軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.迷子の迷子の子猫ちゃん

待つこと数分、さくっとコニャッコが引っ掛かった。本当にあっという間だったな。

罠の中でニャンニャン鳴く声が完全に子猫ちゃんだ。可愛いが、外に出すと向かってきてペチッと終わってしまうのでそのまま。

ためしに『テイム』を試みると「テイム出来ません」の表示が出た。失敗のときは「テイムに失敗しました」と出るので、コニャッコはイベント魔物っぽい。

捕まえたはいいけど、さてどうしよう。悩みつつ箱罠に手を当ててみると、なんとコニャッコ、アイテムとして収納できる。お、おお?

これはコニャッコをいっぱい集めましょう的な感じかな??

再び箱罠を用意。設置する、コニャッコ入る、アイテムに入れる。

…入れ食いですな。

しかしカーバンクル種って魔法師だから基本、突っ込んできたりはしないはずなんだが。まだ小さいからその辺わからないんだろうか?

それとも持っててよかった『猫まっしぐら』だろうか。と思ったら『猫まっしぐら』がなくても入ってきちゃう。

……これはやはり猫が『ニャルコール』を持ってるせいかもしれない。でも、ここで『ニャルコール』を捨てるのもたぶんよろしくない。

さてどうしよう。

それにしても全部もれなくカーバンクル種だ。繁殖してるんかな?

箱罠を片付けて20匹目のコニャッコを入手すると、辺りに野太い猫の声が響き始めた。

イベント来たか!?

たぶん親猫との戦闘になるんじゃなかろうか。あわてて従魔法でバフをかけていく。

現れたのは大きな黒い猫。猫よりでかいな!? ブラックニャッコこんなでかさじゃないはずなんだけど!

イベントボスというやつだろうか?

こちらのニャッコも額に石がある。でかいカーバンクルニャッコだ。ワーオ。

体をぐっと膨らませて、シャーッと猫を威嚇してくる。……不謹慎ながらかわいいと思ってしまった。いや、だってこの猫、とにかく丸いのだ。

スラッとした野生の山猫みたいなのを想像してたのに、まんまるコロコロのイエネコ。それが尻尾までたわしにして猫を威嚇している。かわいい。

「コニャッコは保護してただけにゃんよ~」

まずは説得を試みてみるも、返事はシャーッ!

懐柔を試みる……『猫まっしぐら』はもうなくなっちゃったので『イワッシー』しかないんだけど。やはり返事はシャーッ!

ダメそうだ。

「それなら仕方ないにゃん~!」

ラージが前へ躍り出て接敵、戦闘開始だ!

……はい。

カーバンクルニャッコは強敵でしたね…。

いや、うん。初めてのカーバンクルタイプだったから一時はどうなるかと思ったけど、ラージはちゃんと守ってくれるし、レトの回復も危うげないし、ちょっとヒヤッとする瞬間はあったけどなんとかなった。

問題は猫たちの攻撃力が低いことだけど、それもニャッコのHPが低いおかげで大丈夫だった。やはりカーバンクルは魔法師タイプだから、1匹で出てくる魔物じゃないのだ。単体で助かった。

……課題は残るけど、勝てばよかろう!

ふにゃう~~と転がったカーバンクルニャッコはドロップを撒き散らしたものの、本体は消えずに残っている。ドロップを拾ってみると『ニャルコール』ばかり。

ニャッコ本体は『状態:酩酊』と出る。これはニャッコも酔っぱらっていて、本意ではなく襲ってきたということなんだろうか。

酔いざましなんてあったっけ? と思ったがなくてもなんとかなるな。そう、『万能薬』の出番である。

これも下方修正されそうでされない。

『万能薬』をふりかけると、ニャッコは目を覚ました。きれいな金色の目をぱちくりさせる。

「正気に戻ったにゃん?」

フギャア!とびっくりしたような声を上げてピョンッと後ずさった。そして身を低くして唸る。

あ、忘れてた。

「保護してたにゃんよ~」

荷物からコニャッコを出して地面に置いていくと、小さな黒猫がわらわらニャンニャンしながらカーバンクルニャッコへ向かっていく。かわいい。

総勢20匹の子猫をペロペロしつつニャンニャン世話したカーバンクルニャッコは、子猫を背中に乗せて森の中へ消えていった。

そしてすぐ戻ってくる。

「にゃん?」

「……」

じっと見つめてくるにゃんこ。…テイムしていいやつ? いやいや、これはたぶん違うな。

「ついていくにゃん?」

カーバンクルニャッコは尻尾をブンと振って踵を返した。ふむ?

早速ついていくと、ちょっと先で立ち止まっては猫たちがついてくるのを確認して、また先へ消えるのを繰り返す。

やはりどこかへ案内されているらしい。

モンスターハウスだったりイベントBOSSの前へ連れてかれたりな罠の可能性も否定できないけど、そのときはそのときだ。

緑の木立の道なき道を越え、せせらぎの歌う川を越え、ちょっとした岩山を越える。なかなか厳しい道を案内されているな!? 荷車で進むのかなり大変だったんですけど!

いったい何処まで行くのかと首を傾げ始めたころ、ようやくカーバンクルニャッコの目的地に着いたようだ。

「にゃあ…?」

まるで何かの敷地を示すみたいに、大きな白い骨で出来た柵が並んでいる。強いて言えば骨の向こう側は草も生えず木もなく、落ち葉も、石も落ちていない。ただただ濃い茶色の土がむき出しだ。

こちら側は木も草も生えているので、誰かがここに畑でも作ってる?

