作品タイトル不明
115.裏社会抗争のとばっちり②
「はあ。今回は巻き込んで悪かった。お前ら有名人でもそんな怪我するぐらいだ。やっぱり敵は強いな」
あの後、トレオンと殴り合っていたら、ドズとボスの話が終わったのか、鉄格子の中に入れてもらえた。そこから迷路みたいになっている廊下を歩き、ボスのいる部屋に案内されたらこの言葉だ。
・・・この怪我はたった今、トレオンと殴り合いした時の怪我なんだ。勘違いさせてごめんな。
そんなボスの周りにはドズの他にも幹部っぽい連中がたくさんいるから、色々話をしていたんだろう。
「取り合えず、賭場から隠し通路案内してくれた奴の持ち物は返しておくぜ」
「ついでに襲ってきた連中の持ち物もな」
そう言って、袋に入れていた持ち物をボスの前に投げると、脇を守る連中が中身を確認する。
「・・・・・」
「そうか・・・こいつらが持ってきた死体は?」
「・・・・・・」
何でこいつら耳元でボスに報告してんだ?別に普通に話せよ!気になるじゃねえか!
「すまんな。こっちもいきなり襲撃受けて、更に情報が色々漏れていて誰を信じていいか分からねえんだ。そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺はこの辺を縄張りにしているタンダってんだ」
そう言って名乗ってくれたボスことタンダに俺達も名前を名乗る。ドズも言っていたけど俺らは名乗らなくても向こうは知っていたみたいだけどな。
「まあ、どうでもいいけどよ。俺らの疑いは晴れたって事でいいのか?こっちは今回の抗争に巻き込まれただけだって分かって欲しくて、ここまで来たんだからな」
「それについては約束しよう。ただ、向こうは知らんぞ。一般人は巻き込まないと言う暗黙の了解を破ってまで襲撃してきてんだ。更に交渉しようにも向こうに窓口がねえんだよ。だからあんたらの誤解を解くのも無理だ」
おいおい、そうなると、向こうの勢力から延々と暗殺者送り込まれるって事になりそうって思ったんだけど、そう思ったのは俺だけだったみたいだ。
「マジで勘弁してくれよ。宿でおちおち寝てられねえぞ」
「ガハハハ!頑張れベイル。俺とトレオンはこれで終わりだ」
「はあ?何でだよ!てめえらも向こうの連中殺しただろ?」
「バーカ。俺もゲレロも全員殺したから顔バレしてねえよ。顔がバレてるのは敵を逃がしたベイルだけ。ハハハ!」
う、嘘だろ。俺を助けてくれねえのか・・・こいつら信じられねえ。自分が良ければ俺はどうでもいいのかよ。
・・・・・
いや、こいつら絶対巻き込んでやる。なんなら敵に情報渡して襲わせよう。そうなりゃこいつらも俺と同じだ。
「それじゃあ、俺はどうすればいいんだ?」
「向こうの連中の偉い奴探して誤解を解くしかねえか」
「でもどこにいるか分からねえ。探す所からだな。頑張れベイル」
「ふざけんなよ!トレオン!てめえも手伝え!」
「馬鹿野郎、何で俺が手伝わないといけないんだ。俺は明日は朝から忙しいんだよ」
「てめえ!どうせ馬だろ!忙しくねえじゃねえか」
こいつマジで信じられねえ。俺が命狙われているってのにレース優先させてやがる。こいつは絶対巻き込んでやる!
「トレオンは相変わらずだなあ。まあ、俺は優しいからな、明日なら手伝ってやるよ。今日はもう無理だけどな」
こ、このハゲは・・・・。
「ゲレロ!てめえ今から娼館行くつもりだろ!襲われたばっかりだぞ?お前馬鹿だろ?」
「うるせえ!今日は『高級服』入荷するから予約入れてんだよ!あれから心待ちにしてたんだ!絶対に遅れる訳にはいかねえ」
ゲレロも最低だ。俺の命より貴族プレイを優先とか信じられねえ。
「ゲレロ!別に後日でもいいだろ。予約代はここの連中が建て替えるぐらいはしてくれるだろ?」
「あ、ああ、無関係のあんたらを巻き込んだから、それぐらいは当然だ」
よし、ボスのタンダは話の分かる奴で良かった。これでゲレロも文句ねえはずだ・・・。
「良くねえよ!俺はこれを楽しみに生きてきたんだ!絶対行くからな!邪魔したらぶっ殺す!」
ゲレロの生きる目的最低だな。けど、マジだってのは顔見れば分かる。こいつどんだけ楽しみにしてたんだよ。
・・・・・・
なーんか、こいつらいても邪魔なだけなように感じてきたな。こいつら放っておいて俺の方の話を進めるか。
「そう言えば、連中は何者か見当はついているのか?」
ドズやボスは何か知っていないか聞いてみると、意外に心当たりはあるみたいで答えてくれた。
「恐らく、ボートレット領の連中だろう。今までも何度かちょっかいかけてきたからな」
「ボートレット領?どこの田舎領だ?」
「おいおい、ベイル。隣領ぐらいは覚えておけよ」
「うるせえぞ!てめえはさっさと馬行って負けて来い!」
「馬は朝にならねえと始まらねえよ。とにかくボートレット領の話だ。ここコーバスのあるクライムズ領と隣接してて、王都へはボートレット領通るのが一番近かったんだが、領主が喧嘩して、今は繋がる街道は封鎖されている状況だ」
トレオンの奴、何でそんな事知ってんだ?俺はリリーから貴族がらみの面倒に巻き込まれたくないなら、そっち側には行くなって注意受けただけだぞ。当然俺は真逆の方向にしか狩りに行ってない。
「そんじゃあ、王都との物流止まってこっちが大損害じゃねえか」
王都から隣領を迂回すればこれるだろうけど、その分、馬の餌代や宿代、食費がかかって商品に経費上乗せしなきゃならねえから儲けでねえだろ
・・・・・あれ?その割には最近廃れていくどころか、人が馬鹿みたいに増えているんだけど?
