軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.畑を守れ

夕暮れ、広大な畑が夕日でオレンジに染まるのは美しいものだ。

レイド前の炊き出しで配られたおにぎりと緑茶うまい。畑で食べる塩にぎりとたくあんとか最高では? なお、たくあんは赤い。赤ラコラ漬けの一種らしい。ポリポリおいしい。

結局、レイドには参加することにした。農家の人々のイイヨイイヨ参加しちゃいなよに後押しされたというか、流されたというか。

神父さんの「何事も経験ですよ」の微笑みにそれもそうかな~と思ってしまって。神父さんマジ神父さん。とても掲示板で「俺氏プギャーーーwww」とかいっていたようには見えない。

ちなみにマケボでバフ教本探したけど、特にいいものは売ってなかった。

ギルドまで買いにいこうかとも思ったけど、畑主の神父さんとフレンドじゃない猫は畑の出入りに制限がある。収穫してたときは結構出入りもあったからフレンドのフレンドまで出入り許可が出来る設定になってたらしいのだが、収穫終えたら制限は戻った。

神父さんのガワ剥がれ事件が伝播し、レイド参加したい人がギルド前に多く来てるせいらしい。畑は『農業』持ってないと入れないゾーンだからそうそう増えはしないのだが、人数的には最初から集まってた数で十分だし、掲示板で話してた面子は既に収穫で集まってるし、今回はこれでやっちゃおう、というのが畑主神父の意向。みんな「それもそーねー」て感じ。

それにしても、見渡す限りみんなカソック装備、老若男女人種問わずすべてがカソックで壮観。

元々、畑主からレイド参加希望者はカソック着て農業ギルド集合っていう指示だったそうな。掲示板で参加者集めてる段階で神官ばっかりだったから、それが分かりやすいだろうって。なおカソックは神官になった時に神殿からもらえるMP増強装備らしい。

だから別に集合時だけの装備で、今は着替えてもいいのだが、あまりにもカソック大集合で面白くなってしまった農家たちが集合写真とか撮っててそうなっている。たしかに壮観、着替えるの惜しくなっちゃうよね。

ちなみにその前はみんな作業着で農家大集合写真撮ってた。猫もこっちはガーデニングエプロンに麦わら帽子で混ぜてもらった。イエーイ。

その内、もうカソックでいいんじゃね、このままこれでレイドも動画撮ろう、て話になったそうで、ポユズさんはカソックになった。

そして猫たち神官じゃない勢は…そう!あれがあるじゃない『ウィザード・ドレス』!

リーさんは普通にオシャレ着として持ってたし、フーテンさんも在庫にあったらしい。最近は初心者シリーズ錬金術のおかげでマケボにもよく出てる。エドさんとヤマビコさんはさっさとマケボで買って着替えていた。ノリがいい。

猫? 猫は作ります。

はいドッコイショ。

「猫ちゃん釜持ち歩いてんの!?」

「ルイがいるときは初心者釜持ってるにゃん。いついかなるときもレッツアルケミーにゃんよ~」

運搬は重量制限の8割以上に荷物をいれて持ち歩いていると上がりやすいのだ。ルイの荷鞍がある猫は、大量のアイテムを常に持ち歩いています。もはや人間倉庫――いや猫倉庫と言えるだろう。

初心者シャツをくるくるして突っ込み『腐敗』を入れてチン。

「にゃ。『ウィザード・ボレロ』にゃん」

「当たり装備おめでとう~~。買い取る?」

「さすが妖怪物欲センサーのお仕事にゃん~! 売るにゃん」

『ウィザード』装備の一番人気は不動のドレスだが、地味に出にくくて高値がついてるのが上着装備の『ウィザード・ボレロ』だったりする。これもオシャレアイテムで、何に合わせてもいい黒いシンプルなボレロだ。