不思議に思っていると、ポコッと土から生首が生える。

「あら、こんにちは!」

「にゃん!!??」

どこからどう見ても生首! 緑色の髪に真っ白な肌をした女性の頭だ。

「あらあら、こんな格好でごめんなさいねえ」

おっとりとそういいながら、生首はゆっくりと土から全身を現す。緑色の長い長い髪がウネウネと動いて、土を掘るようにして、ゆっくりと女性を引き上げていく。さまざまな花やいろいろな緑が編み込まれた、緑色のドレス……じゃなくて、これは自身のツタで擬態しているのか。

「改めてこんにちは。アルラウネの村まで来るなんて、ずいぶん熱心な商人さんなのね!」

「にゃあ、こんにちはにゃん!」

アルラウネの村!

緑の髪のアルラウネがそう紹介してくれた途端、マップがダンジョンからフィールドへ変化した。

どうやら本当にアルラウネの集落であるらしい。

「大きな丸いカーバンクルニャッコに案内されてきたにゃん。村のなかに入っていかなかったにゃ?」

「あらあ、クロマルちゃんのことかしら」

そのままのネーミング!

「クロマルちゃん、最近ずっとお散歩にいったまま帰ってこなくて心配していたの。近頃、雨が多いでしょう? どうしてもこの季節は『ニャルコール』が増えてしまうから…。でもお散歩を減らせとも言えなくてねえ」

詳しく話を聞いてみると、あの大きなカーバンクルニャッコはアルラウネの飼い猫らしい。

「ずっと小さな頃に、大きな獣に追われているところを保護したの」

それからずっと一緒にいる。背中に乗せていたコニャッコは自分の子どもではなく、何処からか保護してきた野生のカーバンクルニャッコだそうだ。はぐれているのを連れてきては育てている。

カーバンクル種って野生では進化じゃなくて突然変異なんだって。魔法師タイプだけあって貧弱なので、大半は小さい頃に苛められたり、捨てられたりして消えてしまうらしい。しかしクロマルちゃんは自分が保護されたから…とせっせせっせとコニャッコたちを保護して、いまや200匹くらいいるのだとか。多いな!

集落全体で世話をしており、アルラウネとカーバンクルニャッコはすっかり共生関係になっている。アルラウネの天敵は虫とマルモで、このふたつから守ってくれるニャッコはありがたいんだって。

「わたしたち、ゆっくり忍び寄って大きな獣を倒すのは得意よ。でも小さいものはとても苦手なの」

強そう。

つまりアルラウネはカーバンクルニャッコに安全な寝床や食事を提供しているというわけだ。

他にも『ニャルコール』でニャッコが正気を失わないように、森の『ニャルコール』を駆除するのもアルラウネの役目なんだって。でもあまり多く増えすぎると手が足りなくなってしまうのだとか。

「この季節は雨が多くて、とても嬉しいけど、他のものにとっても雨は恵みだもの。複雑なのよ」

アルラウネはおっとりと話す。本人の話通り、動作はとてもゆっくりだ。身長は猫よりも高いのに、ルイから降りて歩く猫よりも足が遅い。

村というだけあって柵のなかは骨と毛皮で出来た家が並んでおり、家の周りには庭のようにさまざまな草木が植えられている。むき出しの土の部分は、どうやら道のようなものらしい。彼らが根を這わせながら歩くために、柔らかい土が好ましいようだ。

ちなみに村の中にはコニャッコがそこかしこにいてコロコロしており、ちょっと和んだ。

「昔はこの森にも頭のいいマルモがいて、彼らがいた頃には、マルモとも共存できていたのよ。でも、今はダメね」

「にゃあ、ドゥーアでも昔、賢い地鼠族がいたって聞いたにゃん」

「地鼠族、そう、きっと同じ子たちね」

ゆっくりと歩いて、村の広場だという場所まで案内してくれた。

「さあ、お店をするならここがおすすめよ。みんなお店が大好きなのよ」

「ありがとうにゃん!」

突然のアルラウネ相手の交易イベントだ。

最初からわかってたらいろいろ用意してきたのに、残念ながら荷車の中身は運搬用の荷物がほとんどで、猫のアイテムはそんなに入っていない。

それにNPC相手に露店を開くのは初めての経験。でもそっちは荷車を買ったときに一通り調べてある。

当然だが、開く土地によって売れるアイテムと売れないアイテムがある。売れるアイテムは多少高くても売れるが、住人好感度が下がる場合がある。好感度が下がると店の利用率が下がる…などの注意事項があった。

アルラウネに売れるアイテムってなんだろう??

とりあえず『液体肥料』は出してみるとして、あとは?

アルラウネを観察してみると、服はツタを使って、というか変化させてそう見せているようなので、装飾品は必要なさそうだ。

装備に興味がないなら、ニャッコ関連品はどうだろう。『イワッシー』『チッギョ』なんかは売れるかもしれない。『猫まっしぐら』を使いきってしまったのは痛手だった。

あとは便利アイテム的に『魔法玉』もいくつか並べておこう。『水魔法玉』『浄魔法玉』なんかはいいかも。

それから、畑をしてるってわけではないようだけど、庭のように草木を植えていたから、もしかしたら園芸もしているかもしれない。

それなら種なんかも売れるかも?

しかし種といっても今、ろくなものがない。ラモを孵化させるために色々使いきっちゃったから。

白ラコラの種はさすがにダメな気も……。いや、動く植物なら逆に相性がよい……?

よし、ダメ元で置いてみるか!

商品はこれで決定!

「猫の店、開店にゃん!」