作品タイトル不明
44.中級者猫の近況
そうはいっても『人形製作』関連で忙しそうな手を煩わせるのも本望ではないし、猫は特に急いでない。また今度でいいかな。
ひとまず猫の用事も済んだことだし、竜巻の向こうの廃墟城探索は、これにて終了。
後日、再チャレンジもしたナマナマさんの話によると、人形製作師さんを捕まえるのはたぶん出来ない仕様とのことだった。『人形製作』を取った上で『精霊傀儡』持ちのショーユラさんも巻き込んで複数回の挑戦でも遭えなかったそうな。
「人形製作師はもういない、っていうのを徹底したいのかもしれないなー」とはナマナマさん談。
プレイヤーが新しい人形製作師になっていく、そういうストーリーなのかもしれないってさ。
そんなわけでナマナマさんとショーユラさんは『人形製作』を習得して、新しい生産の道へ踏み込んだ。複数生産は茨の道だが、猫のロニのためにも頑張ってほしい。
農家神官ズもあれこれ再挑戦して、ゴーレムを得たり、ゴーレムを進化させたりとパワーアップが出来たらしい。
メタルの木は今のところ入手不可能で、メタルガチャは採取のみの仕様。『タイムパス』での育成も出来なくはないけど、アライアンスならともかく個人ではめんどくさい、とのこと。それはそう。みんな地道に『ゴーレムメタル』の回収に挑むようだ。
そこで必要になったのが、『ウィンドストーム』の入った『魔法玉』ないし『魔法飴』である。
猫はまだ『ウィンドストーム』を覚えていなかったけど、これから売れるアイテムとあらば覚えるのはやぶさかではない。
早速『ウィンドストーム』の教本を購入。『ウィンドストーム』は風属性の中級全体魔法。猫でもMP増強装備を工夫すれば、なんとか覚えることが出来た。猫の初めての全体攻撃魔法!
神官さんたちも覚えれば済む話ではあるが、違う属性の、特に攻撃系の魔法を覚えるとヒールの回復量がわずかながら下がるとかで、推奨されないんだって。前線のヒーラーは考えることがたくさんあって大変だ。
猫としては売れるアイテムが増えるので、ありがたい話である。
『ウィンドストーム』といえば、フーテンさんも『錬金術』ラーニングのために錬成陣を試し始めた。使うのは猫の製作した『古式真円錬成陣』。錬金釜と同じく、古式とつく錬金道具にはステータスの参照がある。魔力の高いフーテンさんには、普通のよりこちらの方が合うみたい。うらやましい!
相変わらず爆発させているようだけど、初心者支援の一環として買取もしてるので、素材に困らないようだ。錬成陣もラーニングすれば、『錬金術』も覚えられるのだろう。頑張ってほしい。
そうそう、『古式真円錬成陣』についても、裁縫師であるペチカちゃんの協力のもと糸素材を融通してもらってあれこれ試した。試したが、魔型や術型のレシピは発掘できなかった。いつもの氷や雷の属性変換じゃダメみたい。もしかしたら、レシピがないのかもしれない。
古式錬成陣には、真円や菱形、星形の違いしかないのかも? だからクエストも、レシピ三つだったのかなあ。
そのクエスト、『錬金術師の再興』の3番目は『古式真円錬成陣』を10個作って、自由都市の行政施設に納めることだった。
納めたら錬成陣の共有施設もオープンした……といいたいところだけど、タッチの差で他の人がオープンさせていた。惜しかった。猫は七不思議クエストの関係で学園都市に廃墟がなかったけど、クエストによっては中にあるみたいだからね。そっちだったら、もっと楽だったのかも?
しかし共有施設が2つともオープンしたことで、自由都市にもNPC錬金術師が増えた。これまでふたつある錬金術店は委託販売で、店主が錬金術師なわけではなかった。それが錬金術師のお店にリニューアルされたのだ。
NPC錬金術師はプレイヤーの代わりに圧縮や錬成をしてくれる他、材料を持っていくと新しいアイテムを作成してくれたりする。錬金術師の猫には前者は不要だが、後者の新アイテム作成は心が躍る。いや、新しい錬金アイテムっていうわけではなくて、ごく普通のアイテム交換NPCと同じなんだけどね。
でも新しいアイテムが増えるというのは、いつだってちょっと楽しいものだ。
「それで装備が最近人気のポンチョに変わってるわけね~」
「猫にとっても似合うにゃん? 褒め称えるといいにゃん!」
「これから夏だから、街着は夏服も用意しておいた方がいいにゃんよ~」
「理解がないにゃん~~!」
それはたしかにそうなんですけどね!
