軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.V.S.畑大ノシシ

上がる雄叫び、現れる取り巻き。

「なんで瓜坊なんだよ!!」

「やめてやめてわらわらしてる可愛いよこんなのたおせないよォ!」

「ここはいつから瓜坊育つとトリケラトプスになる世界だったんです!??」

きゅう!きゅうう!と鳴く瓜坊はたしかに可愛い…。いやいやサイズ感おかしい。体長2m以上ある瓜坊は瓜坊なのか? いや名前は『ウリボー』なんだけども。これは審議だよ。

よく見るとその額の斑点、もしかして小さい角なの? 大きくなると襟巻出来るの?

一瞬にして動揺に包まれたカソック集団だったが、ボス登場ムービーが終わり動けるようになるとすぐさま大量のバフ魔法が飛び交う。

わあ、猫にも飛んできた。これがバフ魔法…!

いや待って飛び交いすぎてなにもわからん。どれがどれだったの。なんかすごい一気にバフ盛られてる。

「頑丈さに自信のある人は前へー!とりあえずノシシ名乗ってるからには突進来るはず、回復班は担当決めて対一で落とさないようにね!」

「バインド班はこっちで! バフ班はあっち!」

あれこれ大声で指示が飛んでて、魔法も飛び交ってて、チカチカ、キラキラ。

トリケラトプスとヤマビコさん、それから牛獣人さんたち大柄なカソックさんたちがぶつかり合って突進を止めたり、止めきれず吹き飛ばされたりして、キラキラビュンビュン大量の魔法とハートが飛び交っている。

「にゃあ……」

ミミット大行進と違って、まだ何が起きてるかはわかる。わかるけど、スケールがでかいし早すぎて。

これはたしかに、ポカーンとしてる内に終わってしまうわ。

「猫ちゃん平気~?」

「にゃあ。フーテンさんはサボってるにゃ?」

「ヘイトがちゃんと取れるまでアタッカーは手を出しちゃいけないお約束なのよ~。一応自己バフはかけております」

「あれはまだ取れてないにゃ?」

「まだだね~。ヤマビコが取るより、セルフヒール神官がヘイト稼いじゃってるみたいね。かといって1枚盾でどうにかなる相手じゃなさそうだし、ヤマビコも鎧捨ててるしなあ。まあ、 役割(ロール) 偏ってるレイドにはありがちな展開よ~」

なるほど。ヘイトが定まるまでは下手に攻撃するとヘイト取ってしまうので、フーテンさんのような砲台魔法師は手が出せないらしい。

「そういえば猫ちゃん、旅行はどこまで辿り着いてたの?」

「ポーツまで行ったにゃ。そうそう、フーテンさんたちに検証に付き合ってもらえればと思ってたにゃん。日付がまだ定かじゃないから、決まったら改めてお誘いするにゃんね~」

赤月夜のルイネはたぶん無理だろうから、次の青月夜か黒月夜で考えている。黒月夜の精霊スポットは掲示板で見てこれじゃないかと見当がついているのだけど、日付がまだわからないから難しそう。

「おお? 何の検証~?」

「今はナイショにゃん~。本屋さん行って買えたら読ませてあげるにゃ~ん」

絵本『月と精霊の扉』は買えると思うけど、あの精霊の名前部分はもしかしたら本によって違うかもしれない。だってプレイヤーの数からしたら圧倒的に足りないもんね。

最初の百人か千人かわからんけど、そのくらいはこの本で教えてあげるよってパターンかもしれんけど。その辺は謎。

「猫ちゃんまたなんか見つけちゃったの?」

「見つけちゃったから戻ってきたにゃん。必要なものがあったから相談に乗ってもらって、そっちはひとまず解決にゃ。それはそれとして、猫と同じ方法で他の人も出来るかを知りたいにゃん~。出来れば人数がちょっと欲しいにゃ。あっちでも何人か誘うって言ってたけどたぶんそんな多くないし、あっちは生産者さんだから、かなり傾向が違うと思うにゃ」

