軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

071 相克共鳴

エンチャント・ナイフに貯めていたディスペルは、狙い通りシャドウセンチネルの状態異常を解除した。

ぶっつけ本番の作戦ではあったが、なんとか成功したようだ。

『――――!』

シャドウセンチネルの漆黒の鎧が軋むように震え、その反応に明らかな動揺が見て取れた。

だが、再び【虚無の宣告】を発動させてくる様子はない。

ゲームではバトル開始時限定のスキルであり、主人公に対し二回発動することはなかった。

どうやら、その仕組みは現実となった今でも変わっていないようだ。

(これなら――!)

計画通りに進めても問題なさそうと判断した俺は、地を蹴って加速。

シャドウセンチネルに肉薄すると、ナイトブリンガーを振りかぶり、斬りつけようとする素振りを見せた。

「――――ッ」

すると、シャドウセンチネルは驚異的な反射速度で自身の剣を翳す。

さすがにナイトブリンガーの貫通効果も、武器相手には通用しない――

「――なんてな」

『ッ!?』

――直後、俺はそのままナイトブリンガーを振り下ろすことはなく、シャドウセンチネルの注意を引くだけにとどめた。

すると、見事に引っ掛かったヤツの動きが僅かに固まる。

その隙を逃すまいと、俺は左手に持っていたエンチャント・ナイフを構えた。

「ヒール―― 放出(リブレート) !」

『ッ!? ァァァアアアアア!?!?!?』

聖なる光を纏ったエンチャント・ナイフの刃が、漆黒の鎧の隙間からシャドウセンチネルの体に突き刺さる。

そのままヒールを放出してやると、ヤツは悶え苦しむような悲鳴を上げた。

シャドウセンチネルは見た目からも想像できるよう、闇属性の魔物。

そのためナイトブリンガーによる闇属性付与を行うまでもなく、ヒールを攻撃魔法として活用できるのだ。

今の一撃によって、決して少なくないダメージを与えられただろう。

ただ――

(……これだけじゃ、まだ足りない)

【虚無の宣告】はディスペルによって解除できたとはいえ、シャドウセンチネルにかけられた 強化(バフ) 魔法は未だ健在。

このまま時間をかけてしまうと、致命的なステータス差が生まれてしまう。

一刻も早く決着をつける必要があり、そのためにはナイトブリンガーやヒール、聖錬炎球でちまちまダメージを稼いでいくわけにはいかなかった。

ここで必要なのは、 圧(・) 倒(・) 的(・) な(・) 火(・) 力(・) 。

そして―― そ(・) の(・) た(・) め(・) の(・) 準(・) 備(・) は(・) 、 既(・) に(・) 終(・) え(・) て(・) い(・) た(・) 。

「さあ、 新(・) 技(・) の(・) 出(・) 番(・) だ(・) 」

そう呟いた俺は地面を蹴り、ヒールによって苦しむシャドウセンチネルから一旦距離を置く。

そして、この一か月間で特訓を重ね、今から繰り出そうと考えている新技の情報を思い返していた。

これは相反する属性同士が衝突した際、一時的に魔力が膨れ上がり暴発する――通称【 相克共鳴(リ・レゾナンス) 】と呼ばれる現象を利用した必殺技。

発動には相反する2つの魔法を同時に扱う必要があるが、その条件は既に満たしていた。

「ファイアボール、ウォーターアロー」

詠唱を行うと、俺の前に炎の球と水の矢が姿を現す。

――――――――――――――――――――

【ファイアボール】LV7

属性:火

分類:魔法系統の初級スキル

効果:MPを消費することで火の球を打ち出すことができる。

――――――――――――――――――――

【ウォーターアロー】LV5

属性:水

分類:魔法系統の初級スキル

効果:MPを消費することで水の矢を打ち出すことができる。

――――――――――――――――――――

俺の眼前で二つの魔法が輝きを放つ。

どちらもジョブスキルではないが、一か月の猛特訓によって、十分以上のレベルまで引き上げることができていた。

(けど――これでも、 ま(・) だ(・) 不(・) 十(・) 分(・) )

