作品タイトル不明
42.ゴーレムメタル
「鍛冶師が言うには、人形製作師を受け継いだ子が廃墟へ出ていってしまったみたいよ。それで、自分たちはもう終わりだと考えているみたい」
「にゃあ……」
人形製作師っていうのは、ゴーレムおばあさんの言ってた管理権限を持つ子ってやつかな?
たしかにお先真っ暗というのも理解できるんだけど、ここ、ダンジョンなんだよねえ。
ダンジョンには本来、修復する性質がある。豊かな農園のダンジョンは収穫してもしても実がなり続けるし、廃れた庭園のダンジョンは修復してもしても直らない。それがダンジョンのお約束なのだ。
「ループしてるにゃん?」
「たぶんね~。聞いた話によると、彼らもダンジョンの一部らしいじゃない? てことは、壊れかけの状態が正常なのよね。私たちの行動が遅くて、人形製作師ちゃんには会えなかったんじゃないかしら。人形製作関連を目指してるなら、リベンジした方がいいかもしれないわね」
「残念にゃん~~」
まあたしかにいろいろ後手に回った感じはある。時間も結構かかっちゃってるしね。
「う~ん、でもゴーレムおばあさんがしていた話とちょっと合わないのが気になるにゃん」
「どういうこと?」
「職人街が異界化したとき、ゴーレムたちは異界から出られなくなったっていってたにゃんよ~」
「ああ、そういう。どうも異界化って、じっくり進むらしいのよ」
「じっくりにゃ?」
「ええ。異界が定着するまで、ていうとちょっとおかしいけど、完全にダンジョンになってしまうまでには結構タイムラグがあるみたいよ」
ユミーさんが言うには、ダンジョンって一朝一夕に出来るものじゃないらしい。そして、異界が重なりあうと時の流れもおかしくなる。
このふたつが合わさると何が起きるかというと、場所を保管するように時が止まってきれいなままダンジョン化するパターンと、むしろ早回しのように時がすぎてしまって廃墟となってダンジョン化するパターンと、二種類に分かれてくる。
前者の代表例が図書館ダンジョンなど学園都市のダンジョンで、ここは後者のダンジョンなんじゃないかと思われるそう。
一旦異界化してしまえば時は止まるけど、異界化までにかかった時は取り戻せない。
「にゃあ~、そうなると結局、ループ起点は謎にゃんね」
「そうね~。今はとりあえずもぎもぎ頑張るしかないわね!」
雑談しつつも『メタルの実』はもりもり増えていく。ひたすら収穫しては集めて、『ゴーレムメタル』を願って開封を繰り返す。
「『ゴーレムメタル』何個いるんだっけ?」
「30個て話でしたね」
「多いな!?」
出るのはだいたい10個にひとつくらい、といったところ。なので300個ほど収穫すれば足りる計算。
『『ゴーレムメタル』って誰か持ってないかー?』
タスクさんからアライアンスチャットがやってくる。
『今こちらもちょうど集めているところですね』
『暇なら君も中庭に来なさい』
『そうよ~、ただで手に入れようなんて許さないわ』
『えっ、なんかめんどくさいやつ?』
そりゃゴーレムを直そうというんだから、ティアラさんたちの班も『ゴーレムメタル』が必要になってもおかしくないよね。
『てか中庭? 廃墟の街でもしかしたら手に入るかも…みたいに言われたんだけど』
『なんだって?』
『街に木は生えてなかったし、敵ゴーレムのスクラップから手に入れる方法かな?』
『結構なレアの予感』
アライアンスの誰も『ゴーレムメタル』なんて手に入れてなかったんだから、たぶんレアなんだろうなあ。
タスクさんも中庭に合流。
ユミーさんの「謎の果樹園へようこそ!」を受けて、「畑でゴーレム育てるとかある!?」と爆笑しておられた。
「んでそっちは『ゴーレムメタル』何個いるの?」
「5個くらいって言ってたな」
「50個育てたらあげましょう」
「ノルマきっつ!」
文句を言いつつも粛々と『タイムパス』組へおさまっていく。
猫たちは場所を変えつつ収穫を続けていたが、やはり先に収穫が追いついてしまった。
「にゃあ、20個目にゃん!」
「あら! やっぱり幸運値がものをいうのかしら?」
「にゃん、猫26個開けて2個目にゃんよ」
「ランダムね、気のせいね……。すぐなにかにあやかりたくなっちゃうのよね」
「わかるにゃん~」
ガチャって最初は楽しいけど、だんだん虚無の作業だからね。
「どうする? 先にタスクにあげちゃう?」
「にゃあ、数が少ない方から動かしていく方が、全体が動くかもしれないにゃんね~」
「ゴーレムが動けるようになるなら、なにかイベントはありそうよね」
ということで相談の結果、タスクさんに先に必要量の『ゴーレムメタル』5個が渡ることに。
「おっ、ラッキー!」
「なにか起きたら教えてね!」
「まあそれはティアラちゃんたちのお仕事次第かな! 俺、メッセンジャーなだけであっちで仕事あるわけでもないから、届けてまた戻ってくるわ」
タスクさんが行って帰って、メッセンジャーを交代してもらったらしく庭班専属になり。
猫たちはひたすら収穫、そして開封。
「や、やった!!」
「ついに出たにゃー!」
「やりましたねー!」
「解放される……!」
ついに30個目の『メタルの実』を手にした。いや、28個目から急にきつくなって、全然出なくなった。妖怪イチタリナイの呪いにかかってしまったよ……。思わず他の人に開封してもらっちゃった。まあそううまくもいかなかったんだけど。
『ゴーレムメタル』以外のレア、『ミスリル』とか『アダマンタイト』とか出て「アーッ、欲しいのは今じゃないー!」ていう悲鳴が響いたりした。
そんなこんなありつつ、ついに揃ったのでいざ、鍛冶師の元へ!