レイド中のオープン会話なので詳細を語るわけにもいかず、なんかこんな感じ、程度に説明しておく。

「おおん? なんかよくわからないけど、俺らはその検証を手伝えばいいのね?」

「SP10必要だから無理にとは言わないにゃん~」

「スキル関係なの!?」

「成功するとスキル取るようにアナウンスが出るにゃん。そこで断ってもいいんだけど、なんていうか、選択肢はあるけど実質一択ってやつにゃん」

「なるほど? ちなみにどんなスキル?」

「…一言でいうと『ロマン』にゃんね……」

「ほう???」

「今のところまだ全然何もわからないけど、とにかくロマンがぎっしり詰まってるにゃん」

「ロマンねえ…。なんか全然わからんから、とりあえずその本を楽しみにしてるわあ~」

うん、そうしてください。

そんな感じで話していたら、ドンパチやってた前衛がどうやら安定したらしい。

「それじゃあ猫ちゃん、俺もはたらくねえ」

「頑張るにゃ~ん。猫も猫で何かするにゃん」

ひらひらと手を振った後、フーテンさんは錫杖をぐるりと回して地面に突き刺した。

三つの浮いている宝石が、順番に輝きを増していく。この宝石に魔法をチャージしていってるんかな?

「は~い、撃つよ~~『ダウンフォール・スコール・フローライトニング』」

なんか重ねてる。これは『多重詠唱』かな?

ダウンフォールは吹き下ろしの突風、スコールは大雨、フローライトニングは雷。フーテンさんは風属性一極なのでなんで雷なのか不思議に思うとこだけど、『フローライトニング』はなんと風属性の魔法らしい。

『冒険者と失われた宝石』で入手した魔法なんだって。ひび割れてたのが 蛍石(フローライト) だったらしい。みんなそれぞれ割れてる石が違ったそうな。

そして風属性魔法をムギュムギュ詰めたら『フローライトニング』だったと以前聞いた。リーさんから説明は受けたらしいのに、なんで錬成陣に無属性使ってないんだ、これだから素人は! しかし素人に優しいのが錬金術というもの。知ってた!

トリケラトプス(畑大ノシシ)を吹き飛ばしそうなほどの風と豪雨、それから激しい雷が地響きを伴って放たれる。

ドンと最初の雷が落ちた後にうっすら緑や紫がかった光が上下にひとつずつ、四方にひとつずつと6つ広がり、 雷土(いかづち) の八面体を作り出す。それが檻となってノシシを閉じ込め、バチバチと激しい音と光をあげる。

ワーオ。

綺麗だけどめちゃくちゃまぶしい。さすが砲台魔法師、威力が半端ないわ。吹き出すダメージ星が見たことないメタリックカラーをしている。

このゲームでは、敵にダメージを与えると星が飛び、その星のなかに白抜きでダメージ量が表示される。しかし他人が与えたダメージは数字は出ず、星だけだ。

ただダメージ量によって星の色が変わってみえるので、だいたいの数字は予想がつくようになっている。虹の七色+金銀銅のメタリックカラー。

猫のダメージ星はもちろんいちばん下の紫です。幽霊へのクリティカルがかろうじてちょっと青みがかってた…ような??

ついでに回復はハートで、与ダメと同じ色変化、パステルカラー気味。回復主か被回復者しか見えない数字が中に白抜きで浮かび上がる形式。被ダメはすべて赤いトゲトゲのフキダシ?で表示され、ダメージの大きさによってサイズが変わる。上級になると被ダメフキダシがデカすぎて戦闘に支障があるとかで、フキダシカラーの実装が待たれているそうな。

トリケラトプスが再び叫び声を上げる。

本来なら暴れまわるところだが、電撃の継続ダメージによる怯みと、更に麻痺が入ってるらしく動かない。

その隙に矢や魔法がビュンビュン飛び交っている。

「おー。猫ちゃんや、今のうちにちょっとぺちぺち撃っときなさい」

「弾幕厚くしてくるにゃ~」

フーテンさんはクールタイムなのか、身動き取れないのか取らないのかわからんが、その場待機らしい。ルイに乗ったまま猫は前方へ移動。

遠くから見てもでかかったけど、近くなるとほんとにでっっか!

