作品タイトル不明
116.裏社会抗争のとばっちり③
なんて思いながらも、相手が油断している隙に足元に転がる残骸を思いっきり蹴り飛ばす。
「チッ!!」
油断していた変態が舌打ちしながら、他3人と二手に分かれて残骸を躱すが、一人動きが遅えのがいる。もしかして俺が最初に投げた椅子に当たった奴か?まずはこいつからだな。
そいつに狙いを定めて距離を詰めようとするが、変態と暗殺者三人から投げナイフが飛んできて、中断せざるをえない。
邪魔くせえええ。
「お前とは距離を取って戦えばいいんだろう?無茶苦茶な攻撃できないように武器になりそうな物はバラバラにしたしな」
俺が距離をとると、変態が自慢げに話をしだす。
ああ?こいつ俺の攻略法考えてきたのか?・・・・ハハハ!おもしれえ!そんな下らねえ事で俺を倒せるってその考えがおもしれえ。
「なら、やってみろ!」
そう言って再び足元の瓦礫を動きの遅い暗殺者に向かって蹴り飛ばし、距離を詰める。さっきと同じで変態と暗殺者三人が投げナイフを投げてくる。このままならさっきと同じ展開だけど、俺は大鉈も抜いて既に武器二つ持ちだ。飛んでくるナイフを躱したり武器で叩き落としていく。
「ハイ!終わ・・・チッ!!」
距離を詰めて、一匹目を殴りつけて終わりだと思ったのに、直前で足元に殺気を感じたので、慌ててその場を飛びのくと、足元から土で出来た円錐状の塊が飛び出してきた。
・・・・・そう言えば、あの変態暗殺者、魔法使えるんだったな。流石に室内で火魔法はぶっ放してこないとは思うが、警戒だけはするか。
飛び退きながらそんな事を考えつつ、こん棒を適当な暗殺者に投げつけ、手が空いたので絶無投を変態に投げつける。どっちも軽く躱されるが、これは予想通り。そのまま振り返り、背後の暗殺者に残った大鉈を投げつけるが、それも躱される。
ただなあ、絶無投ってのは無くさない為に紐がついてんだ。そんで俺はまださっき変態に投げた絶無投の紐握ってるんだ。漫画とかでよくある投げた武器が戻ってきて相手を斬るとか真似出来たら恰好いいなと練習した事あるんだけど、流石に絶無投じゃ難しいって結果に終わった。ああ言うのは手裏剣とかチャクラムじゃねえと無理だ。ただ、その練習の副産物で絶無投を振り回して当てるのは上手くなった。
そんで狙いの暗殺者は今は飛んでくる大鉈に意識を向けて俺が振り回す絶無投の方に躱してくる。俺も絶無投の方に躱すように少しズラして大鉈投げたからな。完全に意識を大鉈に向けて絶無投の方に向かってくる暗殺者。
・・・その頭にきれいに俺の絶無投が当たる。やっぱり都合よく刺さらねえなあ。
「・・・・・・・」
ただ、全くの意識の外から絶無投に当たった暗殺者は、無言で倒れ込み動かなくなった。多分気を失ったな。
「貧乏ナイフ如きに!」
「絶無投だって言ってんだろ!何で誰も正式名で呼ばねえんだよ!」
変態の言葉に反射的に抗議する。そもそも他所の街でも貧乏ナイフって呼ばれてんの?今度『快適』か『全力』の連中に聞いてみるか。あいつらなら護衛依頼で他所の街よく行くから知っているだろ。
っと!集中、集中。
飛んでくる3本の投げナイフを躱しながら、再び足元の瓦礫を暗殺者に蹴り飛ばす。ついでに絶無投を変態に投げつける。ここでさっきと違うのは、俺が向かうのが気絶している暗殺者だって事だ。変態はさっきの事が頭にあってか、絶無投に意識を向けたおかげで俺への狙いが甘い。躱すのは暗殺者二人からの投げナイフ。こいつら上下に投げ分けてこねえから、前にどっかで戦った連中より腕は下手だ。だから、スライディングで余裕で躱せる。
・・・・・
・・・・・そうして
「ハハハ!武器と盾ゲットおおお!!」
気絶している暗殺者の足を持って立ち上がり喜びの声をあげる俺。さっきの躱されたらもう『身体強化』使うしか手は無かったんだが、これなら大丈夫だ。よーし、こっから反撃だぜ。
飛んでくる投げナイフは掴んだ暗殺者を盾にして楽々防ぎながら、今度こそ動きの悪い暗殺者に距離を詰める。
が、あと一歩と言う所で再び足元に殺気を感じる。
土魔法だが、来ると分かっていれば余裕で躱せる。しかも単発で足止め狙いの魔法だ。ここで強い魔法や連発して仕留めにこねえのは、あの変態は人を痛めつけて苦しむ姿見るのが好きだからだろう。一発で仕留めたら愉しめねえもんな。
そうして足元に魔法が発動する前に俺は手に持つ暗殺者をぶん投げている。距離も大分詰めているので、当然躱せるはずもなくぶち当たって吹き飛ばされる動きの遅い暗殺者。そこに駆け寄り、頭に蹴りぶち込んでから持ち上げたら二本目のこん棒ゲットだぜ!
