作品タイトル不明
460回目 世界樹の子
☆5『反転の鏡』の効果で半透明で実体のない『世界樹の化身』に実体を与える事が出来るようになった。
……………………うーーん? いやいや、深く考えると泥沼だよな、こういうのは。あまり考えない事にしよう。ってか、俺の頭で考えても理解できると思えないし。
しかしだ。☆5『反転の鏡』を使って世界樹に実体を持たせる事ができるのは解ったが、《反転》だと最初に充填した魔力分の時間だけで、《永続反転》だと永続的に実体を持たせる事はできるものの、最大四人まで。
世界樹全員を実体化するには《流転》を使うしかない訳だ。しかしこの《流転》がとんでもない。何せ効果範囲が『世界』だ。
いやね、この『世界』って言葉が曲者でね。世界の規模が『この星』だったらまだ良かったんだけど、星に留まらないらしいのだ。つまりは俺達が居る『異世界全体』を指しているらしい。
まごうことなき『世界規模』。これは冗談抜きで、世界を変える力なのだ。世界を変えられるとか、どんだけだよガチャアイテム!! ちょっとは自重しろ!
……………………いやしかし、だ。世界を変える…………か。それに『運命神』が、ある意味ゴーサインを出したと見れば、それもアリ…………なのか?
…………これは、もしかして……………………?
まぁそれは置いておくとして《流転》だ。これを使えばこの世界の全ての『世界樹』が対象となる。この世界の世界樹が持つ全ての『世界樹の化身』達が、距離など関係なくまとめて実体化する事になる。
そしてそれを使えば、効果を解除しない限り☆5『反転の鏡』はその機能を大きく失い、『スキル倉庫』に収納する事も出来なくなる…………と。
「…………世界樹の協力が得られて、しかもこれには『運命神』まで関わっている。やらないって選択肢は無いな」
「では、そのことを世界樹様方に伝えて来ましょう」
「どうせなら他の者もいた方が良かろう。アレス達にチャットを送るぞ」
そう言って『フレンド・チャット』を開いて仲間達に一斉送信をするドゥルク。すっかりチャットの扱いになれちゃっているな。スマホを使いこなしている爺さんみたいだ。
そして、俺の仲間が集まった広いホールに、『世界樹の化身』達もぞくぞくと集まった。今集まっているだけで百人を越えている。こんなにいるのかとウンザリした気持ちにもなるが、これでまだ全員と言う訳ではないらしい。
あれ? 今なんか、世界樹の中に子供の姿が見えた気がした。でもすぐに他の世界樹達が現れたせいで埋もれて見えなくなってしまった。
子供の世界樹か? いやでも、黒髪だったぞ? それになんか、見覚えがある顔だったような…………?
集まった世界樹達を見ても黒髪の世界樹はいない。大体が金髪や緑色の髪をしている。うーーん、見間違い…………って事は無いと思うが…………?
『集まったわよ! 本当に私達全員を実体化してくれるのね?』
『さっきみたいに一時的にじゃなくてずっと実体化できるらしいわよ?』
『楽しみ! 凄く楽しみね!』
『私、色んな服を着てみたい!』
『私は色んな物を食べてみたい!』
『お化粧と言うのも良さそうね!』
『でも、人間は何をするにもお金が必要なのよ?』
『それならエルフに私達の素材を買って貰えばいいのよ。今まで散々あげて来たんだから嫌とは言わないでしょ?』
そんな世界樹達の言葉を聞いてエルフの長老達が『えっ!?』って顔をしている。
その顔を見て何となく解ったのだが、エルフ達は現金の持ち合わせが少ないのだ。何故なら、エルフは基本、レプラコーンとの物々交換しかしてないからである。
これはちょっと金を分けてあげた方がいいだろうと思い、それを頼もうと仲間の方を見ると、俺と目が合ったシエラが頷き、イマメルバーンに声をかけて部屋を出て行った。
アイコンタクトだけで通じたのか? と、少し不安だったのだが、それは杞憂だった。イマメルバーンはシエラに現金を融通して貰ったらしく、気が楽になったような笑顔で戻って来たからだ。
これでエルフ達も世界樹からの要求に答えられそうなので、いよいよ実体化に入る。
☆5『反転の鏡』に世界樹の代表者となった、『エルフの里』の世界樹を映し、『反転の鏡』の宝玉を四つ消費する。そして…………!
「いくぞ! …………『流転』!!」
俺がスキルを発動した瞬間、☆5『反転の鏡』に付いていた四つの宝玉が砕け散り、その場にいた…………いや、おそらくは世界中の『世界樹の化身』が一気に実体を得た!
『やったーーーーっ!!』
『体よ! 体があるわ!!』
『さっそく食事よ! 何か用意して!!』
『私は化粧品を試したいわ!!』
『何を言っているの! まずは服よ!!』
…………などなど。姦しいとは正にこの事か。
実体化した世界樹達に迫られて、右往左往しているエルフ達に、見かねた俺の仲間達が加わって世界樹達を誘導していった。チャットで送られて来た内容によると、少し部屋毎に分けて対処しやすくするのだと言う。
そして、嵐のような世界樹達が去ったその部屋に、一人ポツンと残る世界樹がいた。
黒髪黒目で、まるで小学低学年のような少年だ。やはりさっきのアレは見間違いではなかったのだな、と少年を見て、俺は首を傾げた。
それは、その少年の顔に何だか見覚えがあったからだ。…………いや、って言うか、俺じゃね?
そう、その世界樹の少年は、子供の頃の俺にソックリだったのだ。