軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25.学園都市アルカディア

ストライク系教本、1冊読み終わったあとは応用なので、やはり簡単に読み終えてしまった。ちょっとお暇。

『従魔法の基本』はあるけど、さすがに荷車の上で写本をするわけにもいかない。

ついにルビーが地団駄を踏んでレトを絨毯で連れ出したので、猫も伸びをして荷車から降りる。ちょっと休憩しよう。ルイにも牧草を出してあげて、水をやる。

やあ、なにもなくて平和、平和。

……なんて暢気に思っていたら、突然に雲行きが怪しい。

強風が吹き荒れて前へ進めなくなってきた。砂が巻き上がり視界があやしくなってくるし、タンブルウィードは猛スピードで突っ込んでくるし、ちょっと穏やかじゃないぞ!?

とりあえず吹き飛んでいっちゃいそうなルビーとレトを送還、地面に平べったくなってるラージとリカ、スーニャも送還。シロビは意外と風の影響を受けないっぽくて平然としてたけど、何が起きるかわからないので送還。

ロニは送還できないので小脇に抱えつつ、ルイと共に耐える。ルイを送還しちゃうと荷車が消えてしまうので、ギリギリまで耐えるしかない。どうしてもダメならあきらめるけど。

耐えていた猫たちを嘲笑うように風は勢いを増していって、ついに猫の足が浮いた。

「んにゃにゃにゃ!」

バタバタともがくけど、全然どうにもならない!

これは本格的にやばいぞ、と思った瞬間、荷車ごとルイも浮いた。うわわわわ。

竜巻だ!

風に掬い上げられた猫たちはぐるぐる回りながら空を飛ばされる。

……あれ、飛んでしまえば意外と平気だな? ふわふわ浮いているだけというか。移動は出来ないけど、踏ん張る必要もない。

眼下にはこれまで歩いてきた荒野が広がっており、学園都市らしき街の姿も見える。

ああーかなり近くまで来ていたんだなあ。

この竜巻、どこへ連れていかれるんだろ。というか降りれるんだろうか?

巻き上げられた段階でホームへ戻されてないんだから、きっとなにかあるんだよね。竜巻から脱出する? 放り投げられたあとにどうにかする?

腕の中のロニをモニモニしつつ考える。ふかふか。何も思いつかない。

ふともう一度下を見てみると、荒野は荒野だけど知らない場所に来ていた。これまで通ってきた道とも違う。さっきまで見ていた学園都市の影もない。

虹がかかっていて、気球が飛んでいるのが見える。いや、竜巻が出ているときに気球は危ないような?

あ、お城がある。

そしてその向こうには廃墟。

竜巻からの専用フィールドとかだろうか。ここに降りると新しいクエストがはじまったりして。

風の道から降りようと足をバタつかせてみたけど、やっぱり全然動けない。

そうこうしているうちに城と廃墟はいきすぎていってしまった。

「にゃん~」

うーん、残念。

新フィールドちら見せとかなのかなあ。

メタなことを考えていたら、ぺいっと竜巻から吐き出された。

「にゃん~~!!」

ギリギリまで引き寄せてからの、

「『ポヨ』! 『ポヨ』!」

ルイと自分に時間差で掛ければ、ポヨヨンと地面がトランポリンのように跳ね返される心地になった。猫も、ルイもノーダメージ。荷車はルイの装備品扱いなので、ルイ本体へのダメージがゼロになるなら無事だ。

成功!

「竜巻の旅は危険にゃん~」

どの辺まで飛ばされたのかと見てみれば、学園都市のすぐ近くだった。ちょっとしたショートカット、にしてはやはり危険すぎる気がするな。

調べてみると、竜巻は特定条件下で発生するイベントで、竜巻中に見える景色は新フィールドだろうとのことだった。今のところ、降りた人の報告はないみたい?

ちなみに特定条件とはタンブルウィード100個に遇うこと。道中のんびりしていたから、たしかに結構な数のタンブルウィードに遇っていた気がしたけど、そんなに多かったかな? きっと猫が気づかない内に、ラージやスーニャたちが潰してくれた分もあったんだろう。

竜巻の向こうの世界は気になっちゃうけど、今は学園都市へ向かうのが先だ。

久々のルイとの二人旅で、のんびり学園都市までぽくぽく歩く。

だんだん霧が濃くなっていく。学園都市の大きな門を前に、ポーンとかろやかな電子音。

『おめでとうございます。新しい都市に到着しました。SP10とプレゼントボックスを入手しました』

このアナウンスも久しぶり。SP10ありがたい。

学園都市アルカディアは、霧と魔法と錬金術の街だ。つまるところ、スチームパンクであり、マジックパンクである。

からくりと蒸気機関、魔法と手品にあふれている。

ごっつい真鍮の門は大きな歯車が絡み合ってぎちぎち開くし、いかにもな雰囲気が漂っている。プシューッと噴き出す蒸気はちょっと熱いので注意が必要。あまり近づくとダメージ星が出てしまう。

学園都市というだけあってその中心にあるのは学校で、これは魔法学校ということになっている。錬金術の学校ではないみたい。

学校というだけあって、学生じゃないと中には入れない。でもマレビトは特別で、簡単な申請だけで学生になれてしまう。学校側がマレビトを歓迎しているという話。というか、メインクエスト進めると学生になっちゃうらしい。