「・・・・撤退だ」
俺が二人目を倒して持ち上げたらあっさりと変態が撤退を選択した。
・・・・が、俺がそれを許すと思ってんのか?
流石にここで逃がすのは面倒くせえ・・・っと?
変態の声で残った暗殺者が俺に距離を詰めて斬りかかってきやがった。その間に変態が部屋から飛び出して行く・・・・撤退ってお前だけかよ!
襲ってきた暗殺者に二人目の暗殺者を叩きつけて、行動不能にしてから変態を追いかける・・・・つもりだったけど、ふと、思いついて、見えない所から変態が逃げて行った方に最初の暗殺者を放り投げる。
ドン!!っとでかい音がして周りが明るくなり、熱風が部屋の中に広がる。
・・・・やっぱり待ち伏せしてやがったか。俺が追っかけてきたら火魔法当てるつもりだったな。狭い廊下じゃ除けようも無いから、気付かなかったらヤバかったな。流石にあの変態も今回の戦いで、俺は遊んでられる相手じゃねえとでも思ったんだろう。次は遊んでこねえだろうな。
廊下から響く遠ざかる足音が聞こえてくるので、追いかけるかどうか迷うが、まーた廊下で火魔法使われたら面倒なので、追いかけない事にした。
しっかし、まーた逃げられちまったよ。残った暗殺者は多分薬中だから、何も喋らないだろうなあ。取り合えずゲレロ達の様子でも見てくるか。
■
「ベイルは、まーた逃げられたのかよ」
「うるせえ!てめえらも逃がしたんだろ!」
奥の部屋に行くとゲレロ達の方も戦いは終わっていた。どうもあの火魔法が撤退の合図だったみたいで、音が響いたらゲレロ達と戦っていた連中は撤退していったそうだ。こっちを襲ってきたのは8人で2人逃がしたそうだ。
「ああ!クソ!予約の時間がああああ!!」
・・・・・ゲレロは今は機嫌悪そうだから話かけないでおこう。
「そんで何か手がかりは見つかったか?」
「いや、こいつら武器しか持ってねえ、金もないから徹底してんな」
トレオン達の方もそうか。俺の倒した連中も何も出てこないだろうな。
・・・・
俺の予想通り倒した連中からは何も情報が得られなかった。
「クソが!こっちはさっきので幹部3人もやられてるんだぞ!」
どうやらタンダはさっき待ち伏せされた所で部下を3人やられたらしい。
「こっちばっかり攻められて嫌になるぜ。連中の拠点さえ見つかればどうにか出来るってのによ」
「調べちゃいるが、さっぱりだ」
どう見てもあの変態達はプロの暗殺者だったからな。そう簡単に拠点なんて見つからねえだろう。
なんて思っていたけど、トレオンが何か思いついたのか俺に聞いてきた。
「なあ、ベイル、賭場からここに来て連中が襲ってくるまでどれぐらいかかった?」
「ああ?覚えてねえけど、多分鐘半分ぐらいじゃねえ?」
「そうすると、賭場襲ってからここ襲うってのは決まってたって事だよな?」
時間があまりにも早すぎるから、この一連の敵の動きは最初から計画されていたってのは俺でも分かるぞ。
「まあ、そうなるな」
「多分どこかで俺らの相手した部隊と合流したはずだが、あんな恰好していりゃ、嫌でも目立つから外で待ち合わせなんてしねえ」
「って事はどこか近くに拠点があるって事か!」
おいおい、トレオンどうした?頭が冴えてるじゃねえか?
