軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2.オシャレ番付

前回お使いクエストをした鳩ポッポ商店街の仕立て屋さんへやってきた。たーのもー!

「あら、いらっしゃい。ちょうどいいところに来てくれたわ。実はちょっと、お願いしたいことがあるのだけれど…」

「にゃ、御用にゃん?」

早速始まるお使いクエスト。全肯定のようでちょっと違ったお姉さんからお話を聞く。

「今、新しく売り出すシャツのデザインに悩んでいるの」

お姉さんの話はこうである。

新しいデザインのシャツを出してみることにしたものの、どういうデザインにすればいいのかで行き詰まってしまった。お姉さんがデザインして、あれこれ周囲の人にアドバイスを聞いたりすると、結局、今までのシャツに戻ってきてしまう。これはこれとして素晴らしいシャツだけど、そうじゃない。

もしかしたらこのシャツが着にくい人だっているのかもしれないし、もう少しオシャレな方がいいのかもしれない。そう思うとモヤモヤして、全然デザインが進まなくってしまった。

「それで、あなたの知り合いに聞いてみてもらいたいの。このシャツに改善点があるかどうか。不満があるかどうか。もし、あるならどんなことか、もし直すとしたらどうなってほしいのか。…そうね、3人くらいに聞いてほしいわ。受けてくれるかしら?」

「3人でいいにゃんね。お安い御用にゃん~!」

このお使いクエスト、NPCの知り合いがいないとなかなか大変なクエストらしい。むしろこのクエストがNPCと知り合うためのクエストであるとも言われているくらいだ。

でも自由都市は猫のホームだ。3人くらい楽勝である。

……1人出禁食らって会えないNPCがいるけど、本屋のお爺ちゃんを抜かしても3人はいるもんね!

ここはあえて新規開拓をしようか、という気持ちも一瞬わいたけど、やはり旧知のNPCを頼ろう。新デザインのシャツが出来上がるとNPCがお着替えするらしいし。

インベントリのイベントアイテム欄にシャツがインする。このシャツ、やたらと重い。つまり重要アイテム…というか、クエスト中は別の場所に行かないように制限されてるとも言う。

例えば知人NPCがポーツにいるから、とポーツへ行ってもクエストは可能なんだけど、仕立て屋のお姉さんにはその辺ちょっと不評らしい。まあ、マケットで商売するのによその人の意見もらっても、て感じなんだろう。

「この『まち針』『ピンクッション』『巻き尺』『マーキングチョーク』も持っていってね」

お姉さんに話しかけて、更にアイテムを預かる。これはあってもなくてもいいけど、あるとより良デザインに出来るらしいアイテム。ちなみに重い。

これで準備は完了。

いざ行かん、オシャレクエスト!

「胸元がきついな!」

ガハハ、と笑いながら言うのは串焼き屋のおじちゃんだ。

なるほど、立派な胸筋。上までボタンがしまらないことからもきついのがよくわかる。袖もぴちぴちだ。

「袖もにゃんね~」

「そうだな。あと袖の長いのはあんまりよろしくねえ」

おじちゃん、いつでも腕まくりだもんな。長袖を腕まくりしてるのだと思っていたが、七分袖を肘上に捲るスタイルのようだ。そういえば自由都市のNPC、半袖とかノースリーブは見かけない。他の街にはいるので、世界観というより気候が長袖で適温なんだろう。

「襟がつまるのも好きじゃねえし、上3つ開けてちょうどいい」

「にゃん」

腕まくりした部分にまち針を刺して止め、袖はこのくらいの長さがいい、と計ってチョークで印付けする。腕回り、胸回りを『測量』、ふむふむ、なるほど。メモをとる。『測量』は『地図作成』のアーツ、他のものを計るときにも使える。便利!

メモしたら、着替えてもらう。ちなみに突然落ちてくるフィッティングカーテンにNPCが包まれ、そのカーテンがシャーッと開いて消えると着替え完了している仕様。いつものおじちゃんに早変わりだ。

「ご意見ありがとうにゃん~! これはちょっとしたお礼にゃん」

「おう、いつもありがとうよ、持ってきな!」

ミミットの腿肉を補充して、串焼きをもらういつものやり取り。にゃふふん。

自由都市まったり中の猫だが、ミミットくらいは狩っている。空飛ぶ絨毯を操る文鳥もどきなドゥドゥーのルビーと、卵から孵化したばかりのジェリのラージの、LV上げと戦闘訓練も兼ねている。なお今のところ連携らしいものはない。なくてもミミットなら倒せちゃうしね。

ちゃんと戦闘しなくちゃと思いつつ、今は街中クエストが楽しい。

ちなみに空飛ぶ絨毯はボチボチ広がり始めている。あの見た目なので、広がるのは爆発的だった。それだけ移動に困窮していた純魔が多かったのだろう。

ショーユラさんは「趣味の絨毯屋が!」と嘆いていたが、あっという間にレシピを他所へ売り払ったらしく、今は小人のぬいぐるみ作りに熱中している。ヘレナさんいわく『そういう嗅覚はやたら鋭いんですよね!』とのこと。