【 相克共鳴(リ・レゾナンス) 】は、2つの魔法の火力が近ければ近いほど共鳴時の威力が増す。

2つの差が大きいと火力が減衰するどころか、一方が他方に呑み込まれて不発に終わる可能性すらあるのだ。

そして今、ファイアボールのスキルレベルは7であり、ウォーターアローは5。

このままでは発動こそできても、共鳴による相乗効果は期待できない。

(――だが、それも織り込み済みだ)

俺はニッと笑みを浮かべ、続けて詠唱を重ねる。

「ヒール。そんでもってもう一回、ヒール」

一度目のヒールは、ウォーターアローを聖錬によって最大まで強化。

そして二度目のヒールは、ファイアボールの威力を最大まで高めるのではなく、あえて聖錬水矢と同等になるよう調整する。

これもまた、【ヒーラー】である俺にしか使えないシステムの活用法。

2つの力を完全に釣り合わせることで、最大限の共鳴効果を引き出す作戦だ。

「――いくぞ」

『――――!』

冷静さを取り戻しつつあるシャドウセンチネルの前で、俺は聖錬を終えた2つの魔法を解き放った。

グンッと加速する聖錬炎球と聖錬水矢はシャドウセンチネルの胸部に直撃。

刹那、膨れ上がる魔力の奔流を前にし、俺は小さく宣言する。

「 共鳴(レゾナンス) スキル――【 蒸爆(エクスプロード) 】」

瞬間、この地下空間に轟音が響き渡る。

火と水の魔法が交錯することで生まれた爆発は、シャドウセンチネルを丸ごと呑み込んだ。

立ち込める白い蒸気と砂煙の中、吹き荒れる熱風に髪を揺らしながら俺は成否を見守る。

【 共鳴(レゾナンス) スキル】――それは最上位のスキル同士を合わせれば、 天候(フィールド) すら変えてしまう程の威力を生み出す『ダンアカ』最強の必殺技。

たとえ初級魔法同士の組み合わせとはいえ、その破壊力は圧倒的だった。

数秒後、砂煙が晴れた先には、胴体の半分を失ったシャドウセンチネルの姿があった。

漆黒の鎧は大きく歪み、その内側から闇のような黒煙を噴き出している。

「……成功、だな」

『ァ、ァァァァァ』

断末魔の声を上げながら、ついにシャドウセンチネルが崩れ落ちる。

その体が光の粒子となって消滅すると同時に、頭の中にシステム音が鳴り響いた。

『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『スキル熟練度獲得 【ヒール】のレベルが1アップしました』

『スキル効果が上昇します』

俺の勝利を告げるように、システム音が響き渡る。

こうして俺は【ヒーラー】という特性を最大限に活かし、最凶最悪とも名高い【零落の間】のクリアするのだった。

――――――――――――――――――――

アレン・クロード

性別:男性

年齢:15歳

ジョブ:【ヒーラー】

ジョブレベル:3

レベル:40

HP:3422/2970(+452)

MP:1011/1030(+346)

攻撃力:413(+82)

防御力:362(+61)

速 度:391(+78)

知 力:520(+102)

器 用:340(+66)

幸 運:374(+72)

ジョブスキル:ヒールLV10(MAX)、ディスペルLV4、プロテクトLV5

汎用スキル:ファイアボールLV7、ウォーターアローLV5、 瞬刃(しゅんじん) LV6

パッシブスキル:身体強化(小)

――――――――――――――――――――

【解放のスキルオーブ】

・対象スキルの潜在能力を開放し、新たに進化スキルを獲得することができる。

※対象スキルのレベルが10(MAX)および、対象者のレベルが40以上の時に使用可。

――――――――――――――――――――