「しかも賭場襲ったのは、タンダ達幹部をここに集めるのが目的だったのかもしれねえ」
「そうすると、それを監視できる場所って事か?」
「そういう事だ。ただ、すぐに拠点移すだろうから、襲うなら今しかねえ。どうする?」
「行くに決まっているだろ。さっさと終わらせてゆっくり寝てえしな」
「ゲレロ!てめえはどうする?」
「行くに決まってんだろ!『高級服』の仇は絶対とってやる!!」
・・・・別に『高級服』死んでねえだろ。
ゲレロの答えに呆れながらも俺達は外に飛び出して周囲を確認する。
・・・・・どの建物が怪しいか分かんねえ。
「多分あれだ!行くぞ!」
トレオンの奴、何で分かるんだ?
不思議だけど、今はこいつを信じるしかねえ。トレオンの後をついてスラムの無茶苦茶な建築物の間を抜けて、とある建物に入るとマジで暗殺者が3人いやがった。しかもトレオンの予想通り引っ越し作業中みたいで荷物を纏めている所だった。
「ハハハ!逃がさねえぞ!」
「俺の『高級服』!!死ねえ!」
どう見ても悪役のセリフを吐きながら敵に斬りかかるトレオン。ゲレロは言いがかりに近い事を叫びながら、さっきタンダの所で借りた盾を構えて距離を詰めていく。
そして、俺は・・・・
「今度はこっちから遊びに来てやったぜ」
「再戦は翌日からしか受け付けてないんだがな」
俺と全く同じ返しをしてくる変態。捻りも全くねえ、ただのパクリだ。
「今度は邪魔が入らねえから、決着をつけてやるよ。もう逃げんじゃねえぞ」
「手駒を使い切ったから仕事は終わりだ。もう逃げん」
あれ?こいつの狙いはタンダじゃねえの?
「それよりもここには何もないぞ?お前の得意戦法は使えないぞ?」
言われて見れば、変態のだと思われるリュックが一つ部屋に転がっているだけだ。気付いたらゲレロもトレオンも部屋にいねえ。
「まあ別にいいさ。てめえぐらい、こん棒だけで倒してやるぜ!」
そう言って俺は絶無投を投げ距離を詰める。
「『こん棒だけ』と言わなかったか?」
「馬鹿か!組合員に正々堂々の戦いを求めるな」
絶無投を軽く躱した暗殺者は俺のこん棒を盾で受け止めたので、大鉈で下から斬り上げるが、そいつは変態の持つ剣で止められた。
「全く・・・組合員は相変わらず正々堂々と戦わんな」
「ハハハ!勝てば何してもいいんだよ!」
そう叫びながら変態に蹴りを放つが、後ろに下がって躱される。員証集めているだけあって組合員との戦い方がよく分かってやがる。けどこいつには魔法があるから距離はとらせねえ。攻撃あるのみ。
「チッ!!」
「てめえには魔法は使わせねえよ」
魔法使うにはどうしても集中がいるからな。動きながら程度なら使えるが、こうも猛攻受けてちゃ使えねえだろ・・・・しかし堅えな。防戦一方の変態の守りを抜けない。こいつもしかして結構強い?
