軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45.おまじないと進化

「そういや猫ちゃんはもう魔道具マーケットの用事は終えた?」

「属性銃は作ったにゃんよ~。でももう1個用事があったのを思い出したにゃん。自由都市に帰るのはその後にゃんね~」

「そか、じゃあまた今度ねえ~」

「また何かあったら気軽に誘ってね!」

「もちろんにゃん~! そっちも猫にもお役に立てることがあったら呼んでほしいにゃん」

まあ猫でお役に立てることはだいたいリーさん(錬金術)や、ヤマビコさん(料理人農家)が出来るからそうそうないとは思うけども。言いたいだけだからいいの!

そんなわけでみんなとお別れして、すっかり人の減った魔道具マーケットを歩く。減ったといっても、せっかく来たからついでにいろいろまわってくか、というプレイヤーが多いのか、暗黒夜前よりは人出が多い。

賑わうマーケットの通りをキョロキョロと見回しつつ進む。

猫のやり残した観光。

それは『灰色琥珀』を売ることだ。

『リルバラン』『ミラキンス』などの香木も仕入れてきたのに、うっかり交易するのを忘れていたのだ。

『運搬』の荷物は運んだのに個人の交易を忘れてしまうとは。まあ到着してわりとすぐケータくんに会って、属性銃にかかりきりになっちゃったから仕方ない。

魔道具マーケットはホーム更新が出来ない。一度自由都市に戻っちゃうと、 転移施設(ポータルポート) を使うか徒歩でしか来られないから、用事は全部済ませておかねば。

レイドで人が集まったせいもあって、掲示板を見ればどこにどの店があるのかわかってありがたい。ログを探すのにちょっと時間はかかったけど、歩いて探すよりは全然楽ちんだ。

やってきたのは香料のお店『指先の魔法』。ここで『灰色琥珀』と香木を卸していく。

「灰色琥珀とは珍しいものをお持ちですのね」

香料屋の店主は怪しい雰囲気の若い女性。褐色の肌に真っ青な目蓋がエキゾチック。獣耳と角が生えてるので獣人らしい。たぶん、ヤギ? ちなみにこのゲームの獣人は女性でも角が生えてる。性的二極化が控えめだ。

「それにこの香木も相性がとてもよい…、いいセンスをしてらっしゃいます」

おっとりふんわりそう言うと、店主は棚から香炉を取り出した。

「センスのいい方にはおすすめのスキルがありますのよ」

「にゃん??」

売りに来ただけなんだが、スキル??

「『おまじない』。テイマーやサモナーにはうってつけのスキル。いかがかしら」

「にゃあ…。気になるけど、どうすればいいにゃん?」

いかがって言われても、具体的になんぞ?

「あら、これは失礼。ご存じとばかり…。当店ではスキル講習もしております。そちらは金銭でも受講出来ますが、特別コースはアイテム払いとなっておりますの」

「『灰色琥珀』を支払ってスキルが覚えられるってことにゃん?」

「ええ、『灰色琥珀』だけなら『呪術』を。『リルバラン』『ミラキンス』もセットなら『おまじない』をお教え出来ますわ」

なるほど、センスのいい方、ていうのが3点セットに反応した文言だったのか。

てことは『呪術』より『おまじない』の方がいいスキルってこと? 逆に思えるけども。

ざっくり調べてみたところ、『呪術』は生産スキル。『おまじない』は装備品の特殊効果を引き出すパッシブ兼アクションスキルらしい。意外と違うな?

『呪術』は消耗品・装備品など加工出来るものが多岐に渡る。主に『香料』を使うので『調合』とも相性がいいみたい。

『おまじない』は『呪術』で作ったアイテムの力を存分に引き出すスキル、といった感じ。

「猫は『呪術』を持ってないけど、『おまじない』がオススメにゃ?」

「あら、呪具は購入が出来ますもの。当店でも取り扱ってますのよ」

店主おねえさんはコロコロ笑う。

買えるなら作らなくてもいい、それはそう。

ちなみにアクセサリー『香水』や『香炉』系の装備なんかが呪具にあたる。これらを『おまじない』持ちが装備すると、その装備効果を従魔や召喚獣に拡大できるらしい。

つまり猫のアクセサリー枠は取っちゃうけど、代わりにルイやレトの強化もまとめて出来ちゃうということだ。なるほど、たしかにテイマー・サモナー向けのスキル。

気になりますな。

「交換したら教えてもらえるにゃ?」

「ええ、この品質でしたら、呪具もおひとつプレゼントしますわ」

『灰色琥珀』を売却するか、スキルを取るか。悩むところだが、せっかくだし、『おまじない』スキルを取っておこうかな。

スキルリスト見ても『おまじない』はなかったので、おそらくクエスト取得だけなんだろう。

スキルは増えても困らない。SPかからないスキルはもらっておくに限る!

「お願いするにゃ!」

「交渉成立ですね。では左のお手をどうぞ…」

いわれた通りに左手を差し出すと、店主はむにゅっと猫の爪を出してその小指に真っ青なマニキュアを塗る。他の指も塗るかと思ったら左の小指だけ。その爪の色もスーッと消えていった。

「はい、出来ましたわ」

『スキル『おまじない』を覚えました』

そんな簡単に!?

