軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3.頭装備を求めて

「『ジュエル』はタイミングを合わせて相手の体に当てると、相手が使おうとしてた魔法をキャンセルさせることが出来るにゃん。これは魔法玉でもいっしょだと思うにゃ」

「それはとても有用だね!」

「にゃん~、理論上はそうなんだけど、猫は投擲があまり上手くないし、魔法を使う敵と遭わないのもあって、試せたことがないにゃん」

「おやおや。それなら、こちらで試させてもらってもいいかな?」

「こちらこそお願いしたいにゃん~!」

『宝魔法玉』はとりあえずお預けするということで10個引き取ってもらい、試験後にお金が払われることになった。

……これってもしかして、生産ギルドで行われることがあるという『レシピ認定試験』なのでは?

ギルドで『レシピ認定試験』を受けたアイテムはレシピが登録され、素材と必要レベルによっては、NPCからも販売されるようになる。

猫としては別にこれで儲けようとは思ってないので、レシピ認定されてもまったく問題はないけど。試験だと思うとちょっとドキドキしちゃう。

いや、試験なら錬金術ギルドだし、関係ないか? うーん、わからん。

店主さんとは名刺交換してフレになってもらった。試験が終わったらお手紙くれるって。やったぜ、NPCからの初お手紙がくる! 業務連絡だけど。

「ありがとう、面白い投擲アイテムはいつでも歓迎だよ」

「またなにか見つけたら持ってくるにゃん!」

ついでに作り貯めた『投石玉』も取引してもらう。

それからレトも久々に会って店主に挨拶していたが、どんくさくなったことで投擲は完全にあきらめるよう諭されて、ちょっと落ち込んでしまった。後ろ姿が哀愁…。ルビーに慰められていた。

さて、無事3人から意見を聞いてきたので、木綿のシャツを仕立て屋さんへ渡す。

「あらあら、そうだったの。ううん、そういう意見もあるのね」

仕立て屋さんはシャツを作業台へ広げて、猫のメモを見ながらうなずいたと思うと、すぐさま作業に取りかかった。

白い布がサアッと台の上に広げられたかと思うと、裁ちばさみでスワッと切られ、ドンと落ちてきたミシンでダダダダッと縫われていく。

NPCの作業がとんでもない速さなのは知ってるけど、さすがに目の前で起きるとぽかんとしてしまう。ありのまま今起こったことを話しても、何がなんだかわからないうちにシャツが出来上がってたぜとしか言いようがないやつ…!

そんなわけで出来上がったシャツがファンファーレと共にトルソーへ飾られる。

「出来たわ、『働くひとのシャツ』よ!」

「な、なるほど…!」

そういう共通点か! 納得である。

出来上がったシャツは七分袖の開襟シャツで、それぞれ3人の顔を浮かべてみるとたしかに似合いそう。よきよき。

気になる得点は――62点!

オシャレ加点はほぼほぼなかったんだけど、コンセプト加点が高めでこの点数だ。まったく考えてなかったけど店主3人という選択が功を奏した。『緑の軌跡』にしておいてよかったね。

「ううん、斬新だわ。いい新商品になりそう。ありがとう!」

「どういたしましてにゃん~!」

「そうそう、こないだはどこまで話したんだったかしら。巣の中から出てきたものについて、だった?」

「雛の骨じゃなかったにゃんね~」

「うふふ、そうね、そうだったわ!」

前回のクエストの続きだ。

ワイバーンの巣にある卵が異界の扉になって、そこから名状しがたき雛が生まれて、倒して、巣の片付けをしたらなんか出てきた…というところだったはず。

「巣の中から出てきたのは、なんと『ルイネの林檎』の枝だったのよ」

おや。

あ、もしかしてそれで攻略サイトのリザルト欄に『ルイネの林檎』が載ってたのか!

「けれどたわわに実りをのせていた枝は、あっという間に枯れてしまったそうよ」

「にゃあ…」

たしかに、ワイバーンの巣は今もミニダンジョンだし、林檎の木なんて欠片もなかったもんね。

先日のアルテザの人形遣いの村を考えると、何らかの芽は残ってるかも…な情報とも取れる、のかな?

こういうヒント山ほど出てきそうだな、お使いクエスト。

「ふふ、ワイバーンの巣って、やっぱり不思議で、怖いわね!」

「そうにゃんね~」

というところで、仕立て屋さんのお使いクエストは終了だ。

次からは鍛冶屋さんか、冒険者ギルドのどっちかだったはず。また攻略サイトのチェックをしておかなくては。

仕立て屋さんからは、新しいシャツの発想のお礼にと『クローゼット引換券』をもらった。よく考えるとお礼にもらうには太っ腹な商品だな……いや、『素敵なソファ』をもらったときもそうだった、今更だ。くれるならもらう!