鍛冶師の人形は、雪だるまのように3つのブリキ缶を積んだ外観をしていた。一番下の缶から足が生えているので、厳密に言うと雪だるまではない。
真ん中の缶から生えた腕にハンマーを持ち、『ゴーレムメタル』を差し出した猫たちにこう言った。
「これでゴーレムたちを修理することが出来る。もし、修理してほしいゴーレムがいたら連れてきてくれ」
「修理してほしいゴーレム……?」
思わずみんなで顔を見合わせてしまう。
いや、ゴーレムって猫はゴーレムおばあさんしか会ってないし、あっちはもう修理の手が入っているしなあ。
「壊れた人形とかも特に会ってないな」
「会ってもイベントで解決しちゃわなかった?」
進むと思ったイベントが進まなくて、困惑しかけたとき。アルミハクさんが、アッと声をあげた。
「もしかしてこれ改造屋オープン的なイベントじゃない!?」
「!? そ、それだ!?」
「きっとこれで召喚ゴーレムに手を加えることが出来るようになったんだよ!」
ワアッと一瞬、農家神官組が盛り上がる。
「でもたぶん材料『ゴーレムメタル』ですよね」
たぶんきっと絶対そう。
ノーカさんの発言にみな思い当たったのかがっくりと膝を折った。
「マジか……何個いるんだろ」
「いや待って、たぶん今回は特別に中庭の『メタルの木』をあれだけ使いまくれた可能性が高いよね……」
「ちょっと『メタルの木』の枝折って手に入れてくる」
「挿し木で増えるとは限らないよ。根ごといこう」
「ダンジョンだから大丈夫、大丈夫」
「 農業神(マッマ) に怒られますよ」
苦笑しながらアベルさんが言うと、あーっと頭を抱える。
「ノーカとアベルは他人事だと思ってぇ…!」
「そうだそうだ!」
「いや、俺ら責めるより、一回ゴーレム召喚して話しかけてみたらどうです? 初回無料とかあるかもしれないでしょ」
「それもそうだ」
「たしかに」
皆さっさとあきらめてゴーレムを召喚し、じゃんけんして列を作り始めた。
さすが神官農家さんたちは前線組というのもあり、ゴーレムもみんな似てる、というか型は同じで、色違いとか装備違いだ。みんな個性ゆたかなのに、そういうとこだけ揃っているからちょっと面白い。
ノーカさんとアベルさんはゴーレムを持っていないので、『メタルの木』が手に入らないか確かめてみるらしい。
「ランダムで金属が手に入る木というのは面白そうですしね」
「これからは『育樹』を取る人も増えそうです」
野菜農家がメインの農家神官は、『育樹』は持っていないのがオーソドックスらしい。庭で花見がしたいからと持ってたユミーさんが珍しい。いいよね、花見。猫もいずれは桜が欲しい。
「『育樹』か~、農業も奥が深いよねえ」
「沼やな、沼」
「浅瀬でちゃぷちゃぷくらいが楽しめる範囲よね」
鍛冶にもゴーレムにもそれほど興味がないフーテンさんたちは気楽なものだ。唯一、神官でかつ弓職人のポユズさんはゴーレム進化を狙っているので、農家神官の列に加わっていた。
残る4人とノーカさんたちと共に、中庭まで戻る。
「挿し木っていっても、いきなり折るわけにもいかないよな」
「ダンジョンではありますが、管理された庭園のようですしね」
「今さらですが管理人は鍛冶師さんでよかったのでしょうか……?」
「あー、庭師がいたけど壊れていなくなってもーたって、いうてたで」
「そうだったんだ?」
「それで花がもう咲かない、ゴーレムメタルは手に入らないって嘆いているのを、俺たちが育ててやる、てクエストだったんだ」
「なるほどね~」
どうやらメタルの木のクエスト発見者はエドさんで、ヤマビコさんが加わり、農家神官たちも参加して……という流れだったらしい。
「てことは、別に折ってもよさそうですね」
おもむろにノーカさんが手を伸ばし、枝に素早く手を叩きつける。
手刀……!
「む。切れません」
「いややわー脳筋は。刃物を使い、刃物を」
「ヤマさん、たぶんこれ刃物だと刃こぼれします」
「あー、メタルの木だから!?」
たしかに固そう。
「となると、掘るか、それともここ限定の植物か……」
「にゃあ、もしかして『ゴーレムメタル』が種かもしれないにゃん?」
「種……」
「え、金属なのに植えたら生えてくる感じ?」
「あり得なくはないにゃん」
「たしかにあり得なくはないですね」
「試してみるなら、もう一度ガチャですね……」
「にゃん……」
顔を見合わせて、どうしようかなあ、と考えていたところ。
『直りましたわよー!』
『やー、LVがあがったわー』
『難関でしたなあ』
『お疲れさまでした!』
『おつかれおつかれ~~』
アライアンスから人形連合の歓声が上がった。