軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26.魔法学校

アルカディア魔法学校は学園都市の中心部にある。大きな時計塔が目印で、時間になると鐘の音が聞こえてくる。

時計塔はどうにかすると中にも入れるらしくて、掲示板でも 写真(スクショ) を見たことがある。大小さまざまな歯車が並んでいて、なかなか見応えがあった。ちょっと行ってみたい。

いやいや、猫のひとまずの目的は魔法学校だ。

大きな時計塔の下には校舎を含むキャンパスが広がっている。一応、学校を隔てる壁はあるので、一般市民が校舎へ迷い込んでしまうことはない。なかなか出られなくて、塀の切れ目を探してうろうろする 学生(マレビト) が多いらしいけどね。

さて、まずはメインクエの流れに乗らんとす。

猫のお使いクエストは、ちょうど学園都市で始まるメインクエスト合流地点まで進んでいる。フラグが立っている状態。

攻略サイトで予習してきたところによると、魔法学校の前で行き倒れている老人を拾うと実は偉い教授で、マレビトの研究をしている人だった、という流れである。そこからマレビトなら歓迎だよ!と魔法学校へ入学できる。

魔法学校、中等部とかあるらしいんだけど、マレビトが入るのは大学のような研究部という部門だ。子どもたちが通う学校とは校舎からして分けられている。ちなみに魔法を極めて教師になると中等部の校舎へもいけるんだって。極めるとは……。

早速魔法学校への道を進んでいると、行き倒れ老教授を発見。

「猫の手いるにゃん~?」

「おお、ありがたい」

うつ伏せに倒れていたおじいちゃんに手を貸し、まずは起き上がってもらう。よっこいしょ。猫はこう見えてマッスル。『錬金釜』を持ち上げられる猫なので、人間を支えることも出来ます。

おじいちゃんを学園の塀に背を預けるようにして座らせる。そして水分と食事を与えるのがメインストーリーの流れである。どうやら食事を抜いて倒れたようなので。

「なにか食べるものをくださらんか……」

「任せるにゃん~」

水分と食事……なにか持ってたっけ? 水分は最近大量のハーブの消費にと作った『ハーブティー』、食料はさっき買った『キャラメルハッピーポップ』でいいか。

はいどうぞ。

「おお、『キャラメルハッピーポップ』とはなつかしい」

「なつかしいにゃ?」

「昔はよく買いに出掛けたものじゃ。今となっては忙しくてな……」

喋りつつも、おじいちゃんはもりもり食べる。そして飲む。

「あちち、この『ハーブティー』も癒されるのう。まだ温かい……、気まぐれな風猫族が珍しいと思ったら、君はもしや、マレビトかな?」

「そうにゃんよ~」

「それは素晴らしい。私はマレビトの研究をしておってのう。どうじゃ猫くん、魔法学校に興味がないかね?」

「とってもあるにゃん!」

「うむうむ」

食事と水分を取って気力を取り戻したおじいちゃんは、杖を片手にふんわりと立ち上がった。おお、浮いてる。

「食事のお礼に、魔法学校を案内して差し上げよう。ついておいで」

「嬉しいにゃん~」

ふわふわ浮かぶおじいちゃんの後をついていく。マジカル星属性おじいちゃんかと思ったけど、もしかして魔子族なのかな? 魔子族の身体的特徴は、背が低いくらいしかないのでちょっとわかりにくい。

いや、でも歩き方がスケート走りじゃないな。やはりマジカル星属性おじいちゃんだこれ。

老教授は魔法学校の門へたどり着くと、守衛さんに紋章のようなものを見せて入っていく。

「私の客人じゃよ」

「はい。どうぞお通りください」

ついでに猫もぬるっと入れちゃう。クエストとはいえザル過ぎて心配になってしまう瞬間である。

世界観的に、マレビトって善良なるものと言われているのだよね。善良でないものは神(運営)によって取り除かれる。そしてそのとき世界は修復されるので、善良でないマレビトの記憶は世界に残らない、という具合。

いや橋を落としたり村の祠を壊したりといろいろやらかしてはいるんだけども。マレビトのいたずらって程度で片付けられちゃうらしい。

その後も老教授の案内によってあちこちへ動く。

校舎は広々としていて、まるで城のような作りをしている。昔の大型建築って天井が高くてこういう雰囲気だよね。フライングバットレスみたいな。さすがにステンドグラスはないけど、大きなガラス窓はある。

荘厳な雰囲気なのに、一階の大広間に置かれているのが購買部だったり案内図だったりするのが、現代の観光地感ある。そういうの嫌いじゃないよ。

おじいちゃんを追いかけつつ、チラッと案内図を見て 写真(スクショ) 。ふむふむ、かなり迷いそうな作り。探索のしがいがありそうだ。

大広間を回り込むように階段がいくつかあって、研究棟、教室棟、寮、雑務棟、教授棟へと繋がっている。研究棟と教室棟は複数ある仕様。

なお寮はマレビトは入れないんだけど、寮生と仲良くなると中に入れると聞いたことがある。

気になる図書館は学校の中にはなさそう。残念!