ちなみに『ウィザード』ガチャ流行のおかげか、帽子とかはまあまあお安くなっている。初心者にはとんがり帽子増えた。おかげで猫も紛れてます。

二回目の錬金ガチャは『ウィザード・ドレス』。はい出ました。着替えます。

「結果としてはよかったけど、ハット出たら損じゃない?」

「ハットだってさすがにまだ3万以下には落ちてないにゃんよ~。従魔用に装備を作り替えるスキルがあるって聞いたし、レト用に確保しておこうかと思ったにゃん」

レトとお揃い装備にしてみたいのだ。大丈夫、飼主馬鹿思考の自覚はある。スカーフお揃いだけど、もっと揃えたいじゃない。

「あ~『アクセサリー変換』ね。『装飾師』さん紹介しようか?」

「にゃ? 『裁縫師』じゃなくて??」

「プレイヤー用の装備を従魔が装備できるようにする『アクセサリー変換』は装飾工のスキルよ~。『裁縫』の『従魔装備』は材料の段階から従魔の専用装備アイテムを仕立てるスキルだねえ」

「知らなかったにゃあ。『装飾師』さんなら知り合いがいるけど、今きっと忙しいにゃんねえ…」

ティアラさんにはちょうどいろいろお願いしてしまったところだしなあ。それに装飾師だって色々なスキルがあるだろうから、ティアラさんが『アクセサリー変換』を持っているとは限らない。

『ウィザード・ハット』を持ってるわけでもないし、レトとお揃い計画は急がないので、装飾師さんの紹介は特にしてもらわないことにした。

なにしろ今は精霊関連でいつお金が飛ぶかわからなくて戦々恐々にゃん。

ちなみにカソック以外はみないつもの装備でいいのだが、なんとなく上着や鎧などは制限している様子。

ヤマビコさんも鎧はあきらめたらしく、「今日の俺は生肉の盾や…」などと発言していた。生肉…。ノリで集まったレイドはノリで出来ている。

そういうヤマビコさんは両手に盾装備。これは耐える用の防具らしく、普段は片手盾に剣装備とのこと。やたらごっつい盾で両方重そう。「実際重いで」とのこと。はい。猫では引きずっても動かないやつだ。

頭装備はいつもなら鎧とセットの兜らしいが、鎧無しでは浮くので作業着からそのままタオル巻きである。…猫、浮いてる度合いではタオルも変わらない気がする。言わんけど。

ポユズさんはかなりでっかい弓装備。和弓スタイルだけど、弓自体は装飾的で洋弓っぽいデザイン。矢筒装備を背負っている他、頭装備はシニヨン。髪を一纏めにしているとかなり雰囲気が違う。薄手のリボンがひらひらしていて可愛い。顔周りがすっきりしてるので大粒の耳飾りが映える。

リーさんは武器なし、魔法薬を投擲するので両手フリーなのが楽なんだそうだ。しいていえば投擲にプラス効果のあるグローブが武器。なお発動体指輪をしている。

頭装備は黒レースの短いヴェールで、角度によってキラキラと光る。ドレスと相まって未亡人って感じがする。言わんけど。

大きなトップのついたペンダントが印象的。『印』ぽいけど、神官じゃないから違うっぽい。

エドさんは腰回りに黒いベルトをしていて、そこにずらりとナイフが差さってる、なんだか暗殺者っぽい装備。ついでになぜか周囲にもナイフが浮いている。装備品の効果らしい。

ちなみにこれはナイフではなく短矢だそうで、ボウガンに似た武器で撃つアイテムだそうな。頭装備は顔の下半分を覆う黒いマスクで、大きなボウガンを片手に携えた姿はマジ暗殺者。

フーテンさんは錫杖のようなでかい杖装備。こちらもなぜか周囲にでかい宝石?のようなものが三つ浮いている。魔道杖の付属品らしい。

頭装備は長い…、これはなんていうの? つけ毛? 髪飾り? 三つ編みの長いのみたいなのが後ろ頭から五本、長く垂れてふわふわなびいている。なんか飾りもジャラジャラしている。フーテンさんの後ろ髪長いのは、これをつけるためだったのか?

