軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.デバフマシマシとLV花火

「そりゃ農家神官これだけ揃えられれば、害獣系レイドは楽勝よ~~」

野菜農家スレでこのままだとヒーラーオンリーレイドになってしまうと嘆かれてたくらいに、農家神官は回復系に偏っている。

害獣系ボスのレイド戦ではもちろん農家神官は大歓迎されるが、回復量の豊富な正統派ヒーラーなので、デバッファーとしてのみ動くことはまずないそうだ。ヒーラーとして優秀だからこそ、周りもその 役割(ロール) を求めてしまい、デバフオンリーにはなれないものなんだって。

とはいえ、48人レイドで農家神官が3人もいれば害獣系はめちゃくちゃ楽になる、と言われているらしい。

…このレイド、実に30人以上の農家神官が揃っているのだ。あまりにもヒーラーが大量すぎて、大半が嬉々としてデバッファーとなり、思う存分罠を仕掛けている。楽しそうでなによりだ。

ジョブ揃えれば確定でデバフや拘束入れられるボスはチョロいけど、その分攻撃力はハチャメチャに高いし、HPはめちゃくちゃ多いのがお約束。ミスったり事故ったりしたときにリカバリーも何もなく一瞬で終わるのがこの手のレイドボスらしい。完封orデッド。

激昂してようとトラバサミとネットで拘束ガチガチではトリケラトプスも何も出来ない。

第二形態のときは、突進タイプは多少走らせないと防御力が高すぎて攻撃が通らないというギミックがあるのでそこそこ走り回ってたトリケラトプスだが、第三形態は激昂で防御力が駄々下がりだ。四方八方からネットが飛び、足元にはびっしりと大量のトラバサミが仕掛けられる始末。

一方的だなあ、と思ってしまうけど、一方的じゃないと戦えないボスなら仕方ないねえ。

「対害獣魔法は、デバフ耐性つかないものにゃん?」

「いやいや、さすがにつくと思うよ~。でもデバフは何種類か混ぜると、つきづらくなるんだよねえ」

いくら農家神官の対害獣魔法が強力とはいえ、それだけに頼っているとやはりデバフ耐性がつく…だろうと思われるそうだ。なにしろ農家神官がデバフかけまくってるところを見るのはフーテンさんも初めてらしいので、未知数。

しかし普通は、同じデバフをかけ続けているとそのデバフが効きにくくなり、それでもしつこく使ってると、今度は完全に効かなくなる。

これを防ぐには、他のデバフを適宜加えていくのがよい。特に行動不能系デバフを複数混ぜるのが望ましいそうな。

たとえばフーテンさんの今回の魔法回しは『ダウンフォール(硬直/怯み)』『スコール(水濡/寒気)』『フローライトニング(感電/麻痺)』と、三段階ですべてに行動不能になるデバフが入っている。

硬直や怯みは、行動不能は一瞬だが次に入る攻撃やデバフを入りやすくする効果がある。

水濡は種族によって効果が違うが、共通してるのは雷が通りやすくなる効果。

寒気は動きが鈍くなり、爬虫類や熊、あと小型魔物など種類によっては行動不能になる。畑大ノシシは見た目こそトリケラトプスだが、一応名目上は猪を名乗っているのでこのデバフで固まってたかどうかは謎。

感電はスタンと継続ダメージが入るデバフなんだけど、近接攻撃すると攻撃者と被攻撃者の両方にダメージが入るため、攻撃側でダメージ対策が必要になる。

麻痺はいうまでもなく。

このように多種のデバフを振りまいておくと、デバフ耐性がつきにくくなる。というか、デバフ耐性はおそらく5種までしかつかないのではないか、という仮説があるんだって。

行動不能デバフは耐性の中でも重きに置かれていて、それまでかなり貯まっていた耐性を捨てて新しい耐性が蓄積する、と考えられている。

例えば毒耐性がつき始めていたところへ眠りをかけると、眠り耐性の方が上位にくるという具合。これを5種類繰り返せば、下位のデバフ耐性は追い出されて消える。そして再び毒かけて毒耐性が上位に上がってきたら行動不能デバフで消す、みたいなのが出来るんだって。