「『呪術』を極めたものが授けることの出来るのが『おまじない』ですのよ」

「ありがとうにゃん~!」

スキルというより永続バフみたいなものなのかな。『呪術』はアイテムに呪術をかけるスキルだけども極めていくと人そのものに呪術をかけられる、みたいな…。……猫、呪われた!?

深くは考えないでおこう…。

選べる呪具は『活力の香水』と『幻惑の香炉』の2種類。

『活力の香水』は全員の耐久UP。HPにプラス効果。

『幻惑の香炉』は全員の回避UP。素早さではなく回避なところがポイント。そのかわり上がり幅は大きめ。

悩んだけど、猫PTって全体的に貧弱で、HPは増やしても焼け石に水感がある。本体の猫からしてそうだけど、ルビーもレトもやわらかい。

なので『幻惑の香炉』の方にした。ロニの『五光のブローチ』もなくなったし、『悪夢のピアス』付き『ジャボ』を外して装備しておく。タマちゃん(2代目・モンシラ)が孵化したら『ジャボ』復活としよう。

『幻惑の香炉』はベルトから下げる丸い小さな金属のかごで、いわゆるポマンダーに似ている。オレンジでもリンゴでもないやつ。なかなかアンティーク感があってよき!

嗅いでみたらほんのり爽やかなウッドノート。嗅ごうとしない限り匂いはしないみたいだ。これなら邪魔にならなくていい。

『おまじない』のLVが低いうちはPT全体へ行き渡る効果も低い。LVをあげるには『おまじない』を使う必要があるが、使うと『香水』・『お香』は消費されていってしまう、という案配。

呪具装備のラインナップも見てみたけど、さすがPT全体装備にもなるだけあってお高い!

『おまじない』で使用するためのアイテム呪術具は『香水』『お香』以外にも『わら人形』などの定番アイテム(?)、それから『ツマベニ』『真夜中の鏡』などなぞのアイテムも揃っている。

しかもアイテム効果も特に書かれていないという…。これはどこかに説明書があるやつ?

とりあえず価格がお手頃なので『ツマベニ』を買った。花びらだな? 爪紅(つまべに) ならホウセンカだろうか。

あとで『おまじない』について掲示板も調べておこう。

さて、これで魔道具マーケットの用事は片付いたので帰還!

の前に、消耗したデバフ弾を買えないか確認。

今回のデバフ弾は『毒弾』でいちばんオーソドックスなやつだった。

『毒弾』はスリングショットにもあるしそっちのが安いんだけど、装備変更がめんどくさいし何より飛距離が全然違う。結局、両方買っておいても属性銃のデバフ弾しか減らないという事態になりがちなのだとか。

猫も悩んだけど、属性銃の『毒弾』を買っておいた。アイテム頼りだから、細々とお金がかかりますなあ。

今度こそ『リターン』で帰還。愛すべき我がホームタウン、自由都市マケット!

しかしまずはマイルームへ移動。

お待ちかね、ルビーの進化である。

レイド参加の経験値によって、ルビーがレベルアップして進化可能になっていたのだ。

レベルアップで覚えたスキルはやはり『アイテム投げ』。

ドゥドゥーはいろいろなタイプがいるので判断つかなかったけど、これでルビーはバフ型ということが判明した。まあ『地団駄』もバフだから最初からわかってたといえばそうなんだけどね!

そんなルビーの進化先はこれ。

『ククードゥドゥー』

『ルードゥドゥー』

名前だけではなにもわからん。

調べてみると『ククードゥドゥー』がドゥドゥーの正統進化で、魔法系になる道。

『ルードゥドゥー』が派生進化で、素早さを極めるドゥドゥーになる道らしい。比較的小型のドゥドゥーによくいるタイプで、避けタンクやスイッチタンクが出来る子になったりするそうな。

ルビーだったら『ルードゥドゥー』かなと思ったけど避けタンクって言われるとなんか違う気もするな?

バフ系になるなら正統進化ルートへ乗っておくべきだろうか?

でもこのゲームの進化ステータスは基本、加算減算方式なんだよね。元々の数値から、進化先の数値が足されたり引かれたりする。なので現在のステータスが継承でもある。

そうなると元々魔力低めのルビーは、やはり魔力低めにしかなれないのでいまいち利が薄い。

今後更なる派生進化を期待するとして、ルビーは素早さ重視の『ルードゥドゥー』へと進化させることにした。

装備をすべて外して、おやつに『ハッピー豆』をあげる。高速でつつくのを待って、進化先を『ルードゥドゥー』に選択。

虹色の光がルビーの足元から沸き上がり、白く明滅、たくさんの星がキラキラと降ってくる。そしてそれが積もっていき、新しいルビーに変化していく。

最後にピカッと光ったら新生ルビーの登場だ。

…大きくなった? かな??

あんまり変わらない気も。一番の特徴である赤い爪とくちばしは変わらず、もっちり文鳥ボディも特に変化なく。

あ、やっぱりレトと並ぶとわかる、大きくなってる。でも素早くなったのは間違いないようで、庭を走り回っていた。怪我しないようにね。

これからもよろしく、ルビー。