まあダンジョンになってるっていうくらいだから、別なのは仕方ないか。

おじいちゃんはふよふよ浮きながら歩くので、結構足が遅い。猫でも悠々追いつけるので嬉しい限りだ。これ、猫に合わせてくれているのか、足の速い種族だとイラつく仕様なのかどっちなんだろ。まあ小走りにならずに済むのはありがたい。

教授だけが入れるという教授棟へ行き、大きな階段を登る。

おお、壁にかけてある絵が動いてる。今時リアルでもVRでも動く絵なんて珍しくないけど、こういうところで見るとワクワクしちゃうのはなんでだろ。魔法っぽく感じるからだろうか。

教授棟で手続きを終えたら、今度はぐるっとまた渡り廊下を渡って階段を降りる。結構歩くけど、お城のなかを探検しているような心地なので全然飽きないな。

元の大広間っぽいところへ戻ってきたら、あっという間に学生証が発行。

猫、魔法学校生になれました!

「うむうむ、励むとよかろうぞ」

「ありがとうにゃん~!」

『魔法学校生の帽子』と『魔法学校生のローブ』を手に入れた。

帽子は角帽で紺色、タッセルが銀色。ローブは上着装備で、紺地に銀のふちどり。某魔法学校ものみたいにクラス分けはないので、全員同じ意匠だ。

これをかぶって羽織れば、お手軽に魔法学校生になれるというわけ。魔法学校生としての依頼をこなすための街着だが、意外と魔力が上がるので重宝される装備でもある。

せっかくだから学園都市装備セットの、『学びし召喚師の狩猟ブーツ』を合わせてみた。うんうん、どこからみても魔法学生猫の完成。いい感じ!

せっかくなら杖も欲しいところだが、装備に合いそうな杖はないな、残念。

戻ってきた大広間の購買部では、紙やインクにペン、紙を綴る紐などが販売されていた。授業を受けるのに必要になるらしい。紙とインクは猫も必要になるので購入。

『羊皮紙』と『学園インク』だって。『学園インク』はほんのり青みがかったブルーブラック。紺色を徹底していますな。

さて、魔法学生になれたしどこ行こうかな。

あ。そうだ、猫には魔法学校で行っておきたいところがあったんだった。地図をみて見当をつけて、たぶんこの辺りだと思うけど……、あった!

学園都市の七不思議のひとつ、『這いずる銅像』!

といっても今は普通に立っている彫像だ。よくある天を指差すポーズをした、中年男性の像である。なんでも昔の学園長さんだとか。

なぜこれが七不思議かというと……。

「悔しい……悔しい……」

猫が像の前に立つと、像から低い怨嗟の声が聞こえ始めた。

「私に毒を盛るとは……っ! 志半ばで倒れるのか。私はこんなところで終わる人間ではないというのに……う、ううっ!!」

声がにわかに苦しみ出すと、像がガタガタと大きく揺れ始める。わわわ、なかなか激しい揺れ方。

「『毒消し』を……『毒消し』をくれえ……!」

しばらく見守っていると、像はごろりと横倒しになった。うつ伏せになった像の手がぴくぴくと動き、地面を掻く。

「犯人はあいつ……あいつだ……あいつを許すな……! 呪ってやる…、呪ってやるぞおおお」

『アクション『ダイイングメッセージ』を覚えました』

はい。

猫、このアクションどこで手に入れるのかずっと気になっていて調べたのだ。というわけで入手できました。

なお銅像は転がったままである。このまま放置しておくと、一夜かけてある場所まで這いずっていくらしい。さすがにそれも忍びないので直すとしよう。

よっこい……、さすがにこれは猫のマッスルでは持ち上がらないな。

ごろりと転がして仰向けになると、血の涙を流しておりなかなかのホラー。

「呪ってやる……」

しかも寝ながらも呪う。

この這いずる銅像を巡る七不思議については実はすでに解決済みで、猫には出来ることがなかったりする。というのも、これメインストーリーにあるやつだったんだよね。

この銅像になっている園長先生にまつわるストーリー、ダンジョンもあって、そちらももうクリアされている。

結論からいってしまうと、園長の怨嗟は完全に勘違いで、毒ではなく過労での死亡であったらしい。そのため、「毒消しをくれ」に応えて『毒消し』を渡しても、『万能薬』を渡しても、像の苦しみを取り除くことは出来ない。『ポーション』もだめ。何を与えても、銅像はダイイングメッセージを書いて動かなくなってしまう。

迷惑なことにダイイングメッセージに名前を書かれた人も実は全然無関係だったりして、メインストーリーではその辺の謎を解いて、冤罪で地位を追われた人を返り咲かせるまでのストーリーだった。ちなみにそれが現園長である。ルイネアなんだよね。

当然、政敵に園長の座を奪われた銅像の魂は納得していなくて、今でも血の涙を流して悔しがっているという。

気の毒というか、はた迷惑というか、なんと言おうか。

「呪い殺してやる……!」

物騒なこと叫ぶしなあ。

像を戻すまで止まらないんだろうか。どうしよう。あ、そういえばこれって悪霊に入るかもしれない。試してみるか。

血の涙を拭いてやりつつ、覚えたばかりの『ターンアンデッド』。

「ぐおああアアア――――!」

青白いヒト型の光が像から浮かび上がったかと思うと、盛大に呻きながら消えていった。

ついでに銅像も消えた。

『おめでとうございます。学園都市の七不思議『這いずる銅像』をクリアしました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』

お、おう。

『這いずる銅像』のクリアってダンジョンに行かないといけなかったはずだけど、これでショートカット出来たんだなあ。

なんだかちょっぴり罪悪感。

しかし勘違いしたまま苦しみ続けるというのもよろしくないし、迷える魂を救ったということでよしとしよう。

猫は早速、『ダイイングメッセージ』を使った。犯人は運営……!

なるほど、使う前にダイイングメッセージを書く必要がある。