ちなみにフーテンさんが間を開けて魔法を撃ってるのもその耐性の関係と、あとライトニングの麻痺時間を利用した弓職や近接物理職の攻撃タイミングを作るためであって、おサボりなわけではないらしい。

大ダメージを与えた後に行動不能デバフを付けておくのは、砲台魔法師の魔法回しのお作法なんだって。

これをしておかないとヘイトを取ってしまう。行動不能の間に他のアタッカーが総攻撃することでヘイトを分散させたあと、タンクが挑発で取り返す。このときダメージを与えたアタッカーが多ければ多いほど偏ってないので、奪うのが比較的楽なんだそうな。

ついでに行動不能の間に回復も済ませると更に分散するのでよろしいとか。

うーん、大規模戦は考えることがたくさんあるな。

猫も種族的に投擲デバフテイマー向きなので、デバフについては詳しくなっておかねばと思ってはいるけど、思いの外多くて、しんなりしちゃう。何種類も考えておかないとダメなんだねえ。行動不能5種類はなかなかに大変そうだわ…。

「うん、拘束完全に入ってるね。第三形態は防御がた落ちで柔らかくなってるはずだから、猫ちゃんも撃っておいで~」

猫でもたぶんダメージが入るらしいので、ちょっとだけ近くまで行ってレトと一緒にペチペチしにいく。『投擲』初心者だから、射程がまだまだ短い。

ドンドコ魔法が飛び交っていて辺りはチカチカいろいろな色の光で眩いし、地響きやら爆音もすごい。矢も石?も、雨あられと降り注いでいる。

そんなすごい攻撃の隙間で、宝石を作ってはレトに渡し、自分用も作って撃つ、とペチペチ繰り返す。うんうん、みみっちいけどダメージ出てるね。自分のダメージ星は数字が出るからわかりやすい。猫しか紫星ないしね!!

そうこうしているうちに、やがてトリケラトプスの断末魔が響き、ズシン…と地響きと共に倒れたのだった。

わあっと大きな歓声が上がる。ぽわんと目の前にリザルト画面が浮かんできた。

へえ、総ダメージ量とか出るんだなあ。三桁いってない。あまりのショボさに思わず笑ってしまうが、こんな微ダメでも与えてるだけで攻撃貢献度はもらえる。ありがたや。

ちなみに総ダメージは千を越えるとランク評価になるので、そう簡単にレイドボスの総HPとかはわからないらしい。

おや、粉を振ったのバフ支援になったっぽい。バフ貢献も少しもらえていた。使ったMPが多めだったからか、二回だけの支援にしては結構多いような?

