軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.危なくない戦い

ひとまずフーテンさんのところまで下がってくると、リーさんたちも近くに来ていた。

「ノシシ型の第二形態といえば、突き上げからの跳ね飛ばし大暴走と相場が決まってるからね、警戒して下がってきたの。さっきトラバサミたくさん仕掛けてたから、填まったら総攻撃とトラバサミ設置、を繰り返して第三形態まで持たせるのよ」

「ノシシ狩りに豊穣神官が大量にいるのは頼もしいね」

リーさんが説明してくれると、ポユズさんも矢筒へ矢を補充しながら言う。

エドさんは短矢の補充なのか、インベントリから宙に大量の短矢を投げて、それがベルトにズラリと収まっていくという映画みたいなことしてる。そしてボウガンにジャキッと音を立てながら短矢を装填。ナニソレかっこよ。

ポユズさんがリーさん、エドさん、自分に投擲に対するバフをかけるついでに、猫にもかけてくれた。ありがたや。

しかし猫、もう撃ってもダメージの出るものがないのよ。

「第一形態でダメージ出なくても、第二、第三では入ることがあるから、何回かは撃ってみた方がいいよ~~」

ヤンキー座りで何かのポーション?を飲んでたフーテンさんが言う。

そういえば猫も初心者バフpot持ってたな。このレイド終わったらもう飲めなくなるだろうから、せっかくだし飲んでおくか。

「そういうものにゃん?」

「レイドボスなんて形態ごとに違うモンスターに変わってるようなもんだからな。やるだけやってみるといい」

エドさんは相変わらず永遠の少年なのに渋いぜ…。

ステータスを確かめつつ初心者バフpot各種を飲む。だいたい1割増、20分。なかなかいい効果。幽霊のときも飲んでおけばよかった。

トリケラトプスの大暴れは、バチン!と大きな音がして止まった。 設置罠(ビーストバインド) が機能したようだ。ついでに周囲から緑のネットが放たれて拘束を固めていく。

農家神官の対害獣魔法、凶悪よな。

「撃ちます~~『ダウンフォール・スコール・フローライトニング』」

フーテンさんの錫杖へむけて宝石から魔力が迸り、強風となって力強く吹き抜ける。

その瞬間にふと思い付いて、拡大した『パウダー』を振り撒いてみる。はい、パラパラ~~。

キラキラの粉が風にのってトリケラトプスへと吹き下ろしていく。豪雨、そして轟音。

うーん? うまくいったかどうかわからんな。

「…猫ちゃん、今なんかした?」

「粉撒いたにゃん」

「粉」

「フーテンさんがくれた教本の粉魔法にゃ。魔力の粉にゃん」

「お、おう。『パウダー』ってやつ? 受付さんのイチオシだったんだけど」

「魔法を強くする粉にゃんよ~。放たれる前に使うと暴発の危険があるんだけど、フーテンさんのは放ってからの三段変化だから、いけるかなと思ったにゃん。猫にはわからないけど少しは強くなってたにゃん?」

「『スコール』がちょっと威力増してたよね」

おお! 成功してる!