学校に入ったら授業とか試験とかあるのだけど、かなり自由が効くそうで、ひとまず籍だけ置いてる不真面目なマレビト学生が多いのだとか。

猫もせっかく来たのだから、キャンパスライフを満喫する予定だ。だって楽しそうじゃん、魔法の授業。レトだって受けたいはず。

濃い霧に包まれた街には昼でも橙色の明かりが浮かび、道行く人は霧避けのコートを羽織っている。夏のはずなんだけどここだけ冬みたいに見える。実際、学園都市は北にあるので、夏でも少し寒いって設定のようだ。もちろん、常冬のビオパールほどではないけれど。

自由都市が中世の城塞都市風なら、学園都市は近世の欧州都市風だろうか。

区画がかなり整理されているので、歩きやすいって話だ。街歩きが今から楽しみ。

しばらく街を眺めて立っていたら、霧でびしょびしょになった。なるほど霧避けのコートが必要になるはずだ。学園都市装備の上着にコートが多いのも、そのせいなのかも。

最近の街着(戦闘装備もだけど)はエンジニア風ツナギだったから、ちょっと寒々しい感じがする。

ブルッとすると意外なほど水が飛んだ。猫だからね。

なにか新しい服を買ってもいいかもしれないな。

さて、まずはホーム更新。冒険者ギルドへやってきた。ギルド周りが固まっているのはどこの街も一緒だ。

冒険者は特にランクアップなし。

やはりランク5を過ぎると、そうそう簡単にランクアップはできない。ちょっと壁を感じる期間というやつ。

次に運送ギルドで荷卸して、小金を稼ぐ。竜巻に耐えて運んだ甲斐があって、そこそこの収入になった。

次は商人ギルドで、魔道具――『錬金釜』の販売を試みる。

「おお、これは『古式錬金釜』ではないですか」

「自由都市からの品にゃん~、高く買ってくれるにゃん?」

「自由都市からの品となりますと、……こんな感じですね」

「にゃん……」

思ったより全然渋い。露店で売る方が高く売れるな。ということでお取り引きはなし、残念。

「自由都市からの魔道具は売れるって聞いてたけど上手くいかないにゃんね~」

「我が都市相手では、自由都市も分が悪いというものですよ」

「にゃん?」

「学園都市は錬金術の街。魔道具では他に類を見ない充実ぶりですから」

「にゃあ……」

う、ううん。自由都市をホームとする猫としてはちょっと受け入れがたい話だが、まあここで言い争うような話ではない。猫は大人だもの。

それに自由都市は錬金術が衰退しつつあるって話だったし、元祖を主張したい程度には張り合っているのだろう。

ここはひとつ、猫も学園都市で学ばせていただき、その技術を自由都市へ還元しようではないか。フハハ。

噂通り、自由都市のギルドと違って資料室はなく、そのせいか各種ギルドは小さめで、整然としている。あまり各種ギルドの色がなくて、全体的に統一感があるというか。

資料室がないのは残念だけど、ここには大きな図書館があるもんね。楽しみである。

一通りギルドを回って、ランクアップがあったのはサモナー。ついにランク5になった。称号は『とんがりサモナー』。なんぞ??

調べてみると特殊進化個体や、特殊技能個体を2体以上持っているとつく称号らしい。レトとシロビかな?

ともあれ、ランク5はめでたい。SP10もありがたい。やはりランクアップは嬉しいもの。

ギルド巡りを終えたら、次は早速、学校へ行ってみよう。転入手続きについては調べてある。すべて学校で出来るみたいだ。

湿って暗い色の石畳の道を、ルイと一緒にぽくぽく歩く。屋台通りがあったので、そちらを選んで進む。

「ようこそ! 『キャラメルハッピーポップ』はいかがですか?」

「いただくにゃん~!」

学園都市にもあるのか、『ハッピーポップ』屋台。一応豆菓子、実態はポップコーン。自由都市にもいろいろなフレーバーの屋台があったものだった。

袋いっぱいの『キャラメルハッピーポップ』を受け取りつつ、屋台のお姉さんに聞いてみる。

「学園都市でここは見ておいた方がいい! ていうところはあるにゃん?」

「おや、猫さんは学園都市は初めてですか? マレビトさんなら、やっぱり魔法学校と神殿がおすすめですよ。建物がまずかっこいいんです」

「建物がかっこいいのはいいことにゃんね~」

「はい。外から見ても中から見てもとってもキレイなんですよ。あ、ただ神殿はときどき迷子が出るので、くれぐれも気を付けてくださいね」

「迷っちゃうにゃん?」

「いえ、迷子ですよ。観光客さんには馴染みがないですよね。『霧の迷子』っていう……、うーん、何て言ったらいいんだろう、魔物のような、魔物じゃないようなやつがいるんです」

「にゃん??」

魔物のような、魔物じゃないようなやつ?

「ひたひたひたひた、霧の日には後ろからついてくるんです。でも振り向くと誰もいない。小さな足跡だけがついているっていう」

「ホラーにゃんね」

「街のなかでもたまに遇うんですけど、やつらには、曲がり角は曲がれないっていうお約束があるんです。でも神殿はこう、円形なので曲がり角がなくてずっとついてくるんですよ」

「ついてくると、どうにかなるにゃん?」

「いえ、ただ気持ち悪いだけですよ。近づくと泣き声がしたりもするとかで」

「にゃあ、対策はあるにゃ?」

「さっきも言ったように、曲がり角を曲がるか、振り向いてそのまま逆方向へ進むかすると振りきれますよ」

「もし迷子に遇ったらやってみるにゃん~!」

なんだか初っぱなから、不思議な話に出会ってしまったな。

それにしてもおすすめは魔法学校と神殿か。神殿は頭になかったなあ。学校のあとにいってみようっと。