軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37.夜舞う梟

出来上がりを待ってる間に掲示板チェック。

お、「魔道具マーケット防衛スレ」が立ってる! 「暗黒夜スレ」もあったので覗いてみたら、そっちで新スレ立てることが決まったみたい。残念、スレ立てたのはケータくんじゃなかったようだ。

「魔道具マーケット防衛スレ」は阿鼻叫喚で賑わっていた。

なぜなら魔道具マーケットには冒険者ギルドがない。ホーム更新が出来ないのだ。復活地点が別の街になるってんで、防衛拠点としては相当不評みたい。そりゃそうだ、復帰にわざわざ 転移施設(ポータル) 必要になるんじゃ余計にお金がかかる。 端金(はしたがね) と気にしない金持ちばかりではないだろう。

それから魔道具マーケットは、商人の寄り集まってるだけの街だから元々の防衛力もかなり低いんだって。

しかし暗黒夜防衛も異界の扉防衛戦になるからには個人でDP稼げそうってことで、いつもよりプレイヤー人口がかなり多くなりそう。クラン対抗したい人以外も集まるだろうから、実際の防衛の面ではそんなに心配ないかもって話だ。

たくさん人が来るなら、ちょっとだけ防衛戦も遊びに行こうかな。人がわちゃわちゃして、上級者がバカスカ大砲になっているのを見るのは割と好きだ。楽しみ。

そうこうしていると台の上にアイテムが現れる。お、『未完成アイテム』だ。猫もルドルフさん再び?

『悪いけどうちじゃ仕上げが出来なかった。でも君は、『変成』が使える錬金術師?』

「そうにゃん~」

『中級錬金釜にその未完成品を単独で入れて『圧縮』。それで完成する』

「にゃん!? アイテム1個で圧縮なんてして失敗しないにゃん!?」

そんな使い方、初めて聞いたぞ?

『しない。『未完成アイテム』とはそういうもの。押さえ込む力が足りてない。中級錬金釜にはそのための機構がある。もし失敗したらもう一度作ってあげるからやってみて』

「そ、それなら釜を持ってくるにゃ」

いったんマイルームへ戻り、中級錬金釜を担いでテントへ。

いわれた通りに中級釜に『未完成アイテム』をセットする。

「属性は何にすればいいにゃ?」

『属性値を上げるなら『魔道石』と同じ。氷なら魔力強化、雷なら照準補正、土なら耐久強化、時は連射性能強化、無は反動減少。強化より元々の魔道石の属性が優先される』

ふむ、氷の属性銃には魔力強化はつけられない、みたいな話か。

うーん、迷うところだが、猫にはやはり反動減少だろう。属性銃の反動がどんなもんかはしらないけど、減少効果がつくくらいだからそれなりにありそう。猫はなにしろ非力だからね。

ということで無属性圧縮だ。

はいチン!

『夜舞う梟の属性銃』

あらカッコいい。

『やはりイレギュラー品になった』

「これイレギュラーにゃん?」

『『梟の属性銃』になるはずだった。『鳥の杖』を使うこと、属性値が基準越えするとほぼ梟になる』

梟の属性銃っていうのは、属性銃のランク?かな。

猫が攻略サイトで見てきたのは主に『狐』『狼』『鼠』のランクがあって、プラス各属性で2種類独自の動物があるって話だった。闇はたしか猫と 蝙蝠(コウモリ) だったはず。

梟はなかったから、アップデートで増えたやつかな?

