軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10.錆びついた部品

アルラウネの村から迷いの森へ抜けるルートを教わったので、そちらから抜けてまずはアルテザへ戻ることにした。

惑わしの深い森を探検してみることも考えたが、下手にトレントに会ってしまっても困るしね。

アルラウネの村で『ニャルコール』を処分してくるのを忘れたので、迷いの森でも道中ブラックニャッコに襲われた。こちらはスリムな山猫スタイルで、猫よりも小さい。やはりクロマルちゃんは特殊個体。

ブラックニャッコには楽に勝てた。猫、やはり初心者じゃない!

こちらのブラックニャッコも『ニャルコール』で酩酊してるなら、『万能薬』をかけるべきなのか悩むところだが、残念ながら『万能薬』の在庫がない。また仕入れておかないと。

『ニャルコール』を持っていてもひっきりなしにブラックニャッコに襲われるわけではなく、ほどなくして森を抜けた。

まずは運搬ギルドで荷下ろし。荷車落ちたりしたからちょっと心配したけど、商品には問題なかったようで無事報酬が支払われた。

『アルテザついたにゃんよ~』

『ようこそようこそ!』

到着報告をして、勝手知ったるショーユラさんちへ向かう。

「にゃあ、じゃあやっぱり錬金術師は見つからなかったにゃんね」

「『錬金術』自体が自由都市からのスキルですからねえ。アルテザにいるっていうのはあくまで噂ですから、本当はいない可能性も無きにしもあらずといったところで」

「それならマケットへ持ち込む方がはやそうにゃん?」

「それも一理ありますわね。マケットか、学園都市か…。まず錆び取り技術のお試しということであれば、『赤錆びた土』や『錆びた部品』なんかでもいいわけですし」

ティアラさんのいう『錆びた部品』というのは廃坑ダンジョンでよく取れるハズレアイテムらしい。

「『赤錆びた土』については、圧縮して実験しようと思ってたところにゃん。でもそれで成功したとしても、心臓は1個しかないから圧縮はできないにゃん」

「それよな~。『錬金術』ってだいたい大量のアイテムからなんとかするイメージだから、これもいくつか集めるんじゃ?て話にもなってて」

ナマナマさんは腕を組みつつぼやく。

「でもこれ、『錆びた部品』と同系統だとしたら、廃坑下層のBOSSドロップとかですよね? しかも場合によってはレア。それをそんな大量にというのは、なかなか無理がありますよ」

「廃坑もかなり深いですからな」

バンザイさんとココロさんがむむっと思案顔で言うと「そういえば」とショーユラさんが猫を見た。

「これ、どこで手に入れられたんです?」

「妖精街に行って交換してもらったにゃんよ~」

「妖精街……といいますと採集系召喚妖精を持ってらっしゃる?」

「岩妖精ガナムにゃん」

「これはまたなかなかマイナーな」

猫もあれから調べてみたけど、採集系召喚妖精が自身の関係ある土地で妖精街への扉を開いてくれるのは希によくある(?)話らしい。

好感度が一定以上あること、その妖精ゆかりの土地(岩妖精ガナムであれば岩のある場所など)であることが前提で、いつ開くかはその妖精によって違うらしい。

そして妖精街では物々交換で買い物が出来るが、かなり法外な要求をされるので交換できた事例はごく少ないそう。たしかに『ビー玉』の要求数はえぐかったな。

採集系召喚妖精そのものがマイナーなので、前例があまりなく、まだわかっていないことが多いのだとか。

「よく交換できましたね!」

「うちのレキは『ビー玉』が好きにゃん。ガナムの妖精街の物々交換も、硝子アイテムで乗りきれたにゃん~、みんなのおかげにゃん!」

せっかくなのでお土産の『発光茸』と『闇ホタル草』をみんなに配ると、反応がよかったのはティアラさんとココロさん、それからショーユラさんだった。

「まあ! 硝子のドームに閉じ込めたら素敵なアクセサリになりそうですわね!」

「たしかにほんわり光ってよさそう。家具にもなりそうだねえ」

「キノコは染料が取れる例が多いですから、これもちょっと楽しみですね!」

40個ずつあるので、ショーユラさんには『発光茸』を10個、ティアラさんとココロさんには『闇ホタル草』を5個ずつ(本人たちが10個は多いというので)渡しておいた。

「何が作れるか楽しみにしていてくださいね!」

「待ってるにゃん~!」

お土産でにゃんにゃんしてしまったが、閑話休題。

『錬金術』での錆び取りだ。

「猫が相談できそうなNPC錬金術師さんは魔道具マーケットにいるにゃんよ」

「でもランさんはルイネへ行くご予定でしょう? 今回途中で戻ってきていただいただけでもしのびないのに、魔道具マーケットまでとなるとさすがに申し訳ないですわ」

「こっちは急いでないし、後になっても全然構いませんよ!」

ううん、今はトレントの件もあるし、お言葉に甘えて錆び取りについては後に回させてもらおうかな。

「今イベントの続きを探してるところだから正直助かるにゃん~、季節が巡る頃にはなんとか出来ると思うにゃん」

「季節が巡る…、二十四節気みたいなあれです?」

「そうにゃん。今の 恵雨季(めぐむあめのき) は迷いの森でイベントが起きてるみたいにゃ」

「迷いの森で、というと気になりますね!」

かくかくしかじかにゃんと話すと、みんな難しい顔だ。

「突然湧いて出てきた謎のトレントですか…」

「トレントは火が鬼門なんですよねえ」

「あれは絶対火に弱いと思って、やらかした経験が誰しもあるものですわ…」

トレントは火魔法を受けると暴走状態になり、燃え尽きるまで攻撃力が高くなるそうな。しかも元々はリンクmobじゃないのに、火を使うとリンクする厄介な性質があるんだって。