「くっ!!」
と思ったけど、俺の攻撃を受け続けて限界が来たのか、変態は辛そうな声をあげる。それでも構わず猛攻を続けた結果・・・
「ぐあ!!!盾の上からでもこれか!馬鹿力が!」
限界が来たのか盾を持つ手がダラリと下がる変態暗殺者。こうなれば勝ち確だ。反対の手に持つ剣で大鉈を受けるが、もう盾で受けることが出来なくなった俺のこん棒が頭に叩き込まれ勝負ありだ。
念の為に力なく崩れ落ちた変態暗殺者の首に大鉈叩き込んで、万が一爆散した時の為に距離をとっておく。
「お?ベイルも終わったか?」
「たった今だ。ゲレロは・・・引き摺っているの見れば分かるな。あとはトレオンだけだ」
距離をとった所で、ゲレロが腹に穴が開いた死体を一つ引き摺りながら戻ってきた。
「あちゃあ、俺が最後かよ。お前らの相手弱すぎだったんだな」
すぐにトレオンもムカつく事言いながら首の取れかけた死体を持って帰って来た。
「お前が弱すぎるだけだろ」
「ベイル、のるなって。さっさと漁って何か情報が無いか探そうぜ」
■
漁ったけど結局何も情報は出てこなかった。
「結局情報は何も出てこなかったな。金は分けるとしてこいつらの装備どうする?」
「売って金にして山分けでいいだろ」
「こいつら結構いい装備してんな」
「薬中じゃなかったから、こいつらが指示だしてたんじゃねえ?」
聞けば最後のトレオンとゲレロが相手した奴も会話が出来る暗殺者で薬中暗殺者達より強かったそうだ。それなら何か分かるかと思ったけど、こいつらも流石にプロなだけあって情報は何も持ってなかった。
「これで全員かどうかは知らねえけど、取り合えず顔見られた奴は全員殺したから、終わりにしとくか」
「だな。ベイルの言う通りどっちにしても、これ以上は俺達じゃどうしようもねえ。後はタンダ達に投げればいいだろ。それに敵の目標はタンダ達だ。襲うにしても先にそっちだろうからな」
「それじゃあ、俺がタンダ達呼んできてやるから、ここで死体見張っておいてくれ」
トレオンがタンダ達を呼びに行っている間に俺とゲレロは死体や持ち物をまとめておく。
「しかしこの変態、いい年したおっさんじゃねえか。暗殺者とかやってねえで、田舎で大人しく畑耕してろよ」
この変態暗殺者の素顔はなんかどこにでもいそうなおっさんだった。更に・・・。
「俺の殺した奴もおっさんだな。トレオンの方もだな。暗殺者っておっさんじゃないとなれねえのかな」
そうなんだ。何故か3人とも40代ぐらいのおっさんだったんだ。何?暗殺者っておっさんじゃねえとなれねえの?
「そもそも暗殺者ってどうやたらなれるんだ?どこかで募集でもしてるのか?」
「公然の秘密だが、デカい街には大抵闇ギルドがある。そこで暗殺の依頼があるんだ」
後ろからの声に振り返ればタンダ達が部屋に入ってくる所だった。教えてくれたって事はタンダは闇ギルドがどこにあるか知っているんだな。
「コーバスには無いのか?」
「ここからだと領都が一番近い。どこにあるかは言えんが、俺達もたまに依頼を出したりする」
「俺達の暗殺なんて依頼すんなよ」
暗殺依頼される程、恨まれるような事してたら組合から除名か牢屋にぶち込まれる方が先だろうけどな。
「しねえよ。それに組合員の暗殺は不人気依頼だから報酬高くしねえと誰も受けないらしいぜ」
「標的が組合員は面倒くせえな。俺が暗殺者でも受けねえぞ」
トレオンはどっちかというと暗殺者よりも野盗が似合っているな。
「だな、気付かれたら確実に殺し合いだ。ヘタしたら返り討ちにあうぞ。こいつらみたいにな」
ゲレロが指差す先には3人の死体が転がっていて、それをタンダの部下達が色々検分している。後はタンダに任せればいいか。
「取り合えずこれで俺達は帰るからな。また敵が襲撃してきたら組合に連絡してくれよ」
そう言って俺達はタンダと別れた。装備品は色々調べたいからとタンダ達が買い取ってくれたから、今日はこのまま解散だ。
ゲレロはまーだ『高級服』が諦められないのか、速足で娼館に向かって行った。トレオンは明日早いからと目を擦りながら自分の常宿に戻っていった。
俺は寝るにはまだ少し早いなあと思ったので、適当な酒場で一杯やろうとしたんだ・・・。