このクエストでもらえる『クローゼット』は、全身装備を3種類まで登録しておける。

瞑想に使うお部屋着もとい自由なる魔法師装備セット、街着として使ってる商人風装備セット、それから学園都市サモナー装備になる予定の戦闘用装備、と既に予定で埋まってしまうが、必要十分だ。もっと登録数の多いクローゼットは、狩場が出来たら考えよう。

それから60点以上だったので、ギリギリだけどオシャレコンテスト参加券ももらった。

通称オシャコンは毎週金曜に各街の仕立て屋さんから行ける特殊インスタンスで行われるらしい。毎週…。なかなか猛者が揃ってそうな。濃そうな世界だ。近寄らんとこ。

コンテスト参加券さえあればNPCオシャレ装備が解禁されるので、猫はそれで十分だ。

さて、帽子。どんなのにしようかな~。

改めて仕立て屋さんを眺めて、気になったのは2つ。

紺地に白の羽根つき帽子と、黒革のハンチング帽。これにサモナー装備を合わせたらかっこよさそう。

どちらもすごくいいんだけど、残念ながらどちらも防御力がほぼなく、ステータスの上昇値もない、いわゆる紙装備。戦闘用としては悩ましい。ううーん、街着ならぴったりだったんだけども。

というかオシャレ装備って、普通の店売装備より弱いんだね!? そして高い。

猫の、トミちゃんに選んでもらった商人装備は普通の装備だったから知らんかったわ。NPC店で買うオシャレが街着専用の世界だったとは、盲点。

完全に当てが外れてしまったけど、シャツ作るのは楽しかったし、クローゼットもらったし、お使いクエスト進んだし、まあいいか~。

こうして振り出しに戻ってしまった帽子探しの旅である。

どうしよっかな~~~。悩むとついつい吸い込まれちゃう、露店通り。今日もどんぶらこ。

帽子、帽子、なにかないかな~。

おっ、あれはデッサンリンゴ! 正式名称は『集中赤ポム』。

『集中赤ポム』は魔物からのドロップ装備で、投擲師なら必ず一度はお世話になるとも言われている人気装備だ。なぜならこれが器用値UPの帽子だから。

しかし、見た目が完全にネタ枠である。名前から想像がつくだろう、赤いリンゴなのである。

むかしむかし、VRが主流になる前にあった大人気MMOにそういうアイテムがあったらしいから、リスペクトしてるのかも?て話。ちなみにそれは矢が刺さった、いわゆるウィリアム・テルなリンゴだったらしい。

このゲームのリンゴは、2冊の本の上に載った赤リンゴだ。本はもちろんハードカバーの、なんか豪華な装丁なやつ。その上にリンゴが置かれている。それで通称デッサンリンゴ。たしかに絵のモチーフになりそう。

しかし大きな難点もあって、実は結構、重いのだ。なので矢やブリッツの容量を圧迫してしまうため、貴重な器用UP装備だが、卒業して新しい装備を探す人も多い。

その点、猫なら『運搬』持ちだから心配はないのだが。

や~~、でもリンゴ。しかもハードカバー本まで頭に乗せるのはちょっと猫、イヤ。だって重そう。実際重いわけで。首痛めそう。ゲームだとはわかってるけど、そしてそんなの装備しちゃえば関係ないってわかってるけど!

ううう、と悩んでるうちにデッサンリンゴが売られている店を通りすぎてしまった。実は何気にレアアイテムなので、マケボで買おうとすると高かったりする。たぶんさっきのも結構なお値段しただろうしな…。

は~~帽子、帽子、なにかないかな~。

あっ、あれなんだろ? アクセサリーかな? ちょっと気になる、寄ってみよう。

気になったのはゴーグルだ。レンズはブルー、メガネのように丸くてごつい。ブリキのような金属の質感と革の装飾ベルトが、スチームパンクっぽくてなかなか良い。

アイテム名『ドラゴンフライ・グラス』。……トンボのメガネ……! ネタ枠だコレ! いや、でも言われてみるとトンボの要素もちょっとある、かな?くらいで普通にかっこいいんだが。

ただ、サモナー装備と合うかというとちょっと微妙……いや、合わせて銃とか持ってたら、ちょっと海賊ならぬ空賊?ぽいかも? そういう創作ありそう!

気になる気になる。あ、防御力わりと高い。器用が上がる、そして重い。んん、数値的には防御力以外はデッサンリンゴの下位互換だな。

でもお安い。えっ、かなり安い、びっくりなんと3万z。ええ?

「これ、この価格でいいにゃ?」

「お古処分なんで構いませんよ~。投擲師さん? これかなり重いから弾全然持てなくなるけど大丈夫?」

販売してたウサギの獣人族のお姉さんに心配されたが、問題はない。

「猫、『運搬』持ちだから大丈夫にゃん!」

「なら問題ないかな? 耐久修理済だからすぐ使えますよ~」

ふむ、これなら全然いいんじゃない?

念のため装備の重量制限を越えないかも計算してみたが、問題なさそう。いける!

「これくださいにゃん!」

「まいどあり~、ここで装備していくかい?」

「一度は言ってみたいセリフにゃん」

「フフ、言ってやりました…」

定番台詞を聞きつつ、お買い上げ。結局この場で装備はしなかったんだけどね。だって商人装備に合わないし。

「風猫族の投擲師さんだとそろそろ武器に悩む頃だと思いますが、『属性銃』の上位互換はまだ出てないんで、原点回帰がオススメですよ~」

アドバイスももらった。

『属性銃』ていうのは学園都市か魔道具マーケットで手に入る遠距離武器で、なぜか投擲で扱える武器だ。能力としてはコズミックシュートみたいに威力固定の魔法弾が撃てる。ただし弾は消耗品。

非力な種族でも攻撃力が出るんで人気なんだけど、中級以上の装備は出てないからそれに頼りすぎると詰まるって話だったはず。

ふむ、原点回帰っていうのは、たぶんスリングショットとかスリングに戻れってことかな? とはいえ非力な種族は攻撃力出ないから、デバッファーがオススメってこと……かな?

「アドバイスありがとうにゃん~!」

なんだかLV50くらいに見られた気がするけど、猫、まだ中級者になりたてのペーペーでLV26なのよ。アルテザで上がってこれです。

ううむ、『ドラゴンフライ・グラス』、なかなかよい買い物だったのでは?