「にゃん~うまくいったにゃん!」

「いやいや、放った後の魔法に直接手を加えるとかそんな魔法あるの!? いやあったけど~~」

「今のでどのくらいMP使ったんだ?」

「100にゃん」

「100でも目に見えて効果があるとするとちょっと気になるな」

「うーん、猫ちゃんや、雷の方に合わせることって出来る?」

「さっきのは粉を風に乗せて運んで、次の魔法の発動で使ったはずにゃ。だから順番が風の次に雷だったら合うにゃ」

かくかくしかじか、と粉の特性を説明する。

「なるほど、粉が魔法発動前にそこにあったらその魔法が粉を吸うわけね~、だから暴発の危険もあると」

「てことは、フーテンが魔法使った後に、俺が風使って粉届けたら、雷に吸わせることも出来るのか」

「粉が雨に負けず届けばいいけど、届かないかもしれないにゃ」

「あー。そうか、粉は粉なのか、物理的に粉?」

「物理的に粉にゃん。風に舞うし、水には沈澱するにゃ。よく振ると混ざるらしいけど」

「……てことは『粉袋』に入れて投擲したらいいんじゃない?」

「それだ」

『粉袋』は粉類を纏めるためのアイテムで、主にデバフ用投擲アイテム『激辛袋』などを作るのに使われる。

存在は知ってるけど、かなりお高い香辛料を材料にする銭投げアイテムなので猫まだ作ったことない。ちなみになぜか『料理』で作れる。

「空の『粉袋』なんて今、持ってる?」

「『粉袋』じゃないけと、種の収穫に使おうと思っていれてた『布巾着』があるのよ。だから思い出したんだけど」

「『布巾着』か。まあいけるだろ」

「『紙袋』でもいいなら、猫持ってるにゃん」

「お。そっちのがいいかな?」

まずお試しということで、トランスファーしてもらい最大MPから、最大拡大の『パウダー』を『紙袋』に出す。どばー。

『パウダー』は威力拡大で出すと単純に量が増える。『ジュエル』と違って圧縮されるわけではないみたい。パラパラしてるときは結晶粗めの塩か砂糖って感じだったんだけど、まとめて出すと片栗粉っぽくなるな。細かい方が威力増えるのか??

話しつつも自己バフしたり、バフかけてもらったりあれこれしてたフーテンさんが、次のチャージに入ってる間にエドさんとゴソゴソ準備。

袋の口をくるくると折り畳み、なるべくコンパクトに……いや結構でかいな?

「これ飛ばせるにゃ?」

「重かったら投擲しようと思ってたが、軽いから問題ないな。これ、粉の重量はないんじゃないか?」

「そうかも?」

性質が粉に寄せてあるというだけで、魔力だからな。魔法で物理法則に寄せてあるだけというか。

「それじゃいくよ~撃ちます~~『ダウンフォール・スコール・フローライトニング』」

どうっと風が吹き下ろして、ザバザバと豪雨が降り注ぐ中、エドさんが『紙袋』を飛ばした。シューッと羽根が生えたように音もなく飛んでいく『紙袋』。なんだかシュール。

「変わった魔法にゃんね?」

「『ウィンドスロー』っていう投擲系の補助用魔法だ」

「弓師もよく使う魔法なんだよ」

なるほど? 投擲用なら猫も覚えた方がいいかもしれない。メモしておこ。いろいろな魔法があるなあ…。

ついでにエドさんは『詠唱』持ちじゃないっぽい。まあエドさんどう見ても忍ぶ系の暗殺…、いやいや、斥候職だし、『詠唱』は相性がよくないか。猫も『詠唱』は持たなくていいかな。

とか考えているとスコールの中を雷鳴が轟く。眩い閃光、そして轟音の落雷、広がる八面体。

そこまではまあ一緒だったんだけども。

バリバリバリ!と八面体の中を激しい稲妻が駆け巡った後、もう一度激しくまばゆく光ったかと思えば、最初のよりは控えめだがそれなりの大きさの雷がズドンと落ちた。

「ワーオ」

「ランちゃん、あれでどのくらいMP?」

「400にゃん」

「400MP一回こっきりのバフ魔法、使用上かなり制約あり、となるとまあ納得の威力かなあ~」

「レイドでは重宝しそうだな。MP余ってる適正LV未満なんて山ほどいるし」

「そうだね、400で他の魔法撃つより、よほどダメージ出てそうだ。魔ポより人気になるだろうね」

「いやあ、こんなん勝手に使われたら、下手したら大事故よ~~。猫ちゃんも上手くいったからよかったようなものの、チャージマシマシの魔法に手を出すとか危ないからねえ」

「猫はこう見えて取扱い説明書は熟読するタイプにゃん~。好奇心がにゃんにゃんすることはあっても下手なことはしないにゃ」

「まあね~、意外と堅実なのは知ってるけど」

好奇心がにゃんにゃんして何も考えずに粉を撒いたことは否定しないが、それはそれ。猫だって遠くまで飛んでいくとわかっていたから粉を撒いたのであって、近場で起きる火事に油を注いだりはしない。

好奇心が止められないのは猫なので許してほしい。にゃんにゃん。

ちなみに魔ポは魔力ポーションの略、でもあるが同時にその役割を担う人という意味もある。

適正LV以下の場合、トランスファーでMP渡す要員として機能することを求められることがあるんだそうな。渡したらMP回復のために隅っこで休憩する。それだけでヒール貢献度が入るので双方よし、だけどまあ、やる人は少ない。少ないのだが、適正LV以下がウロウロして事故ることはよくあるそうで「参加するのはいいけど観戦してろ何もするなするなら魔ポでもしてろ」てのはよく言われる話だそうな?