その性質は火を使った本人が送還されても、燃えてるトレントが力尽きるまで続くそうで、初心者がやらかして周囲が焼け野原、なんてこともよくあるそうな。

さすがに山火事でマップが変わることはないけど、鎮火がなかなか面倒なので大変とのこと。

トレントに火はダメって話は本にも載ってたけど、そういう風にダメなのは知らなかったな。

ショーユラさんは火以外も使えるが、LV50以上のトレントを一人でとなるとさすがに荷が重い。

「手助けしたいのは山々ですが、戦闘力としてはお役に立てなさそうですな…」

「お助け出来るとすればイベント探しの方かな!」

「でも、シナリオからすると初心者向けっぽいんですよね?」

「障害に高LVmobがいるとなると、全方位入り口はあるんじゃね?」

「なんとなく純生産を呼んでるシナリオの気もします。ほら、アルラウネって、天然の薬師っていうじゃないですか」

「そうにゃん!?」

それは本にはなかった情報だな?

「あれ、言いませんか? 以前、ポーションならアルラウネから買うやつがいちばん効くってNPC薬売りから言われたことがあるんですけど」

「初耳だなあ」

ショーユラさんは聞いたことがあるというが、他の面々は聞いたことがないらしい。

「うーん? 気のせいかもしれないので話し半分にしておいてください。聞いたのだいぶ前だと思うので」

「いやいや、でもアルラウネも風猫族みたいに風来の種族だし、そういう特徴があっても不思議ではないぞ」

「猫もそう思うにゃん~、『農業』には特化してそうだと思って話を聞いてきたけど、『調薬』については聞きそびれちゃったにゃ」

「調薬してるなら『ガラス瓶』とか売り込めるかもですね!」

「お買い物好きそうだったから、それはあると思うにゃん~!」

ううん、『調薬』にメリットがあるかも~ならちょっといい情報かもしれない。

ひとまず『ガラス瓶』を仕入れさせてもらうことになった。

「では、わたくしたちは久々にドゥーアへ行きがてら、迷いの森で異変がなかったかを聞いて回ってみますわね」

「迷いの森を宛もなく歩くよりは、街で聞き込んだ方がよさそうだしね!」

「僕はアルテザの方で聞いてみます。迷いの森に精霊スポットがあって、そこで赤月夜のクエストが動くかもしれないですしね。それなら情報が跨がってる可能性もあります」

「ありがとうにゃん~!」

情報収集で頼れるものは、やはり数!

ティアラさん、ココロさんがドゥーアへ一緒に向かうことになり、ショーユラさんとナマナマさん、バンザイさんはアルテザに残って情報収集ということになった。

……赤月夜の精霊スポット、たぶんアルラウネの村にあるんだよね。

赤月夜に精霊が祝福に来るって言ってたもん。

もしこれが赤月夜のイベントなら、他人を巻き込んでもいい情報になるだろう。まあハズレの可能性もあるけど、そのときはそのときだ。

とりあえずアルミハクさんはおなじラコラ農家として声をかけておこう。

白ラコラがマンドラコラになれそうと連絡するとすぐに返事があった。

『ドゥーアね! 今すぐ向かう!』

それからリーさんとポユズさんは調薬師だ。こちらも巻き込んじゃってもいいんじゃない?

『巻き込んじゃえにゃん~!』

『進展あったにゃん?』

かくかくしかじかにゃん~と人形連合と話した内容を伝えると、フーテンさんは笑っていた。

『猫ちゃんさすがすぎて~』

『にゃん?』

『いや、ドゥーア向かうね~~』

『マケットにいるなら猫が迎えにいくにゃんよ~』

猫には富豪のワープがある!

『じゃあお願いしちゃうにゃん~』

『任せるにゃん~!』

フーテンさんたちはフーテンさんたちで、湖畔の街ビオパールまで行って、そちらで何か起きてないかを聞きに行ってくれていたらしい。なんと。

『トレント大移動とかあるかな~と思って聞いてみたけど、向こうは特にそういうことはないみたいね~』

マウンテントレントの生息数が増減したとかいうこともなく、通常通りだったらしい。ふむ?

『にゃん~、誰かが持ち込んだのかも、てアルラウネは言っていたにゃん』

『トレントの種があるとか聞いたことないけど、まあマンドラコラが種になるんだからあるんだろうね~』

『あ、そうにゃ、うちの白ラコラ、マンドラコラになれそうにゃん』

『にゃん!?』

『アルラウネの村でお見合いして、今度結婚式するにゃん。健やかなマンドラコラが生まれるはずにゃん』

『なんて???』

猫も何を言っているのかわからない。