なのにさあ・・・。
「ほら、さっさと洗いざらい今日の行動を吐け!」
なーぜか取り調べ受けてんだよ・・・・何で??と言いたいが、悪いのは俺なんだ。
・・・・帰り道兵士が必死こいて走り回っているなと思ってたんだよ。
で、そこを偶然通りかかったティッチに『どうしたの?」と声をかけたら、『賭場が襲撃を受けた』とか言うじゃねえか。思わず『ああ、あれか。もう終わったぜ』とか口を滑らせちまったら、そのまま連行されて尋問されてるって流れだ。
「・・・うむ。まあいい、事情は分かった。タンダの方からもお前らは巻き込まれただけだと証言を受けた」
「だろ?だったらもう帰っていいよな?」
「待て。このお前が倒した暗殺者だが、員証集めは分かるが・・・その・・・何だ・・・ぶっかけるってのがよく分からんのだが・・・お、男はそういうのがいいのか?」
・・・・真面目なティッチが凄い所に食いついてきたな。
「俺は全く理解できねえけど、そういうのが良いって奴もいるみたいだぜ。そういうのを見学できる店があるらしいから、今度モレリアに教えてもらえよ」
そう言うと、下らねえ内容なのに何故かしっかりメモを残すティッチ。それ絶対メモに残す必要ねえだろ。
「ティッチ、その情報はいらんぞ。ベイルもうちの小隊長に変な事吹き込むなよ」
そう言いながら部屋に入ってきたのは中々ダンディなおっさんだ。この人はこの街の兵士のトップ、兵士長のトゥリオ。この街出身の元4級組合員で、結婚して組合員から兵士にジョブチェンジしたらしい。ティッチ曰く腕はそこそこだが、状況判断や指示は的確で、この街出身って事もあり、顔も広く、コーバスを知り尽くしているような人らしい。
ティッチ達が兵士になってから、紹介されて顔見知りになったぐらいの付き合いだ。
「吹き込んでねえよ。っていうかティッチがこういのに食いつくとかどうしたんだ?変なもんでも食ったのか?」
「食べてない!ベイル!私に喧嘩を売っているのか?」
「アッハッハッハ!違う、違う。今度うちの小隊長は結婚するんだ。それで今は色々勉強中って所だ」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・は?
・・・け、結婚?ティッチが?
「嘘だ~」
「嘘じゃない!!」
おお、マジでキレだした。この感じマジなの?
「幼馴染だそうだ」
固まっていると、トゥリオが相手を教えてくれた。
「ティッチってこの街出身だったのか?」
「いや、領都から少し離れた小さな村が故郷だ。彼とは偶然コーバスで出会った」
「きゃあああー『彼』だって!トゥリオさん聞きました~。あのティッチが『彼』とか嘘でしょ~」
「黙れ!」
「いつだ?いつからだ?もうチューしたのか?体は許したのか?いや、真面目なティッチが婚前交渉はするはずねえか?お前まだ処女なの?」
「殺すぞ!」
「あ、ハイ、スミマセン」
「す、凄いな。普通は一度目の警告でみんな黙るのに、そこから更にティッチを煽る・・・というかそんなふざけた事聞く奴はそうそういないぞ」
トゥリオは変な所で感心しているな。ティッチにこれぐらいの煽りは普通にみんなやっているぞ。3回目はマジで怒るから流石にやらないけど、2回目までは謝ればティッチは許してくれるんだよ。知らねえの?
「そんでその彼はコーバスに何しに来たんだ?結婚したら故郷に帰るのか?」
「いや、彼は領都の商会の支店を開く為に、ここに来たんだ。だからこの街で暮らす事になる。そもそも私たちの故郷は野盗に襲われてもう無いからな。帰るにしても墓参り程度だ」
おっと、ティッチの意外な過去を知ってしまった。野盗をあんだけ憎んでるのはそれが理由か?あんまり深入りするつもりもねえけど。
「まあ、いいや、お幸せに。俺から教えられる事は何もねえけど、困ったらリリーにでも相談してみたらどうだ?あいつ結婚して子供もいるし女同士だし色々聞きやすいだろ」
「・・・・そうか。リリーがいたな。分かった。情報感謝する」
いやあ、捕まった時は面倒だと思ったけど、中々面白い話が聞けた、しばらくは組合でティッチの結婚が酒の肴にできるな。