作品タイトル不明
43.錬成陣の作り方
鈍い金属の輝き。重々しい風体の四肢に見合わない、滑らかな動き。
プシューッと激しいスチーム。
「おおーっ、かっこいい!」
「でかー!」
巨大なゴーレムは城門前に現れた。修理が完了したゴーレムおばあさんである。
座っていたときからなかなかの大きさだったけど、立ち上がるとかなりの大きさ。3階建てくらいあるだろうか。いやでっかいな!?
どうやら城門前広場の下が、猫たちが見つけたゴーレムおばあさんのいた場所だったらしい。修理した後、エレベーターのようなシステムが作動して、こうして広場にゴーレムが現れたというわけ。
「しかしこの風体、めちゃくちゃBOSSですな」
「何事もなく終えて城を出ようとしたら遭ってたかもしれない…」
「ありそう、すごくありそう」
たしかにゴーレムおばあさんはかなりBOSSっぽい。なにせでかいし。味方とは到底思えないルックスだ。
しかし当初の予定通り、タスクさんが召喚石を掲げたところ反応があったので、召喚契約が可能な個体らしい。
「いやこんなにでかいとは思ってなかった!」
タスクさんはかなり戸惑っていたが、それでも有言実行で召喚契約を行ったようだ。
無事契約が結ばれると、ゴーレムはみるみる小さくなり2mほどに縮まった。
「そのパターンか」
「てことは特殊個体じゃなさそうねえ」
巨大なBOSS系魔物が召喚契約に応じるときには2種類ある。ひとつは巨大なまま契約、もうひとつは小さくなって契約だ。
前者は特殊個体で、ユニークでこそないもののかなり珍しい事象。前提条件が難しかったり、そもそもの出現がレアだったり。再現がかなり困難で、ほぼユニークと言われている。ほぼ、というのは再現した例がいくつかあって、ユニークじゃないことは確定しているんだって。
で、後者は再現がそれほど難しくないパターンだ。
今回でいうと、ここに鍛冶師を連れてきて『ゴーレムメタル』5個用意する、というのはそう難しい条件ではない、ってことなんだろう。
「性能は!?」
「どんな感じ!?」
「人柱乙」
タスクさんが農家神官ズに囲まれ、質問を受けている。
それを横目に猫が気になるのは、人形製作師関連だ。
ティアラさんたちは修理で何か情報を得られたのだろうか!
「へへーっ! やりましたぜ」
ニヤニヤと嬉しそうなのはナマナマさんだ。ということはもしかして!?
「ゴーレムの修理をしましたら、『人形製作』が習得可能になりましたのよ」
「隠された秘密に辿り着いたってアナウンスも出ましたね!」
「SP10ごちそうさまでした!」
「引っ張られてきた甲斐がありましたな!」
おお、ゴーレムの修復は隠された秘密だったのか。
なんだかちょっと悔しそうなのはショーユラさんだ。といっても猫に着ぐるみの表情がわかるわけではなく、腕組みして首を傾げているからわかっただけなのだが。
「何か気にかかることがあったにゃん?」
「いえ、『人形製作』のスキル自体は出ているんですけども、イベントからすると前提条件が『鍛冶』っぽいので悩ましいですね!」
「にゃん~、でもゴーレムおばあさんのイベントを発見したのは猫とショーユラさんで、『鍛冶』は関係なかったにゃんよ?」
「そう言われると、たしかに?」
「『人形製作』が取得出来るなら、きっと『裁縫』とか『 精霊傀儡(せいれいくぐつ) 』でも作れるにゃん~」
そうじゃないと、さすがに習得可能にはならないんだろうしね。
ずっと前に猫と一緒に錬金術ギルドの書庫の罠を踏んだフーテンさんたちだって、習得可能になったのは『魔道工』ではなく『魔纏術』だったと聞いた。『魔道工』が習得可能になったのは、元々『錬金術』をもってたリーさんだけだったんだよね。
