えられないのよ」
「むっふふー!どうだいベイル?僕は凄いんだよ。見直したかい?」
ドヤ顔のモレリアがうぜえ。
「この宴会芸のどこが凄いんだ?戦いで役に立たねえだろ」
「はあー。魔法使いではないあなたには分からないけど、これは非常に高度で洗練された魔力操作が必要なのよ。例えば私の魔力をモレリア様の出した魔力に合わせるわよ」
そう言ってモレリアとエゲルの指から出る魔力の光が繋がった。
おお!これ見た事あるモレリアと女神がやってたジェダイの騎士ごっこだ。俺もこれ試した事あるけど、どうやっても指先じゃなくて手からしか、ぶっとい魔力出せなくて諦めたやつだ。
「やっぱりこの宴会芸2人でやると映えるなあ。エゲルも今度俺の大道芸に参加しないか?」
「宴会芸じゃないって!何でこれの凄さが分からないの?今私とモレリア様の魔力が均衡を保っているのが分かるわよね?」
「ああ、丁度二人の真ん中当たりでエゲルの茶色の光とモレリアの水色の光が繋がっているからな」
「ここから少し私の出力をあげると・・・」
徐々に茶色の魔力が水色の魔力を押し返していく。
「こういう風に同じ出力にしないと均衡を保てないの。更に・・・色変えます」
そう言ったエゲルの茶色の魔力が緑色に変わると、モレリアの魔力も赤に変化する。
「はえー。こういうのも出来るのか。やっぱり映えるな。この宴会芸」
「頑なに宴会芸から離れようとしないのは何なの??違うって言ってるでしょ!これは瞬時に相手の魔法の属性と威力を読んで打ち消す為の訓練よ。指の数が増えれば増えるほど、並列思考して魔力をコントロールしないといけないから難易度が高くなる。しかも場所を選ばずどこでも出来る。よく考えられた訓練方法よ」
「そうかあ?チマチマしたのよりドカンと一発デカい魔法使えた方がいいだろ」
確か魔法使いの訓練は人気のない場所で、魔力切れまで全力でデカい魔法ぶっ放すって聞いたぞ。それで徐々に魔力量や威力が上がっていくって話だ。
「一発の出力には個人差があるからね。僕はあんまり一発に出力が出なかったから、威力は早々に諦めて魔力操作をとったんだ。そっちの方が生き残れると思ったからね。シリトラにはかなり協力してもらったよ」
「・・・・・生き残れる?」
「あ・・・あの・・・そう!僕はちょっと最初は魔法の威力が弱かったから、組合員として生きていけるか微妙だったからね」
モレリアもぺーぺー時代は苦労したんだな。