軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.まずはひとり旅

さて、準備も出来たしルイネへ出発!

道中は『インビジブル』の教本を読みつつのんびり行くことにした。ドゥーア・ルイネ間に出るmobは最弱だ。猫がルイの上で本を読んでいたって、ルビーやラージがぽこぽこ倒して進んでくれる。

レトはヒーラーとしての役目もなくてふて腐れていたけども。やはり攻撃魔法も覚えられるといいのかなあ。

『インビジブル』は光の屈折を利用して自身を見えにくくするスキル。その特性上、万能ではない。たとえば暗い場所では役に立たないし、相手が視覚に頼った認識をしていないと意味がない。そういうデメリットも認識した上で使うのならば、かなり良い魔法らしい。

特に対人に有効というんで、PVPやる人の御用達魔法だった時代もあったそう。しかし今は『マジックセンス』を使いながら対応するという戦法が生まれたため、PVPでは絶滅したんだとか。

PVPは置いておくとしても、クエストなどで対人を強いられるときは多々ある。たとえばメインストーリーでは対人が多いと聞く。山賊相手だったり、模擬戦したりいろいろあるんだって。

そういうときにも『インビジブル』は活躍するらしい。ほうほう。

魔法としては『ミラー』に少し似ていて、光の壁を自分のまわりに張り巡らせるようなイメージ。すでに『ミラー』を習得しているので、覚えるのはそこそこ早かった。MP調整がそんなに必要なかったのもある。やはりMPを気にせず読むだけなら、全然難しくないんだよね、教本。

あとはルイの上に揺られて景色を眺めつつ行くのんびり旅。

いやあ、もうすっかり春だね。

麦畑らしき一面の緑原は、目にあざやかだ。風もさわやかで気持ちがいい。

それにしてもだんだん進むにしたがって、整えられた道が狭くなっていく。それだけ寂れた場所へ向かっているということだろう。

廃都ルイネは忘れ去られた都だ。

今はもうそこには村しかない。いわゆる始まりの村というやつ。

廃都の名残が遺跡となって村を取り巻き、村を守っている。村人はかつての都ルイネを信奉しており、ちょっと排他的だ。しかしマレビトには優しいのだとか。

冒険者の街フロントへ向かうときにもあったけど、遺跡の残骸をよく見かけるようになる。まるで大きな獣の骨があちこちに転がってるように見えて、なんだかシュール。

その瓦礫の隙間に、始まりの村ルイネは存在している。

何事もなくルイネ到着。

さて村観光だ。しかしだだっ広いけど建物がとても少ない。なるほど始まりの村である。すぐ出ていけといわんばかりのこの造り。

まさになにもない田舎の村。隠者の村の方が建物は多かったかな。でも人は結構いる。プレイヤーもだけど、村の規模に反してNPCの姿が多いような。

まずは冒険者ギルドへ。真ん中にあるのでわかりやすい。そして併設されているのが噂の青空生産施設だ。申し訳程度の屋根があり、机と水場だけがあるという原始的なやつ。うーん、たしかにこれでは出来ることがかなり限られてそう。

ここからスタートするとはなかなか大変だっただろうな。第一エディションの人々の苦労がしのばれる。

冒険者ギルドでホーム更新。ここは冒険者ギルドのなかに各支部が収まっているかたちなので、1ヵ所ですべて済む。とはいえ、第二エディション以降に増えたジョブには対応してない。ブリーダーとか、錬金術師とか。

まあ、ジョブ報告とかはすべて自由都市で済ませてきたから問題ないんだけどね。

運送ギルドからの依頼品を下ろして、身軽になったら街、もとい村観光だ。

村の行政施設へ向かい、図書室へ。いつものようにマジックセンスで栞や文字を見つけたあとは読書。最初の村だからか、目新しい書物は見つからない。

絵本が多くあったので、レトは嬉しそうだった。こういう絵本から文字を少しずつ学んでいければなあ、と思っているのだけど、どうだろう。絵本を何冊読んだらレトが文字をラーニング! とかあれば頑張るんだけど。

いや、なくても絵本は読ませるけどね。本鼠も望んでるし。

読書を終えたら、行政施設の受付へ。猫のルイネ観光の目玉、ヨハン・フロントの墓をまず参りたい。しかしどこにあるかわからないので、聞いてみることに。

「ヨハン・フロントの墓を参りたいんだけど、どの辺にあるにゃん?」

「ヨハン・フロントの墓ですか? いえ、こちらにはありませんが…。かのものの墓は、冒険者の街フロントにございます」

あれ!?

まさかの猫の勘違い。

改めて調べてみたけどヨハン・フロントの墓があるのは冒険者の街フロントだったね…。ずっと行き忘れてると思ってたから、ルイネにあると思い込んじゃったらしい。失敗、失敗。

でもルイネに墓があるって言ってる人も一定数いるのが不思議だ。みんな勘違いしちゃうものなんだろうか。ふふ、仲間がいる。

そんなわけで観光すべきところはほとんどなく終わってしまった…なんてこと!