あと靴装備が特殊なのか、浮いてる。

「フーテンはブーツで補填しないと、歩き回る平地戦闘はバテるのよ」

「運動不足にゃん??」

リーさんの暴露に納得。さすが砲台魔法師、魔力以外の数値が貧弱なんだな。

「高台があるといいんだけどね~」

「畑では無理にゃんね~」

こうして実際に戦闘用装備になった人々を見ると、やはり街着って必要なんだなとしみじみする。ヒラヒラしたりフワフワ浮いてたり、とても嵩張っている…。

猫も戦闘用装備を揃え始めたら嵩張っちゃうんだろうか。

猫は『ウィザード・ドレス』になった以外は特に何もなく、いつも通り。

『ウィザード・ハット』だと普通にウィザード装備になってしまうなと思ったけど、ここでMP増加装備を外すのもよくない。まあみんな頭装備は自由にしてるしね。装備が全部真っ黒になるので、ちょっと黒魔道士っぽい。

ちなみにジョブは『魔法師』と『小さな農家』のままだ。農家のジョブは害獣・害虫への特効、更に植物の多いフィールドでの筋力・耐久増、スタミナ増効果があるそうで、戦闘ジョブが充実してないうちは農家ジョブ、結構いいんだって。へえ~。

あ、消耗した初心者シリーズちょっと補充しておこう。このレイドでたぶんLV上がっちゃうと思うし。

前は3000まで即買いとしておけばそこそこ集まってたのに、今は20枚集まらないなあ。蜘蛛の巣ヴェールに化けると思えば5000は買ってもいい…、うん、まあいいか。とりあえず5000まででもう10枚買えた。ボレロを売った分があるからまだ買えるけど、出物がないのでここまで。

『ウィザード・ドレス』装備になった人々も混ぜたカソック大集合レイド記念写真を撮影して、そろそろ始まる時間。

畑は夕闇に包まれ、そよそよと少し冷たい風が吹いている。

さすがに畑が空っぽだと害獣は来ないらしく、誘い込むために急遽、さまざまな野菜が植えられている。

誘い込む餌に過ぎないし、害獣は作物を食べると回復したりバフがついたりする仕様があるため、なるべく品質の悪い作物が望ましい。ということで、農家たち秘蔵の最低品質の種が大放出された。

最低品質の種はそもそも発芽率が悪い、ということで生活魔法師の6人と、あと木属性持ちの神官が並んで『発芽』と『グロウシード』をかけてかろうじて発芽した、選りすぐりの最低品質の種による畑が完成したのだった。

そんなわけで品種いろいろ、ごっちゃりとした罠畑が中央に存在している。

「…来たぞ!」

そんな適当な畑でもレイドの主は誘い込まれてしまったらしい。

「明かりを!」

合図で全員が光を打ち上げる。さすが神官農家、全員が光属性持ちだ。猫もにぎやかしに『光源』しました。

周囲が一気に明るくなり、視界は十分。レイド害獣の全容が明らかになる。

「…おい、ノシシじゃねーじゃん!!」

「シルエットで間違えたんじゃね!?」

「前情報間違ってんぞ神父ー!!」

「どう見てもトリケラトプス」

「突然のジュラシックファーム」

ざわめく農家たち。

「…! 違います! みなさん、見た目に惑わされず名前を見てください!」

畑主神官さんがはっと目を見開き、険しい顔で声をあげた。

「……『畑大ノシシ』だと!?」

「いくらなんでも無理があるだろ運営ェ」

「邪悪な波動を感じます…畑の作物を求めるあまり変容してしまったのでしょう…。なんと、なんと哀れな…!」

神父ロール生き生きしてるな畑主さん。

「プギャーーー」

「お野菜になろ?」

「俺もお野菜だよ…」

「やめておあげなさいぴえん」

外野は囃し立てている。なお「ぴえん」も神父さんは掲示板で連発していたので煽っている。

白いトゲが背中にびっしり生えてて、立派な4本の角、そして茶色い襟巻きもしっかりある。うん、どう見てもトリケラトプス。でーっかい。

しかし名目上『畑大ノシシ』らしいレイドボスは、ズシン、ズシンと大地を揺らしながら畑の中へ侵入した。

「グラアァァァァァァァアア!!」