戦場を走り回った距離とかいう項目もあって面白い。他にも採取と生産の項目とかある。ボスと戦ってる横でアイテムを現地調達するレイドがあるの…? 謎だな。

そんなわけでLVが上がった。

適正LV外だったので大分経験値減衰があっただろうけど、ペチペチしただけでLV20を超えてもうすぐ21くらいの経験値を稼いでしまった。レイドこわい。

ポンッポンッと背後から花火が上がるエフェクトは、LV10上がる毎の演出だ。

わー、夜だから映える。LV10になったときは昼間だったし、街中だったからか小さめにポンッてしただけだったのだ。

『おめでとうございます。LV20になりました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』

やったぜ。

「おお! おめでとー!」

「花火だ!祝え! おめでとー!」

「おめでとうー!」

周囲からクラッカーのエフェクトが放たれ、やんやとお祝いをもらってしまった。やあ、どうもどうも。

あ、あとルイも上がった。やったぜ。進化LVが見えてきた。

「猫ちゃんもついにLV20超えかー。長かったねえ」

「猫の予定では旅行を終えてから上がるはずだったにゃん~」

「あ~、転移potで帰る予定だったのねえ、ごめんね巻き込んじゃって」

「にゃん~、どっちにしろ風前の灯だったにゃ、幽霊ボスに予定を狂わされてたにゃん」

「あのバグ踏んだの?? 猫ちゃんのことだから予習済と思ってた」

「チートバグ裏技スレなんかさすがに読まないにゃんよ~~」

「そんなスレにしか情報なかったっけ!? て、あれ、予定を狂わされたってことはもしかして」

「聖水ぶっかけて光魔法玉で倒したにゃん。ルイもレトも頑張ってくれたにゃ」

「そういえばあったねえ聖水~! さすがこの猫やりおる」

「ふっ」

畑大ノシシのドロップは全員が10個取得、『取得』ボタンを押すとスロットのようにしてドロップが確定する仕様。

スロットしたけど、素材の価値が何もわからない…。畑大猪の、と枕詞がつくのは共通で、牙と毛が3個ずつ、肉と骨が1個。

あとは『トパーズ』と『スフェン』がひとつずつ。これは宝石の一種だね。

この世界では宝石は魔力が濃縮されて出来たものとされ、鉱山からも出るが、主な産出地は魔物の肉体である。魔物の骨や牙などの一部以外にも、死ぬと臓器やらなんやらに魔力が凝固して石を形成するんだそうな。

これを主に魔石というのだが、その内の綺麗なものを宝石、上質なものを魔宝石とも呼ぶ。つまりこの世界では魔石といえば宝石のことも含む。

『トパーズ』も『スフェン』も土属性魔石らしい。ともに原石の状態なのでただの石にしか見えない。魔石として使う分にはこのまま使えるが、アクセサリとかにするなら削り出して研磨する必要があるのだとか。

魔石以外は猫には扱えないアイテムだなあと思ってると、フーテンさんが買い取ってくれた。さすが大商人。ありがとう大商人。

こういう場でまとめて素材を買っておくと数が揃ってて売りやすいそうな。なるほどなあ。売る方もいちいち調べてマケボに並べる手間が省けるし、一石二鳥。

皆がドロップを取得し終えると、ボスの体からキラキラと光が立ちのぼり、それが渦を巻いて繭のようなものを作り出す。

これはいわゆる宝箱で、レイドボスのクリア報酬が入っているらしい。

畑主さんが代表して前に出て繭に触れると、中に入ってるアイテムの一覧情報がぽわんと表示された。ボス素材以外のレアアイテムだったり、装備だったりはこのクリア報酬で出てくる。

ちなみに畑レイドは、豊穣神からの啓示だったそうな。

レイドはそういう上位存在(神とは限らない)からの啓示によって起こることが多く、このクリア報酬は魔物からの戦利品ではなく、その啓示主からの褒美だったり御礼の品ということになる。

だから魔物に由来しないレアアイテムとか、豊穣神由来の装備や道具とかが入ってるわけだ。

このクリア報酬は抽選になっており、欲しいものにチェックを入れて抽選を待つ方式だ。場合によっては貢献度が規定に達してないとチェックを入れられないアイテムなどもあるという。今回は特にそういうのはないみたい?

猫はお邪魔しただけで十分なので、特にチェックはせず見送り。『豊穣の篭』とか『豊穣のクワ』とか農業の道具は気になったけど、さすがにLVが合わないだろう。

抽選結果の悲喜こもごもがあり、光の繭がパアッと輝いて天へと昇っていく。

「本日はレイドへの参加、ありがとうございました。ご協力に感謝申し上げます」

畑主神父さんが穏やかにそう言い、両手を上げた。

「それでは皆さん、お手を拝借」

イヨーォッ、と掛け声と共に、みんなで笑いながら拍手。

レイド後に三本締めをするのはわりとよくあるらしいんだけど、まさか神父さんがそれをするとは誰も思わなかったみたいで、やがて爆笑に包まれた。

「ありがとうございましたぁー!!」

「おつかれさまー!!」

そしてみんな笑顔のまま、レイドは終了となり、畑でバーベキューの打ち上げへと雪崩れ込んだのだった。