軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.切れた妖精のリボン

「 自由都市(マケット) の骨董品店で購入したにゃん」

「骨董品店ですか。存在は知ってますがまだ入ったことなかったです」

ううん、とペチカちゃんは腕を組む。

「しばらく通ってみるしかなさそうですね…」

「にゃあ、猫から買わなくていいにゃ?」

「それを売るなんてとんでもない!」

ペチカちゃんは大仰な仕草で両手を振った。

お、おう?

「『切れた妖精リボン』は新しい妖精との縁を引き寄せるといいますし、そんな重要なものを手離したらだめです!」

「にゃ、にゃん」

勢いが強い。

「それに、私が探してるのはそれそのものじゃなくて、『妖精リボン』にまつわる情報なんです」

「情報にゃん?」

「はい。実は『裁縫』で、妖精との縁を繋げるリボンが作れるかもしれない、という話がありまして。そこから『妖精リボン』という名前を知って調べていたんです」

「にゃあ」

「『切れた妖精リボン』なるアイテムがあるというのはNPCの風猫族さんから聞きまして、もしかしたらそこからレシピがわかるかも、と」

「そのために探してたにゃん?」

「はい」

「見るだけでいいなら見せるにゃんよ?」

「ゆ、誘惑ぅ!」

妖精リボンが何かはわからないけど、たぶん友だちになるリボン(?)の上位版なんだろう。それなら猫だって作ってもらいたいし、レシピ獲得の協力をするのもやぶさかではない。

インベントリから『切れた妖精リボン』を取り出すと、ペチカちゃんは「ああーッ」と眩しげにした。いや、ちゃんと見て!

「………あれ」

「にゃん?」

「これは、読めます、ね…?」

「にゃん??」

リボンが読めるとは??

ペチカちゃんいわく、リボンには織り方がいくつかあって、その織り方を混ぜることによってメッセージのようなものを織り込むのが一般的らしい。

「わかりやすくいうと、ミサンガでしょうか」

「なんとなく言いたいことはわかる気がするにゃん」

ミサンガはそのまま文字を編めたりするものだけど、あんな感じで織り方に意味があって、組み合わせて言葉になっているそうな。

「これもたぶん『私とあなたは永遠』て感じですね」

「切れちゃってるにゃん」

「はい。きっとこの永遠の間には、果てしないドラマがあったんだと思います…!」

リボンの切れ端からドラマに思いを馳せるペチカちゃん、さすがだ。猫には出来ない芸当。

「これはどの妖精との縁だったかとかは記載されてないものなんですか?」

「完全にフレーバーテキストしか書かれてないにゃんね」

いったんインベントリにしまってアイテム詳細を出す。

『切れた妖精リボン』

運命のいたずらで切れてしまった妖精リボン。なにかしら縁が残っているかも。良縁、悪縁、結んでみるまでわからない。切れてよかった縁かもね?

スクショしてペチカちゃんに送ると、ペチカちゃんは顎に手をやって唸る。

「これは…横恋慕…、いえ、不倫……?」

「にゃん!?」

不倫する妖精とは!?

ペチカちゃんの妄想が今日もはしゃいでいる。

「ううん! こんな感じなんですね。見せてもらってありがとうございました!」

「本当に売らなくて大丈夫にゃん?」

「考えてみたんですけど、これ、ここの『永遠』って意味の模様のところが、ちょっと切れちゃっているんですよ」

「にゃん?」

「このゲームでの『永遠』って、ルイネアなんです。で、ちょっと後ろが切れて解れちゃってる。それなら、もしかしてルイネ……が怪しいかも、なんて」

「にゃあ、なるほど」

へええ。ルイネアって永遠って意味なんだ。それは知らなかった。

ペチカちゃんもいろいろな知識を溜め込んでるなあ。

「猫、次はルイネ観光に行くにゃん。よかったら一緒に行くにゃん? 猫付き妖精のリボンにゃ」

「えっ、い、いいんですか!? それは願ったり叶ったりですけども!」

「旅は道連れにゃん~」

猫も妖精リボン、気になっちゃったしね!