LV低いののMPなんて雀の涙だし、なんなら必死に回復したMPも高LVなら10秒も経たずに回復出来たりするので、魔ポも大分微妙、て意見も多い。

この辺はレイド誘われてから『レイド参加初心者まとめ』スレで予習しました。初手『レイド参加はお互いのためにもLV30から』と書いてあって閉じようかと思ったけどちゃんと見たよ。

基本、最初の何回かは何もせず観察に徹しておこうとかそんな感じだ。最初から役に立つことはまずないので欲をかかずに座っとけ、みたいなね。

なんかわりと悪意のあるスレだったので、軽く検索したら別の初心者スレで『初心者が参考にしてはいけない初心者スレ』として挙げられていた。あるある~紛らわしいやつ~~。でもそういう風に考える人もいる、て意見を知るにはまあまあ役に立つスレだった。

閑話休題、ライトニングでの麻痺の間にはポユズさんとエドさんは撃ちまくっているので、戦闘しながらの会話だ。

フーテンさんも次の魔法のためにポーション飲んだりあれこれしている。リーさんはフーテンさんや他の面子へのバフ担当。魔法薬と魔法と、どっちも併用するみたい。

狩猟神官のポユズさんは、食肉の対象になる魔物に特効がある。そのせいかノシシ相手のダメージ星が常に赤い。更に手数が多いので、DPS(秒間ダメージ)でいったらもしかしてフーテンさんより出てるのでは?

狩猟神にも罠系魔法はあるんだけど、こちらは確定でかかるわけではないので、今回は豊穣神官たくさんいるしやらないらしい。

豊穣神の害獣特効は侵略者に対する防衛の意味が大きいけど、狩猟神の食肉獣特効は森の恵みを得るための試練とその手助けという感じなので差があるんだって。

信仰もいろいろあるね。

猫も魔力pot飲んで次の粉を準備したいところだが、バフ魔法が飛び交ってる中で粉を作るのは難しい。結果として、ぼーっと見守ってしまう。わー、お星さまキレイねえ。

そういえば『パウダー』は魔法に吸われるけど、『ジュエル』も魔法に吸われるといえば吸われるんだよな。投擲してもらうなら『ジュエル』の方が投げやすいのかも? いや、でも『ジュエル』の方は下手すると魔力不足で魔法不発になる可能性もある?

うーん、ぶっつけ本番で試すことじゃないね。

しばし待ってバフが落ち着いたら、また『パウダー』紙袋を作ってエドさんに託す。空飛ぶ紙袋。そしてフーテンさんの魔法が再び吹き荒れた。

トリケラトプス(畑大ノシシ)の雄叫びと共に、空へ向けて赤い炎のような光が立ち上る。

「お、第三形態」

「取巻き再召喚からの激昂かな? ……あ。フーテン、取巻きだけ吹き飛ばしちゃった方がいいかも」

「んん? ああ~瓜坊か……」

きゅうー!ぷぎゅー!と、でかいウリボーたちが走り回っているのにカソックさんたちが右往左往している。そういえばこのレイドのために瓜坊を逃がし続けてきたとか言ってたし、微妙に愛着がわいてしまった人も多いのかもしれない。

「はい、おうちへお帰り『サイクロン』~~」

ぎゅるんと渦巻いた風が錫杖から吹き出したかと思うと、勢いよく巻きながら地面を竜巻が走っていく。

ぷー!と鳴きながら宙に吹き飛ばされていく瓜坊に、やはり右往左往するカソック集団。

「レイドの取り巻きは召喚獣にも従魔にもならないし、仕方ないねえ」

「ウリボーは畑でしか出ないから、狙ってる人多いらしいけどね。初めて見たけどたしかにかわいい」

そうなの? ウリボーって、見た目は瓜坊だけどサイズはカバくらいあるんだけど。まるまるして大きい。まあ、そこが可愛い気がしなくもない、か?

ちなみにウリボーが吹き飛ばされていく間にも、トリケラトプスは罠にはまってネットで巻き取られている。

もう完封してるのではこれ??