星魔法についても、ちょうど隠者の村が舞台の黒月夜があったじゃない? あれに乗じて掲示板に載せたらしく、多くの人が星魔法を手にすることになったそうな。

そんなわけで、いまや自由都市でもくるぶしほどの高さで浮いて滑っていく絨毯たちを見ることが出来る。

ルビーの絨毯移動もそこまで悪目立ちはしないというわけだ。最近はレトとルビーの2匹で乗っていることも多い。仲良し。

「胸元がきついねえ!」

てくてく歩いて、次は野菜売りのおばちゃん。串焼き屋のおじちゃんとまったく同じことを言われてしまった。ううん、たしかに豊満なバスト、ファビュラスぽよよん。

おじちゃんと違って肩や腕は大丈夫そうだけど、やはり腕まくりはしたいみたい。

「腕まくり大事にゃん?」

「袖が長いと邪魔になっちまうからね」

ふむふむ。半袖を提案してみたが、反応は芳しくない。やっぱり七分袖になった。

「他に気になることはないにゃ?」

「村じゃスカーフを巻くから、襟元はもうちょっと緩い方がいいね」

「にゃ~」

首にスカーフを巻いて、襟元に入れるのか。たしかにおばちゃんはいつもそのスタイルだったかも。メモメモ。

更にまち針、マーキングして、ささっと早着替え。

「ご意見ありがとにゃん~! これはちょっとしたお礼にゃん」

「おや、立派な白ラコラ! うちでは白ラコラはやらないから嬉しいよ、新鮮だねえ」

そうでしょう、さっきまで庭を走ってましたからね。

白ラコラ、隙あらば収穫しておかないと庭が狭くなるんじゃないかと心配で。最近はもはや戦いだ。ちゃんと基準に達したラコラを選んでるつもりなんだけど、強硬な反対にあうこともある。最初は遠慮してたけど、よくよく見てると花を咲かせたいから減らしたくない派がいるようだ。いや、放置したらまた増えるじゃん、採るわそんなん。駆逐はしてないから許されたい。

いつも通りお野菜あれこれ買わせてもらって、ちょっと割引してもらって、世間話をする。

ほう、マレビトダンジョンがそんなことに…。村が発展して街になりそう? そんなことある?? …さすがノーカさん……さすノカは伊達じゃない。

街になるっていうとやはりお貴族案件なのでおばちゃんにはよくわからないが、なんかいい方向へ向かっているらしい。な、なるほど?

「今はちょっと時期が悪いけど、無事街になったらおいでね!」

「楽しみにしてるにゃん~!」

ついに! おばちゃんの村のGPSをもらったぞ。やったぜ。

まあ時期が悪いらしいから、今すぐは行かないけど……、え、でもGPSもらったし、あれ、これってもしかしてフラグ? ど、どっち??

まあ大丈夫……いや、なんか不安! 一応ノーカさんに連絡いれておこうっと。

さて、残り1人は誰にしよう。

2人、同じような体型(?)の人を選んでしまった気がするので、ここは違うタイプにした方がいいだろうか。

猫の自由都市での知り合いNPCといえば、各ギルドの受付さんに司書さん、素材買取所のお兄さん、荷車屋台のお店のお姉さん、『ニャッコの寝床』の店主さん、それから投擲専門店『緑の軌跡』の小人族店主さん。本屋さん……は出禁なので除外するものとする。

ううん、改めて数えてみるとそんなに多くないな? いや、こういうのは数じゃないはず!

うん、ここは全然違うタイプの人の意見も聞いてみよう。

ならば行くぞ、久しぶりの投擲専門店『緑の軌跡』!

「袖が長いのは不便だなあ」

「にゃあ」

まさかの三連続同じご指摘。長袖嫌いという共通点があったとは意外だ。

といっても『緑の軌跡』の店主さんは腕まくり派ではない。単純に、手首が隠れるのが気になるそうだ。

「小人族では、客商売をするものは手首を出すのが一般的なんだよ。敵意はありません、何も隠していませんって合図なんだ」

逆を言えば、手首が出てない小人族はそこになにかしら道具を隠しているものらしい。へえ~! そんな種族特徴もあるんだなあ。

早速袖をまち針で止めて、何度か調節。

「うん、このくらいの長さならちょうどいい」

「他に気になるところはないにゃん?」

ちょうどいいところをマーキングしつつ尋ねる。店主さんは首を何度か振った。

「襟が詰まってるのはあまり好きじゃないかな」

こんなところでも共通点が。

まあ、わりと襟がしっかり首を覆うタイプのかっちり系シャツだったのもあるのだろう。猫も苦手なタイプだ。

2つボタンを外してちょうどいい、でも店主さんはボタンを外して着るのに抵抗がある様子、着崩すのが得意じゃないみたいだ。ふむふむ、なら最初から首が開いてる方がいいってことなんかね。シャツひとつとっても色々あるもんだなあ。

本日三度目の早着替えカーテンを召喚して、試着終了だ。

「ご意見ありがとうにゃん~! これはちょっとしたお礼にゃん」

「おや、嬉しいけどこれはお金をとらなきゃダメなものだよ」

『投石玉』を渡したらたしなめられてしまった。残念。

「じゃあこっちにゃん」

「これは……『魔法玉』かな? ……ずいぶんキラキラしているけど」

「猫の魔法にゃん。『宝魔法玉』にゃん!」

『宝魔法玉』は、『ジュエル』をこめた魔法玉である。そのままではこめられなかったりと試行錯誤があったのだが、気の迷いでスキル『二重詠唱』を取得したら上手くいった。

いや、庭の水撒きに『ピュリファイ』と『ミスト』を同時にやりたい、ていうあれね、はい。ついに取ってしまった。だってSPいっぱいあったから!

いけないいけない、SPまで散財するようになってはならんぞ猫、と戒めている昨今である。SP貯蓄、なくなったら直ぐには貯まらないんだからね!

閑話休題、『二重詠唱』によって魔法を待機させることが上手く出来るようになって、それが噛み合ったらしくてこれまで魔法玉にしづらかった魔法も出来るようになったのだ。