軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

070 ディスペル×裏テクニック=卑怯

【零落の間】の中央に鎮座する巨大な騎士は、その漆黒の鎧から不吉なオーラを纏っていた。

名を、【 影骸の守護者(シャドウセンチネル) 】。

数ある【星天宝具】入手のギミック攻略において、最も厄介なボスの一体だ。

レベルは45と、他に比べれば高くはないのだが――そう単純な話ではないことを俺はよく知っていた。

『ァァァアアアアア!』

「――――!」

シャドウセンチネルは玉座から立ち上がると、轟音と共に咆哮を上げ――直後、俺の体が異様な感覚に包まれる。

全身を覆うように黒い靄が立ち込めたかと思えば、全身から力が抜けていくような感覚が襲い掛かってきたのだ。

「やっぱり使ってきたか……」

スキル名【 虚無(きょむ) の 宣告(せんこく) 】。

シャドウセンチネルが放つ特殊な状態異常魔法だ。

効果は大きく分けて3つ。

1つ、対象者の全パラメータを半減。

2つ、スキルの使用不可。

3つ、武具を除く通常アイテムの使用不可と効果無効。

現に今、少し試してみても俺は魔法を発動することができない。

さらに、ポーション類を使用してみても一切効果がなかった。

ゲーム上でもアイテムでこの状態異常を回復させることはできず、その仕様はしっかりと反映されているようだ。

「改めて考えても、厄介すぎるギミックだよな……」

一応、ステータスの減少については時間経過と共に元の値へと戻っていくが、それはほとんど意味をなさない。

なぜなら、こちらの状態異常が回復するのと同じペースで、シャドウセンチネルのステータスが上昇するバフも並行して発動しているからだ。

そんな仕様であるため、ヤツと対等に戦うためにはレベル90という、この段階では到達不可能な強さが要求される。

まさに鬼畜と呼ぶしかない難易度だった。

(……とはいえ、全てが絶望的というわけじゃない)

ゲーム時代のプレイヤーたちは、いくつかの抜け道を見出していた。

まず、スキル使用不可の効果は状態異常が発生した後に限られること。

すなわち、事前にバフスキルを使用しておけば、その効果は持続するのだ。

状態異常の発生中、スキルは「使えない」だけで、効果が「消滅する」わけではないということである。

そのため主人公であるグレイを操作する際、【バッファー】の強化魔法を事前に発動しておく戦法が定番となっていた。

さらには【エンチャント・スペル】も同様に有効で、事前に魔法を付与しておくことも可能だった。

そうして初撃で大ダメージを与えた後、短期決戦で仕留め切る――それが本来のシャドウセンチネル戦における定番。

恐らくは開発陣も想定していた正攻法であり、グレイのレベルが60を超えていれば安全に倒すことができた。

(問題は、それが俺にも通用できるかってことだけど……)

残念ながら、俺は継続効果のあるバフスキルを持っていない。

強化魔法の事前付与という選択肢は諦めざるを得ないだろう。

一方で【エンチャント・スペル】に関しては、【エンチャント・ナイフ】による応用で再現可能となっている。

聖錬炎球を封印しておけば、邂逅と同時に放つことは可能だっただろう。

だが――

「それだけじゃ、足りない」

俺の現在のレベルは39。

想定されている安全圏のレベル60とは、あまりにも大きな開きがある。

ただでさえ格上(レベル45)のシャドウセンチネルを倒すのに、聖錬炎球一発ではまったく足りないのだ。

だからこそ俺は、それとは別の手段を用意してきた。

この世界が現実になったからこそ使える、新たな裏技を。

まず大前提として、『ダンアカ』においてシャドウセンチネルが発動する【 虚無(きょむ) の 宣告(せんこく) 】は解除することができない。

この場所に入れる唯一の存在であるグレイが解除用のスキルを持たず、ポーションの効果すら無効化されるからだ。

力量云々に関係なく、ゲームの仕様上、この場所で解除できる手段はなく――

それゆえだろうか。

後に販売された設定資料集で判明したことだが、シャドウセンチネルの状態異常はシステム上、通常の状態異常に分類されていた。

解除不可でもなければ、上級に位置づけられているわけではない。

この場において、それが意味するものは た(・) っ(・) た(・) 一(・) つ(・) ――

「さあ、試すとするか」

『――――ッ!?』

目の前のシャドウセンチネルが、その姿に似合わない驚愕の反応を見せているのが分かった。

それもそのはず。

なにせ対峙しているはずの俺が、 掲(・) げ(・) た(・) エ(・) ン(・) チ(・) ャ(・) ン(・) ト(・) ・(・) ナ(・) イ(・) フ(・) を(・) 自(・) 分(・) 自(・) 身(・) の(・) 体(・) に(・) 浅(・) く(・) 突(・) き(・) 立(・) て(・) た(・) の(・) だ(・) か(・) ら(・) 。

動揺するシャドウセンチネルの前で、俺はそのまま小さく告げた。

「 放出(リブレート) ――――【 デ(・) ィ(・) ス(・) ペ(・) ル(・) 】」