軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

117.報告

「そうか失敗したか」

「ですが、賭場と拠点を襲撃したのが効いたのでしょう。他の連中がかなり協力的になりました。これならコーバスにこちらの人を送り込めるのも時間の問題でしょう」

執事のその言葉に少し笑みを浮かべるボートレット侯爵。今まで何度かコーバスに人を送っていたが、悉く失敗していたので、これで次に進められると考える。

「ふむ。あの・・・何とかという土地無し。計画を聞いた時は無茶苦茶だと思ったが、やるではないか」

「ご当主様。ドルモル・ケバールシ子爵でございます」

「ふん、土地無しの名前など、どうでもいい。だが、まあいい働きだ。我が派閥に加わるのを許可する。ただし、いつでも切り捨てられるようにしておけ」

「承知致しました」

「出来損ない共も一緒に処理出来たのはいいが、『収集家』は少し惜しかったな」

金さえ出せばどんな仕事でもこなす専属契約していた暗殺者。今回の作戦に加えた方がいいと執事からの提案に乗ったが、 もう少し働いて欲しかったなと思うボートレット。

「奴も年には勝てなかったのでしょう。最近は指示よりも自分の愉しみを優先する事が目についたので、ここで一緒に処理出来て良かったと考えましょう」

「ハハハハハ!貴様も中々酷いではないか」

そう言って楽しそうに笑うボートレット侯爵だったが、ぴたりと笑いを止めた。

「それよりも問題はサファガリアだ。コーバスから来た話題の4級と既に専属契約していたとは・・・しかもあのでかい魔物のいるパーティだぞ!その飼い主の実家の貴族家も既に抑えられている。どうにかこちらの派閥に残らせる事は出来んのか?」

「かなり厳しいかと。既に我が派閥の会合や夜会の招待状に返事すら寄越しませんから・・・」

・・・・・苦々しくも思うが、最初に切り捨てたのはこちらだ。既に派閥内でもサファガリア家は中立派だと思っている家も多い。そこまではまだいい。ただもし万が一リエール派閥に入ったら我が派閥に亀裂が入る。

「・・・・暗殺は無理か?」

現当主が死ねば跡継ぎの若造なぞ、どうとでも言いくるめて再び派閥に戻す事も出来ると考え、執事に聞くが・・・・。

「不可能です。いまだ部隊は立て直し中。『第一部隊』も行方知れずの状況。ご当主様もご存じのはずです」

「・・・・・仕方ないか。今はコーバスと仕事に集中するか」

恐らくリエールもそう簡単にサファガリアを派閥に入れないだろう。恐らく数年はかかるはずだ。その前にこちらの部隊の準備が整い暗殺出来るだろう。それまでは我慢だな。

「新入り子爵には『商品』集めをやらせてみろ。ただし決してウチと繋がらないようにな。それから平民とは口も聞きたくないが、そうも言ってられない状況だ。仕方ないが、あの平民を呼べ!あいつにも部隊の立て直しが終わるまで仕事をしてもらう」

ボートレット侯爵のその言葉を聞くと、執事は礼をして、その場を後にした。

「おいおい、『収集家』かよ。また懐かしいな」

トレオンから報告を聞いたジークは驚きの声をあげる。

「あいつとは限らないでしょ。そもそも10年以上姿見せなかったし、死んだか引退したって話だったよ」

そこを事情を知っているロッシュが口を挟んでくる。

「リーダーも組合長も知っているその『収集家』ってどんな奴だ?」

「トレオン達は知らなくて当然。『収集家』ってのはかなり前のボートレットの元3級組合員で、隠れて組合員狩りをしていて、それがバレて組合を追われた奴だよ」

「そこからはまあ、よく聞く話だ。裏の世界の住人になって、色々と汚れ仕事をするようになった。当時の組合員も何人もあいつに暗殺されたと言われている。そしてあいつが有名になったのは、当時の4級組合員を暗殺したからだったな」

「元3級の癖に4級暗殺とは凄いな」

「ただ、それ以降はぱったり話を聞かなくなったんだ。噂では深手を負って引退したとか、死んだとか言われていたけどね。僕も当時は任務でしばらく探していたけど、見つからなかったんだ」