どのランクなのかはわからないが、これはロアンの新しい住処でもあるので大事なのは住み心地。見守っているとポコンと銃からハートの吹き出しが出たので、気に入ったらしい。よかった。

性能としては魔法100闇80の銃。攻撃力は思ったより高い。アプデ前の水準ではかなり強い方。

攻撃が100%魔法攻撃扱いになり、そのうちの80%が闇属性として扱われる。つまり魔法弱点の敵に攻撃した場合には10割に係数がかかるが、闇弱点の敵に攻撃した場合は8割に係数がかかる、といった具合。

魔法100で物理が入ってない銃は『属性銃』の中では特に『魔法銃』と呼ばれ、射程は短いが命中率は高めだ。物理攻撃割合が高い銃ほど、射程は長く、命中率は低くなる。なお100%物理の属性銃はまだ判明していない。

たぶん最後の『圧縮』で氷や無属性を選択すると魔法銃になりやすいんだろうね。

イレギュラー要素はたぶん属性値が高いことかな? 属性値が60以上で当たりと言われる属性銃にしては、破格の性能だ。

黒の塗料を入れたから真っ黒になるかと思いきや、メタリックな紺色に仕上がった。差し色のオレンジはさすがに消えてしまったけど、梟だからか淡いクリーム色の羽根模様が入ってアクセントになっている。

銃身がほとんどまっすぐなこともあって杖っぽさもあり、ほぼマスケット銃だ。装備すると猫の空賊感が増し増し。いい感じ!

『精霊石はイレギュラーが生まれやすい。いい仕事だった。錬金術師、仕上げを任せたお詫びにこれをあげる』

ポワンとまた台の上にアイテムが現れる。

『銃弾袋』、属性銃で撃てる弾が30個セットになったアイテムだ。

これはもしかして、ケータくんも戻ってきたらもらえるやつかも? 一応連絡しておこう。

『ニャ!? そっちはもう行かなくていいものだと思ってたニャン』

『猫は鳥の属性銃になったにゃんよ~。そっちは?』

『俺は光狐の属性銃だったニャ。やっぱり思ってたより上のランクになったニャン。い、いろいろありがとうニャ!』

『どういたしましてにゃん~!』

ケータくんは顔を見なければ素直になれる恥じらい猫ちゃんか。

「『銃弾袋』の購入は出来るにゃん?」

「うちは属性銃のオーダーメイド店。弾は作っていない。弾が欲しいなら……、そう、『魔法の粉』か『魔法石』を10個持ってきて。属性はなんでもいい」

「にゃあ、お任せあれ!」

最低品質素材はまだまだあるし、10個なら簡単だ。マイルームでさくさく作って納品。一応需要の高そうな『光魔法石』『闇魔法石』を2個ずつ、『魔法の粉』は光と闇で3個ずつにしてみた。

『ありがとう。とても助かる。お礼にいい店を紹介してあげる』

買えるんじゃなくて紹介制。そうやって繋がっていく仕様なのね。

アプデ前は街クエストをこなすと店に辿り着く仕様だったんだけど、それよりは楽、かな?

いや、ルドルフさんの好感度落ちるのとか結構露骨だったし、好感度が一定より下だと紹介されないとかだったらかなり厄介かも?

「早速いってみるにゃ! いろいろ教えてもらって、いいもの作ってくれてありがとうにゃん~!」

『どういたしまして。縁が繋がったらまたおいで』

紹介してもらったGPSはここから近そうなので、地下街の何処かなんだろう。楽しみ!

ケータくんは猫がマイルームへ帰っているうちに店へ来て、無事『銃弾袋』をもらえたらしい。よかったね。

店の紹介は受けられなかったが、追加でポーションの納品依頼が発生したそうでまた生産へ戻っている。

『これを納品したら俺も教えてもらえそうだから、まだ教えてくれなくてもいいニャ』

『了解にゃん~、もし違う報酬だったら教えるにゃんね』

『そのときは頼むニャ』

なお猫の『魔法の粉』納品も、属性銃関連のクエスト、ではなく暗黒夜クエストの一環だった。たぶん本来なら一定の好感度があれば紹介してくれたところにクエストがカットインしてきてるのだろう。その分、好感度も稼ぎやすくなっていて助かるけどね。