「普通ならそうなんだけどよ。今は王国中の商人がクライムズ領に押し寄せてきてんだ」
「何でだ?金鉱脈でも見つかったのか?」
「違うぜ。理由は全て俺らの街コーバスのせいだ」
・・・・トレオンは何言ってんだ?こんな片田舎に人が集まる理由がある訳ねえだろ。
って思っていたんだけど、俺が分かっていない事が分かったのか、トレオンが呆れた顔で教えてくれる。
「令嬢の『地竜素材』。ドルーフおじさんの『秘薬』。ゴドリックが飼いならしている『ウルフ達』、『ゴブリンキング』、それに論文の『ゴブリンホイホイ』、バードラーの『防音魔道具(改)』、組合の『ハンコ』、トドメは『魔法鞄』だ。あれは商人からすれば喉から手が出るほど欲しいもんだ。一つでも国中で噂になるレベルの事がこんだけ起きてんだぞ。ここで多少のマイナス気にして様子見している商人はいねえよ」
・・・・・・・・
・・・・あれ?
・・・全部
・・・俺関わってねえ?
も、もしかして俺って何かやっちゃいました?系主人公に転生してる・・・・・あれは自分の凄さを分かってねえ主人公を周りが褒め称えるもんだから違うか。俺はどっちかと言うと蔑まれてる・・・誰からも褒められてねえから違うな。うん。
「・・・だから最近人が多いのか」
「そう、だから他所の街の商人連中・・・裏社会も含めて、この街に何とかして足がかりを作ろうと必死なんだ」
タンダがトレオンの話を引き継いで教えてくれた。何か色々大変だなあ。
「関係ない顔しているけど、ベイルも最近移籍が多いとかボヤいてたじゃねえか」
「・・・ああ、そういえば言ってたな」
多いけど、すぐ消える根性なしが多いからリリーに愚痴ったけど、組合は来る者は拒まず去る者追わずってスタイルだからどうにもならねえんだってよ。
「まあ、別に来るのは構わねえが俺らの邪魔すんなって話だな・・・よっこいしょっと」
そう言いながらゲレロが立ち上がる。つられてトレオンも立ち上がった。
「お前らどこか行くのか?」
「帰るんだよ。誤解も解けたし明日早いからな」
「俺はもうすぐ予約時間だからな」
トレオンもゲレロもなんだかんだ言っても手伝ってくれると思ってたけど、マジで帰るつもりだ。信じられねえ。
「出来ればあんたらにも手伝って貰いてえんだが・・・」
帰ろうとする二人にタンダが声をかけるが、二人は首を振る。
「だったら組合に依頼出せ。そうしたら受けてやるよ」
「この場合は護衛依頼だな。ただ抗争に参加しろって依頼は受けてもらえねえからな」
「分かった。明日朝一でここにいる幹部連中の護衛依頼を3級以上に向けて出す」
おお!すげえ。ここにいるだけでも10人ぐらいいるぞ?金大丈夫か?
「ハハハ!報酬にちょい色つけとけば受ける奴らも多いだろうぜ。特別サービスで俺が今から組合戻って暇そうな連中に軽く話だけはしといてやるよ」
なんか偉そうな感じで言いながらトレオンとゲレロは部屋から出て行った。
いいなあ。俺もさっさと帰ってぐっすり寝たいぜ。
「ベイル。お前は帰らねえのか?」
「帰りたいけど、俺は顔と名前バッチシ覚えられてんだよ。このまま帰ってもゆっくり寝てられねえし、ここにいた方が敵が来たら教えてくれるから、ゆっくり寝れるだろ」
俺の答えにタンダは呆れた顔をしながらも、ドズに俺の面倒見ろと指示してくれる。いやあ、話の分かるボスで助かるぜ。
「じゃあ、どっか寝れる所に・・・・って何だ?」
話は終わったのでドズに寝れる場所に案内を頼もうとしたら、扉の向こうが騒がしくなってきた。
・・・・誰かの叫び・・・怒鳴り声だな・・・更に甲高い金属と金属がぶつかりあう音・・・誰か戦っている!!