「年齢的には近くて、『員証集め』に、暗殺者には珍しい盾持ち・・・・俺は本物だと思うけどな」

「そうかなあ・・・今更出てくるもんかなあ」

「そいつが本物だろうが偽物だろうがどっちでもいいじゃろ。それよりもボートレット側はこれで手を引くかのう?」

「引くと思うか?ユルビル。あの『魔法鞄』は王都でも早速凄い騒ぎになっているんだ。それに相手はウチの領主様と仲が悪く黒い噂の絶えないボートレット卿だぞ」

「組合長のいう通りだよな。あいつが諦める訳ねえよな」

「うむ、未だにやっているみたいだからな」

「話を戻すよー。トレオン、こいつらの強さはどうだった?」

「・・・・俺がやりあった奴は結構強かったぜ。薬漬けの方は大した事なかったけどな」

「お主が強いと言うのは珍しいのう。という事は今回は結構本気で戦力を揃えてきたって事じゃろうか?」

「まあ、暗殺者は多かったがほとんど薬漬けだったからな。そうじゃないのは多分俺が相手した奴含めて3人だな」

「他二人の強さはー?」

「ゲレロが盾持ってねえ時は苦戦して、盾がありゃあ楽勝とか言うレベルだ。ベイルの方は見てねえから知らねえ。ベイルはクソ雑魚って言ってたけど、あいつそれしか言わねえから分かんねえ」

「ベイルらしいなー。っていうか今回もミミズもまーたベイルが絡んでいるんだけど本当に偶然なの?」

「リーダー。賭場の方は店を選んだのは俺だから偶然だ。ミミズは知らねえ」

「ミミズも偶然だ。ロッシュお前ベイルを警戒しすぎだ。あいつはマジで何も考えてねえよ。その証拠になるか分からねえが、あの騒ぎの後、ティッチに連行されて取り調べ受けたらしいぞ」

「あいつ何してんの?」

「そんで取り調べ中にティッチにまだ処女か?って最低な質問して怒らせたんだとよ。トゥリオが教えてくれた」

「・・・・あいつ馬鹿じゃねえの?」

「・・・・はあー。僕の考え過ぎなのかなー」

「よく来てくれた、クライムズ伯」

「何度も訪ねて悪いな」

そう言いながら私はサファガリア伯と握手をしてから、いつもの定位置の席に腰掛け、話を始める。

「計画は順調、リエール候も派閥内で根回しを始めてくれるそうだ」

「それはいい知らせだ。だがまだ、ボートレット側には知られないように注意しないとな」

サファガリア伯の言葉に私も同意だ。あいつにこの話が漏れた時には全てが手遅れの状態にしておきたい。

「とは言っても既に我らの動く所は終わっているから、後は待っているだけだったんだが・・・・お前の街は大人しく出来んのか!」

「私に言うな!それに『魔法鞄』は全くの偶然だ。他の街でもいずれその魔物が見つかるだろう。それよりもそちらの専属契約している組合員パーティだ!ずるいぞ!元は私の街の所属だったんだぞ!」

最近コーバスから王都に移籍してきた『全てに打ち勝つ』という名前の4級パーティが、素晴らしい活躍をしている。ティガレット嬢が襲われていた所を助けたパーティというのが私の認識だったが、王都に来てからは凄まじい活躍を見せ、今では次期5級最有力とまで言われている。そんなパーティに移籍前から専属契約をしていたのがサファガリア家だ。

「その文句は娘に言え。コーバスに行った時に既に約束はしていたらしいからな。それにフェドリ家の娘は両家で契約しているではないか」

「そうは言っても、あの娘、今度はレッサーウルフを三匹連れ歩いているそうではないか!しかもサファガリア家の家紋のみ付けて!なんでタロウみたいに我が家紋も付けてくれないのだ!」

「それは許可していないそちらが悪い。我が家の家紋は自由に使っていいとフェドリ家の娘にはティーから言ってあるからな」

ぐぬぬ。またティガレット嬢の入れ知恵か。恐らくレッサーウルフを懐かせる方法はコーバスのゴドリックと協力者しか知らないと言うのも嘘だと知っていたんだろう。

そして専属契約もあの娘の提案によるものだと聞いている。あの娘どれだけ凄いんだ?

「ティガレット嬢はどれだけ先を読んでいるんだ?」

「ティーもこれ以上はどうしようもないと言っていた。頼むからこれ以上そちらの領の価値をあげないでくれよ」

そう言われてもコーバスが勝手にやっている事だからどうしようもない・・・更にここに来る前に、ダンオムから『オークが・・・』とか言う報告書が送られてきたが読みたくないから逃げてきたというのに。

今その事をここで話すと怒られるだろうだろうから黙っておこう。

・・・・

・・・はあー。帰ってから報告書に目を通したくないなあ。