しかしこうなると、猫も錬金術でお役に立てるかもしれないわけだ。

『やることあるならそっち優先でやってもらっていいニャ。俺もポーション以外に何かないか探してみるニャン』

『ポーション以外にゃ?』

『暗黒夜クエストは運搬依頼とかもあるって見たニャ』

『なるほど!』

ケータくんも『運搬』持ちだっていってたっけ。それなら猫もお役に立てそうかも。

とりあえず猫はルイと一緒に、お先に銃弾のお店へ。GPSの示す先へ到着すると、なんと無人販売所だった。

よく田舎の道路脇にあるような例の木の屋台と木箱が置いてあり、『ご自由にお買い求めください』の表示とアイテムが並べてある。

プレイヤー露店ならよく見るけど、NPCの店では初めて見る形式だ。こんなのもあるのね。

銃弾屋は普通の攻撃用の弾と、デバフ弾の取り扱いがあった。デバフ弾はなぜか『目眩弾』だけしかない。オススメなのか売れ残ってるのかどっちだろ?

目眩は光属性のデバフで、要は暗闇状態の光属性版。夜行性だったり感覚器官が目じゃなかったりする敵にも効果があり、命中率と回避率が著しく下がる。闇属性の暗闇デバフより接続時間が短いのが特徴。同じように回復魔法『メディケア』または『万能薬』『目薬』で治る。

せっかく売ってるし、そんなに高いものじゃない。販売物がランダムだったらもう出会えない可能性もあるし、ちょっと多めに買っておく。

ちなみに銃弾は撃つ度に装填するのではなく、右手に銃、左手に弾のような形で装備しておく。撃つ度に自動で弾が減る方式だ。

左手装備を変更すれば撃つ弾も変わるというわけだ。お手軽。

さて、属性銃関連が片付いたので、暗黒夜クエストに取り組むぞ!

まずは『錬金術』の依頼はもうないか探しに属性銃の店へ戻る………、さっきあった場所には既にテントがなかった。

にゃん~! あまりにも早いお別れ! 無情すぎる。

気を取り直してルドルフさんのテントへ行ってみると、こちらはまだいた。

「灰色猫も最後の仕上げか?」

「仕上げは自分でしたにゃん」

「錬金術師ならそうだろうなあ。何かあったか?」

「教えてもらったお店がもうないにゃんよ~」

「あ~……偏屈だっていったろ。すぐいなくなっちまう。仕事中は一応ちゃんとしてるんだがな」

全然驚いた風じゃないルドルフさんが慰めるように言う。

「忙しいから手が離せない、なんて言うが、手が離せて本体が出てきたことなんてないからな。おかげで『妖精の店』なんて呼ばれてる」

「妖精にゃん?」

「ほんとにそうかは知らんがな。まあ出店してるとしたらだいたい地下街、しかも暗黒夜が多い。運が良かったな」

おお、それはたしかに運が良かったかも。

そうだ、ついでなので聞いてみよう。

「仕上げの『圧縮』は『未完成アイテム』にしか使わないものにゃん?」

「基本はそうだ。ただし、アイテムがうまく収まらないときだけな。『圧縮』してやればうまく行くものばかりでもねえ」

「『魔道石』を使うアイテムは『未完成アイテム』になりやすかったりするにゃ?」

「いや、そういうわけじゃねえな。『錬金術』に限らず、複合――特に3つ以上の生産スキルを掛け合わせたアイテムはなりやすい」

ふむふむ、『魔道工』『木工』『鍛冶』と3つかけ合わさってたからなった、みたいな感じだろうか。

「失敗品でも、『ガラス岩』は単独で『圧縮』すると『ビー玉』3個になったりするだろ?」

「そんなの試したことないにゃんよ!?」

『圧縮』は必ず10個でやらないと失敗すると思ってたよ! 逆をやるのは別のアーツがあるんだとばっかり。

というかたしか実績解除スキルに『分解』があったはずだ。あれが逆だと思ってたけど違ったのか?