仕方ないので村をうろうろしてみることにする。本当にのどかな村で、なにもないことがわかりやすいくらいなんだけども。

東にあった大きな石造りの建物は、精霊の祠。これは他の場所でいうところの神殿のような場所で、輪廻へ帰ったルイネアが奉られているらしい。

ルイネアが肉体を捨てるということは精霊になるということなので、それで精霊の祠と呼ばれているようだ。

残念ながら中には入れなかった。まあ個人のお墓のようなものだから仕方ないね。ルイネアなら入れたりするんだろうか。

精霊の祠の横には精霊教室と呼ばれる子どもたちのための学習施設があるようで、今は授業中ですので、とこちらも入れなかった。

ううむ、残念。

他にもうろうろしてみたけど、初心者アイテムを扱うショップや、いろいろな初心者TIPSを教えてくれる親切な村人たちなど、全体的に初心者向けの村だった。

初心者を長らく満喫してきた猫には、目新しい情報はなかったかな。

ひとつ気になったのは大きな月の話だ。

「大きな月が出る日には、死者が甦るから外に出てはいけないよ」

「にゃあ、ゾンビにゃん?」

「そういう俗なものじゃないんだ。レイスでも、幽霊でもない。なんていったらいいのかな、もっと根源に近いもの…、そういうものが現れてしまうんだって」

「にゃあ……」

根源に近いものってなに???

この世界の価値観的に、死者は別の世界へ渡る――文字通り死後の世界があるようだから、その世界と繋がっちゃう、とかそういうこと?

月夜は世界の扉が開くならそういうこともあるかもしれない、程度に考えておくか。

なにしろこの季節は青の大月と呼ばれていて、次は青月夜なのだから気になってしまう。

あ。

そういえば猫、『未練の首飾り』のサブクエストも行くときにはやろうと思っていたのだった。

かつてフロント行きの道中でバグにあい遭遇した林檎の幽霊からの戦利品。ルイネのNPCと会話するとサブクエストが進むと情報サイトにあった。

早速そのNPCを探しに行く。

……あれ、精霊の祠のひとなのか。さっき追い返されたところよ。

ふむふむ、授業のないタイミングで行かないといけないのか。そして結構長いサブクエストみたい。

うーん、それなら待ちになってしまうし、また今度でいいかな。明日からペチカちゃんと遊ぶし、長いサブクエストに巻き込んでしまうと申し訳ないしね。

てことで、今日はもうマイルームへ帰ってしまおう。

妖精のリボンの情報収集もしておこうか悩んだけど、猫、こういうの変なフラグ踏みがちだからペチカちゃんと合流してからにします。なにかよくわからんことになったら困るもんね!

「お待たせしましたランさん!」

「ペチカにゃんこんにちはにゃん~!」

翌日、待ち合わせしてペチカちゃんと合流。

「観光は出来ましたか?」

「精霊の祠以外は一通りまわってきたにゃんよ~。精霊の祠は入れなかったにゃ」

「あー、タイミングが悪いと入れないですよね、あそこ。じゃあ、今日はまずそこから行きましょうか」

うんうん、とうなずいてくれるペチカちゃんだが、猫は違うところが気になっている。

その、肩にいる丸っこいもの。

「にゃあ、ペチカにゃんもマルモ飼ったにゃん?」

「実は『召喚』ついに我慢できずに取ってしまいました…!」

くぅ!と拳を握るペチカちゃん。

「マルモにしちゃったにゃん?」

「レトちゃんが可愛くて…! それに昔から、肩に小さなアニマルを乗っけることに憧れていたんです」

その気持ちは猫にもちょっと理解できる。いいよね、肩のせアニマル。

「テイマーの範囲内で小さい魔物を狙ってきたんですけど、なかなか難しくてですね…」

「言われてみれば、従魔は比較的大きいのが多いにゃんね?」

ルビーも肩のせ出来なくはないが、進化してからちょっとむっちりしたので猫の肩からははみ出てしまうだろう。

「小さめドゥドゥーのテイムを狙って餌撒いたりも、してみたんですけども」

ペチカちゃんがどこか遠い目をしながら出したのは、やたらでかいダチョウだった。

「この子と死闘を演じる羽目になりまして…」

立派な羽根だが目付きが鋭い。

辛くも勝利して我が手に納めた自慢の従魔らしいが、思ってたのと違う、ということらしい。なるほど…。

「それでマルモに至ったにゃんね」

「はい! ムムちゃんといいます!」

ちなみにダチョウはメメちゃんだそうだ。マ行!

パパちゃんの次はママちゃんが気になることになるとは…。

「それじゃあ、一緒に行きましょう」

「よろしくにゃん~!」

猫とペチカちゃんが手を繋ぎ合うと、PTが結成される。お互いの腕を伝いおりてムムちゃんとレトが出会い、ふんふんと匂いをかぎあった。こうして並んで見るとレトの方がちょっと小さい。

「ふふ、ムムちゃんの先輩ですね」

「にゃあ、レトに後輩が出来たにゃんね」

ムムちゃんは穏やかでおっとりした顔つきをしている。愛されマルモですな。

同じマルモだけど、毛皮の色はもちろん、顔つきや体つきも細々と違うので、芸が細かい。

「レトは本を読むのが好きだけど、ムムちゃんは何が好きにゃん?」

「ムムちゃんはどうでしょう? いろいろなものを眺めるのが好きみたいです。高いところは苦手みたいですけど」

高いところが苦手とは、なかなかどんくさいタイプのマルモですな。たぶん、木登りマルモにはなれないタイプの子だろう。

マジカルマルモ仲間になってくれるといいなあ。