そういうふうに、前提スキルを持っていなかった場合には代替スキルが習得可能になるのが隠された秘密なのだそうだ。
だからショーユラさんだって『人形製作』は取っていいはずなのだ。いや、そもそもショーユラさんはぬいぐるみも着ぐるみも作ってるわけだし、このスキルも今更感はあるのだけども。
「うーんん、まあ悩んでみることにします」
「たぶん取っちゃうと思うにゃん~」
「僕もそう思いますが、悩みたいんですー!」
わかる。悩むのも楽しいんだよね。過程って大事。
「これで城でやろうと思ってたことはだいたい片付いた感じかな~?」
「にゃん~、猫の『錬成陣』のレシピが片付かなかったにゃ」
「あれ、ここに来ようと思ったメインの用事じゃないっけ?」
「そうにゃん~、でも城の錬金術師の操り人形くんは錬成陣を持ってなかったにゃんよ。別のところにあったのかもしれないけど、圧縮で忙しそうで無理だったにゃん」
「あの部屋いっぱいのがらくたをひとりで圧縮してたものねえ……」
フーテンさんは探そうかと言ってくれたけど、さすがに今日はもういい時間だ。解散することになった。
城に残って探索したい人もいれば、用事があって一旦戻りたい人もいたので、この場解散だ。
猫も今日のところは、ここでログアウト。ここに来るにはまず竜巻をどうにかしないといけないし、『欠けた通行証』も集めなければならない。ひとりでは来られそうにないもんね。いや、二度目は簡単なルートとかあるのかもしれないけども。万全を期したい。
「それじゃあお疲れさまっしたー!」
「今日はいろいろありがとうね~~ 」
「たくさんお世話になりました!」
「お疲れさまにゃん~~」
わちゃわちゃと挨拶したあとは、『リターン』で帰還していく面々を見送る。
「今日はありがとうにゃん~!」
「こちらこそラーニングごちそうさまにゃんよ~」
「しばらく停滞してた『農業』LVもガンガン上がったしな」
「僕もゴーレムがパワーアップする道が見えたし、ありがとうね!」
「相変わらず大所帯で楽しかったわ! また誘ってねえ」
ひとまず帰還はフーテンさんたちと、それから硝子連合の一部だ。
「『鍛冶』LV上げ、新素材、イベントごちでした!」
「お疲れっした~」
「わたくしも停滞していた『ガラス工』が上がりましたし、『人形製作』には活路がありそうで悩ましいところですわね」
「とかなんとかいってみんな明日には取っちゃうんでしょう?」
「悩む時間もまた楽しみにゃんよ~」
消えていくのを眺めるのはちょっと寂しさもあるが、残る面子もいる。
硝子連合でも、ナマナマさんとショーユラさんは、人形製作師を探すために居残りだ。
それから農家神官たちも、『ゴーレムメタル』やメタルの木目当てで残るようだ。
「我々単身で来るには難しそうな場所ですし」
「たぶんポータルが開通するとは思いますよ」
「そうにゃん? ダンジョンなのに?」
「 転移施設(ポータルポート) の拡張機能だねえ。クエストやると増えるんだよ。魔道具マーケットとかも行けるようになる」
「にゃあ、便利にゃん」
それなら猫にもまた来られる気がするぞ。
そんな感じで、今回の冒険は終了。アライアンスも解散だ。お疲れさまでした。
消化不良なところもちょっとあったけど、まあ全部拾うには時間が足りなかったね。そういうこともある。
はい。
ログインして居残り後の捜索を始めます。大所帯からひとりになったので、ちょっとだけ寂しい。
しかし中庭では農家神官ズがきゃっきゃしてるし、城にはナマナマさんがうろついているのを見かけたりと、まったく誰もいないわけではない。
みんな頑張ってるし、猫も『錬成陣』のレシピを頑張ろうかな!