「チッ!全員!襲撃だ!構えろ!」
慌ててタンダ達に指示を出し、俺はこん棒を構えて部屋の入口を見据える。
「・・・くそがああ!!予約に間に合わねえ!!!」
「・・・・俺らがいなくなってから来いよ!タイミング悪い連中だな!!」
聞えてきた声から少し力が抜けるが、あいつらが言いそうな事を予想して、その辺の机とか家具をタンダの部下達に俺の周りに集めるように指示する。
そうして集めてもらっていると、ゲレロとトレオンが部屋に飛び込んできやがった。
「くそが!襲撃だ!時間に間に合わねえ!お前らどうにかしてくれ!」
「今日は諦めろゲレロ!今はそんな場合じゃねえだろ!ベイル!敵襲だ!」
何だよ、敵はもう攻めてきたのか動きが早いな。逆にトレオン達巻き込んでGJと言っておいた方がいいか。
「巻き込まれたくないなら、てめえらは下がってろ」
トレオンの言葉を聞いて、タンダ達に下がるように指示を出し、集めてもらった物の中から、適当な椅子を扉の向こうに放り投げる。
「・・・!!!」
暗闇の中から何かに当たる音と倒れ込む音が聞こえる。
「はい、命中。ほら!トレオン、ゲレロさっさと投げろ!」
「うるせえ!命令すんな!」
「今やろうと思ってたっての!」
ブツブツ文句言いながらも二人とも手当たり次第に暗闇に机や椅子、家具なんかを力一杯放り投げていく。もうこうなると、色々な音が響いて敵さんの反応も聞こえないが、当たっていると信じて投げ続ける。
「敵は何人だ?」
「知らねえよ。2人ぐらいは見えたけど足音はそれ以上だった」
「ったく、使えねえなあ」
「あ!?ベイル!てめえ!いきなり襲われて数把握とか出来るのか?」
「落ち着け、トレオン。まずは敵に集中しろ」
俺に詰め寄ってくるトレオンをゲレロが宥めながら周囲を確認する。
「タンダ達はどこだ?」
「下がってろって行ったから奥の部屋じゃねえの?」
ゲレロの質問に、俺は奥の扉を指差して答える。この奥がどうなっているかは知らねえ。隠し通路みたいになってどこかに通じているんだろうか?
「おい!これ!奥に道があるぞ!タンダ達がいねえ!あいつら逃げやがった!」
奥の部屋を覗き込んだトレオンが状況を教えてくれる。
あいつら逃げたのか。まあ、誤解は解けたからあいつらがどうなってもいいか。それよりも正面の敵が大人しいな。まさか適当に物投げただけで倒したのか?と思っていたら、奥の部屋からタンダ達が飛び込んできた。
「くそが!向こうからも敵だ。お前ら気をつけろ!」
ありゃあ、向こうからも回り込まれたのか。って事は
タンダの声で俺はあえて正面を警戒すると、俺達が投げた家具なんかが突風とともに、ばらばらになって部屋に飛び込んできた。正面の敵が大人しいと思っていたら、挟み撃ちのタイミングを待っていたんだな。汚い、流石暗殺者汚い。
「面倒くせえな。おい、ゲレロ。俺達は奥の部屋で戦うぞ」
「そうだな。こんな狭い部屋じゃ巻き込まれちまうな。おい、タンダ達。ベイルが暴れると敵味方区別なくやられるからこっちに来た方がいいぞ」
「おいおい、人を何だと思ってんだよ。俺だって敵味方の区別はついてるぞ。気にしてねえけど」
「気にしろよ!!ったく、分かっててやっているなら余計性質が悪いな・・・・これが『筆頭』か」
そうやって騒いでいると、正面からゆっくりと暗殺者達が姿を現した。その数4人。相変わらず目だけしか見えてねえけど、そのうちの一人は誰か分かった。員証集めているとかいう変態だ。
「また、てめえか。俺にさっき負けたばっかりだろ。再戦は翌日以降しか受け付けてねえぞ」
「そう言うな。まださっきの戦いが続いていると俺は思っているよ」
かあー。負けず嫌いな奴だ。どう見てもあれは俺が完勝だったじゃねえか。
「ベイル、知り合いか?」
「下っ端組合員ばっかり狩って、員証集めるのが趣味の根暗野郎だ。さっき賭場で戦った」
「員証なんて集めて何するんだ?」
「そりゃあ、トレオン。それにぶっかけて愉しむんだろ」
「ええ。気持ち悪」
「ドン引きー」
世の中にはそういう趣味の奴もいるんだぜ。しかもモレリアが言ってたけど、その光景を見学できる店もあるらしい。需要あるのかよ!と思ったけど、あるらしい。こっちの世界はマジで理解不能な店や人が多くて困る。
「流石に大事なコレクションにそういう事はせんよ。ただ、殺した後に死体で愉しませてはもらうがな」
「ええー」
「ドン引きー」
暗殺者の言葉に、何故かトレオンとゲレロだけじゃなくてタンダ達も尻を押さえて、奥の部屋に逃げていきやがった。俺だけ変態と同じ空間に残していくなよ。俺も奥の部屋に行きたいけど、行ったらゲレロ達から怒られるだろうなあ。
嫌だなあ。変態の相手したくないなあ。