いつもの自由都市、露店通りで今日はフーテンさんのお店にお邪魔している。錬成陣のラーニングも兼ねた露店らしく、フーテンさんの手元からはプスプス煙が上がっている。
猫の新しい街着はブラウングレーの刺繍ポンチョに、青いベレー帽。ポンチョはフサフサの縁取りがあって、明らかに秋冬物。しかし最近流行りのおしゃれ装備である。
交換NPCが新しく登場すると、みんな一通り交換してみるからこういう現象が起きる。猫も流行りに乗ったわけだ。
かくいうフーテンさんもベレー帽なので、交換はしたのだろう。
「猫はいつでも毛皮を着てるから、夏服といっても迷うにゃんね」
「いつだったかアロハ着てたじゃない? あれでよいのでは」
「あれは南国仕様にゃんね」
ヤシの木柄のアロハシャツ、ポーツに初めて行ったときにお土産屋で購入して、一時期愛用していた。麦わら帽子とセットで夏! て感じで気に入ってたんだけど、思えばあれは冬でしたね。猫ったら季節感がない。
麦わら帽子は今でも庭仕事しているときに装備したりしているけど、アロハシャツはしまいこんでいたな。今度また出してくるか、いや新しい柄を買いたい。ポーツのお土産屋さんに行かなくては。
「『ウィンドストーム』の『魔法玉』、あれから上手くいった?」
「全然にゃんね~~、やっぱり素材探しに難航してるにゃん。成功する素材はコスパが悪すぎるにゃ」
「多少コスパ悪くても、彼らなら買うんじゃない? まだポータル開通してないみたいだし」
「にゃあ、開通クエストがめんどくさいって嘆いてたにゃんね~」
農家神官のアルミハクさんが、ポータルの開通クエストやるより毎回タンブルウィード刈る方がマシだと嘆いていた。少しずつしか進まないから、しばらく通うのは一緒みたい。
たぶん開通する頃には必要なくなってるやつ、とハイライトのなくなった目で語っていた。相当大変みたいね。
「『菱形錬成陣』の方が上手くいきそうだけど、その場合は魔法を混ぜる必要があるにゃんよ~」
「ミックスか~、錬金術師は持ってる魔法の種類が多くないと大変そうね?」
「にゃん~~」
何と何の魔法を混ぜたら『ウィンドストーム』になるかなんて、さっぱりわからないもんね。たぶん新しい知識が必要なやつ。いつぞや魔道具マーケットで見た(と思われる)『魔力圧縮』を使うときなのだろう。
大体のことを『真円錬成陣』でやってきたけど、そろそろ卒業して『菱形錬成陣』をメインで使うときがきたのかもしれない。
『菱形錬成陣』の本は、あんまり読んできてないんだよなあ。また書庫にいかないと。
いや、まだ『菱形錬成陣』ならうまく『ウィンドストーム』の『魔法玉』が出来るとは限らないのだが。
『魔法玉』と違って『魔法飴』の方は優秀で、『ウィンドストーム』でも問題なく閉じ込めてくれる。
こちらは『ストームキャンディ』となり自分自身へダメージが来る仕様なのだが、竜巻は止まるのでこれで問題ないみたい。
『魔法玉』は上手くいかないのに『ストームキャンディ』が作れるのは、たぶんレア素材である『岩蜜』が入ってるからだろう。農家神官たちが格安で融通してくれるので、こちらも格安で『ストームキャンディ』を彼らに売ることが出来る。
だから今のところ『ウィンドストーム』は『魔法飴』で事足りていて、『魔法玉』での製造は気にしなくていい。
気にしなくていいんだけど、出来ないとなると気になってきてしまうもの。
「猫も新しい階段を上る日が来たにゃん……」
「中級の壁にゃん? 頑張るにゃん~~」
「他人事にゃんよ~~!」
「いやあ、俺はほぼ魔法師一本で来たから、生産のことは何もわからないしな~。商人のことなら多少アドバイスできるといっても、猫ちゃんの商人仕様と、俺の商人とだいぶ違いそうだしね?」
「猫はゴリラにはなれないにゃん」
「猫だにゃん?」
「骨の髄まで猫だにゃん」
商人もランクが上がりにくくなってきたのはたしか。猫は横ばいにいろいろ伸ばしているから、伸び悩むのは仕方ないんだけどね。
まあ強くなって行きたい場所があるわけでもなく、新しいダンジョンに挑戦したいとか、そういうこともない。今のままでも問題はない。ただこれまではちょくちょくLVやランクが上がっていたもんだから、何の動きもないとそれはそれで気になるのである。
うーん、『菱形錬成陣』に必要そうだし、ずっと目をそらし続けてきたけど師匠ジョンさんとの生活魔法を集めるという約束もあったことだし、そっちの方面へ手を伸ばしていこうかなあ。
レベル上げよりは金策したいし、猫には横道が合っている気がする。
新しいお客さんが来たのでフーテンさんの元を後にして、どんぶらこっこと露店通りを流される。フーテンさんのお店は相変わらず初心者支援をやっていて、初心者服のお客さんが絶えない。
いやあ、猫もあの頃に比べれば成長したなあ、などと懐かしく思いつつ。
流れていくと、露店の隙間を発見。早速入り込んだら、露店の準備。相変わらず売るものはないけれど、買うものはいくらあっても足りない。もはや錬金術師の宿命である。
いや、猫が散財したいからってわけじゃなくてね? 入り用なものがたくさんたくさんあるのである。素材はいくらあってもスポンと飛んでいっちゃうしね。
それでは開店お知らせGPS付メールを希望者各位に送って、開店。
にゃん!
『猫の店、開店にゃん!』