「『錬成陣』が欲しいの? それなら作ったらいいじゃない」
気合いを入れて操り人形くんに話しかけたら、あっさりとレシピを教えてもらえることになった。
にゃんと。
いや、たぶん『錬成陣』のレシピを入手するのはソロ専用イベントだったんだろう。そういえば錬金釜のときもソロで手に入れたもんね。そういう縛りがあってもおかしくはない。きっとそう。
『錬成陣』に必要なのは『木綿の布』に『魔鉄』と『インク』、『糸』。
布は操り人形くんがくれて、あとの材料はこっちで用意する形式。錬金釜と違ったのは『魔鉄』じゃなくても金属はなんでもよくて、重要な素材は『糸』だった点。
金属がなんでもいいというので、メタルの木から木の実を拝借してガチャ。メタルの木は何もしなければ3つだけ木の実が採れる仕様だった。
育てるのもやってみたけど、あれはMP豊富な農家神官が惜しげもなく『タイムパス』することで収穫できていたのだと痛感した。猫には無理だったにゃん……。
そんなわけで手に入れた『メタルの実』は『鉄』『鉄』『魔鉄』とごく普通のハズレで、結局『魔鉄』を使うことにした。悔しくなんかないやい。
インクは手持ちの『悩めるインク』で、困ったのは『糸』。
しかし城にはショーユラさんがうろついていた。
「『糸』ですか?」
「そうにゃん、『錬成陣』を作るのに使うにゃん。組み合わせる素材は『木綿の布』にゃん~」
「それなら『木綿の糸』か、あるいは魔法に適した素材ってことで『魔綿の糸』がよさそうですねえ」
「にゃあ、『錬金術』だし、魔素材の方がよさそうにゃんね 」
「中庭に『マジックコットン』が生えていたので、5つ持ってきてくれれば僕が糸に出来ますよ!」
「持つべきものは裁縫師の友だにゃん~!」
ということでショーユラさんに糸を作ってもらい、事なきを得た。マケボに『裁縫』の中間素材って全然売ってないから、本当に助かりました。
作り方は簡単、というか単純。
まず『悩めるインク』で、『木綿の布』に錬成陣の図案を描く。図案は操り人形くんが見本をくれた。ちなみに『真円錬成陣』である。
図案を書いたら『魔鉄』を中央に置き『魔綿の糸』を図案に沿わせる。一筆書きになるよう、魔力の通り道へ順番に載せていく。
そうしたら、錬成陣を使うときのように魔力を入れる。つまり『渦』を使う。すると魔力が糸に沿って流れて定着し、最後に『魔鉄』が砕けて完成!
なおこのレシピ、素材が図案に合っていない場合は最後に置いた金属が砕けないし、そもそも魔力が入っていかないらしい。
操り人形くんによると、中央に載せた金属が砕けることで出力の確認が出来ると同時に、砕けた金属の成分が『錬成陣』に宿る、という仕様なんだって。なので金属は図案に対して弱すぎてもいけないし、強すぎてもいけないのだそう。
そして出力には糸の伝達能力も深く関係しており、素材選びから『魔道工』は始まっているのだ、という話だった。なるほど深い。
ともあれ、猫はショーユラさんのおかげで一発成功。ありがたや~。
出来たアイテムは『古式真円錬成陣』。ほうほう。これも古式になるのか。新式は別にある?
『錬金術師の再興2をクリアしました』
おっと、アナウンス。
そうか、『術型古式錬金釜』『魔型古式錬金釜』そして今回の『古式真円錬成陣』で、『魔道工』のレシピ3つを発見したことになるのか。
あれ、てことはもしかして『古式真円錬成陣』にも術型と魔型がある?
考えられるのは上に置く『魔鉄』の属性を変えることだけど、そこまで単純な変化とは思えないし、やるとしたら糸かなあ。試すなら、ショーユラさんに協力をお願いしなければ。