拡大『ジュエル』した宝石をスリングショットに――と思ったらレトが激しくチョーダイアピールをしてくる。うん? あ、レトも撃ちたいのね。はいどーぞ。

レトに渡すとスリングを使って、ルイの背で全身をぐりんぐりん回転してのフルスイング。レトのスリングってそういう攻撃モーションだったっけ…?

まあいいか。私ももう一度拡大『ジュエル』の宝石を作って、撃つ。ぺちっとな。うーん、ダメージはやはり通らんか。

…あ。そういえば『投石玉』があったな。何で投げても5ダメージ固定アイテム。こういうときには使えるんじゃなかろうか。

スリングショットで撃つには大きすぎるので、レトからスリングを借り受けて、『投石玉』を撃つ。

ぺちっ、と当たり、でも5ダメは出た。うんうん、よしよし。

『投石玉』は使いどころがわからんし、5個くらいしか作ってなかった。惜しいことをしたわ。何事も備えだな。

噛み締めつつぺちぺちと更に2個を放ち、残り2個はレトにスリングと共に託す。レトは目をキラキラさせていた。うむ、任せたぞ。

トリケラトプスが雷撃の麻痺から回復してしまったので、後方へ下がる。また後でチャンスがあるだろう。麻痺したら、レトのためにも出来るだけ近づいてみよう。

前衛の邪魔にならず、かつ麻痺したらすぐ撃てる辺りにくると、カソックさんたちが何か地面にしゃがみこんでいた。

「『ビーストバインド』……ここはこんなもんかな?」

「あのでかさだし、どれかには嵌まってくれるでしょ!」

「ノシシなんだから突進はするはず…するはず? 」

どうやら設置型の罠を仕掛けているらしい。

『ビーストバインド』は害獣しかかからない、味方は踏んでもはまらないトラバサミの魔法だ。突進封じには効果的な罠だろう。

解除がかかった獲物の力や知恵によって変動する物質的な罠と違い、魔法の罠は一度かかったら解けるまでは時間制だ。『ビーストバインド』は120秒とかじゃなかったかな? しかも畑の害獣に分類される生物は確定でかかる、これは破格の性能。

カソックさんたちは他の場所にも罠を仕掛けるようだ。この広大な畑に罠を仕掛けるのは大変だろう。いろいろな戦い方があるねえ。

そうこうしている内に再びの暴風、豪雨からの地響き、轟音。

近いとすごいな雷! 当たらないとわかっていてもドキドキする。

麻痺が入ったのを確認したら、ルイを走らせてまた近づく。レトのフルスイング、ぺちっと。よしよし、ダメージ出てる。

二発終えたら、さくっと撤退だ。

さて。ダメージ行動はしたので、後は出来ることがない。本当に眺めているだけになってしまうな。せっかくだしトリケラトプスの観察でもするか。

見たところ魔法攻撃とかはしない、完全な物理派だ。それがわかったので、バフも物理防御を上げるものが飛び交ってるらしい。

バフ班は目に入ったプレイヤーへ無差別に投げてるのか、たまに猫にもバフが飛んでくる。ありがたや。当たるほど近づく気はなくても、事故死ってものがあるからな。

ちなみに取巻きウリボーは最初のフーテンさんの嵐で飛んでいった後、復帰してきてない。その辺で会話してたカソックさんたちが言ってた。

何度目かのフーテンさんの嵐と雷撃、の後に麻痺が入らず、トリケラトプスが暴れだす。

「第二形態来るよー!」

「前衛は一旦離脱!バフ固めて!」

おっとと。これは猫ももっと下がって邪魔にならないようにした方がいいな。