元々、ルイネで巡るところはフロントの墓くらいしかなさそうでちょっと困っていたのだ。宛もなくフラフラするにしても、多少のランドマークは欲しいところ。

アルラウネからもらったヒントも、ルイネの向こう側、という表現で謎だったし、どこを探せばいいかわからないんだもん。

あとやることといったら属性変換クエストだけど、これも最初のスタート地点がルイネというだけで、他は別の場所の神殿巡りだ。

ペチカちゃんは、明日は用事があってログイン出来ないそうなので、猫は先にルイネへ現地入りして明後日合流ということになった。

ドゥーアからルイネへは割とすぐだし、ペチカちゃんはルイネからメインクエストをしたので、ルイネ観光自体は終わっているらしい。

「でも二人で見るとまた違った景色が見られるでしょうし、楽しみです!」

「猫も楽しみにゃん!」

約束してペチカちゃんとはお別れ。

さてそろそろ店を閉めるかな、と考えているとメールが来た。

『猫ちゃんや、今おひま~?』

『暇にゃんよ~』

『つかぬことを聞くけど、NPC風猫族の居場所なんて知らないよね?』

『にゃん?? 確定で会えそうなところって意味にゃん?』

『そうそう』

『知ってるにゃんよ~』

『やっぱり知らな………知ってるの!?』

知ってるというか、予想してるというか。

『隠れ島にいるにゃんよ』

『隠れ島!?』

そう。あの『ダイアモンド』騒動で会った虎猫さんだ。

マティさんって呼ばれてたし、ダイアモンド換金所の仲間だったみたいだし、たぶんボス格のひとりなんじゃないかと思うのよ。

あのあと隠れ島を詳しく調べてニンジャがいたらしいと知って、猫は悔しい思いをしたのだ。それでログを調べていたんだけど、残念ながらウーミンさんとイワンさんとやらには会っていなかった。

しかし猫は気づいてしまったのだ。

もしかして、マティさんもニンジャだったんじゃない? と。

ニンジャNPCの名前が、ジョンさんでしょ、ウーミンさんにイワンさんでしょ? ナナちゃんだし。いわゆる名無しの権兵衛の名前から取ってるんだよね。ジョン・ドゥ。

マティさんというのはフィンランドの名無しの権兵衛らしいのだ。

気づいたときはなんだか二重に悔しかった。いや、あくまで予想なんだけどね!

『隠れ島にいる虎柄のボス猫にゃん~、ネコに化けてるけど、風猫族にゃんよ』

『えっ。たしかに隠れ島には虎柄のボス猫がいるらしいけど、それほんと?』

『猫はあの虎猫に捕まってダイアモンドの谷へ送られたにゃんよ~!』

『そうだったにゃん!?』

くぅ、リボン結んではくれたけど谷底へ送られた恨みは消えないのだ。

それにせっかくニンジャ(仮)に会ったのにいろいろ聞き損ねたのが悔しい。思い出し悔しみ!

『ありがとうありがとう、ためしに行ってみるね~~』

『幸運を祈るにゃん~!』

よくわからんけど、風猫族NPCに会わないといけないのだろう。なかなか大変そうなイベントを踏んでるなあ、大半、というかほとんど出現ランダムだしね。

ちゃんと会えるといいんだけども。

猫も精霊使いやニンジャのランクアップのために隠者の村へ行く前に、隠れ島へ一度行ってニンジャさんたち探す方がいいのかもしれないな。

ルイネ観光後の予定がどんどんつまっていく!

まあ、やることがいっぱいあるのはいいことだよね。

今度、ちゃんとやることリスト作っておかないとまたすぐ忘れそう。すでに忘れている気すらする……いや、気のせい、ちゃんと覚えてます。たぶん!

おや?

フーテンさんから追加でメールだ。

『もしかしたら今度、猫ちゃんにちょっと長いクエストをお願いするかもしれません』

おお??

フーテンさんのクエストを猫が手伝うってこと? 風猫族探してるみたいだし、種族関連で何かあるんかな。

『いつでもどんとこいにゃん~』

『頼もしいにゃん~!』

いつもお世話になっているから、返せるときがあるのはよいことだ。いったいどんなクエストを抱えているのか楽しみ!

しかし猫、LV低いからな。多少は上げておいた方がいいかもね? ていうかそろそろ30は越えたい。このままではシズクちゃんに追いつかれてしまうぞ。

いい時間になったのでこれにて閉店!

畑に寄って、モリーの様子を見ていくことにする。しばらく畑にいてもらうことにしたのだ。

というのもモリーは、芋虫の頃のラモと同じく食べることで経験値を得られるタイプだった。しばらくは畑に植わっててもらうことに。

大きくなれよ……、でいいのか? あまり大きくなると一緒に旅とか出来なくなっちゃうけど、でもそれは仕方ないか。元々、別の移住場所を探してるだけっぽかったし。

肥料については、やはり自由都市の書庫にはなかったので、学園都市の図書館に期待だ。

掲示板で調べたが、魔力的な肥料の話はなかったんだよね。たぶんランク制限がかかっているのだと思う。攻略サイトにもなかったし。

トレントをテイムしてる人も少ないようで、情報収集が捗らなかった。残念~。

まあモリーは畑で楽しそうにしているのでいいか。

マンドラコラもせっかくなので植えた。植えてしまった…。プランターだけどね。

モリーがなんか大喜びしてたので、やはり種族的に仲がよいのだろう。モリーがお世話を手伝ってくれるならありがたい。

畑には現在、薬草、ヒーリングミニトマト、ハッピー豆、黄キャロ、赤シスルと節操なく植えている。どれも必要なのだが、どれを庭でどれを畑で植えるかを、トレントのモリーが来たのでまた考え直さないといけなくて。

庭も白ラコラたちがいなくなったから考えないといけない。紫や緑ラコラは『調薬』のために育てないといけないけど、白は悩んでる…。また庭を乗っ取られるのもなあ。