作品タイトル不明
445回目 エルフの島の上空にて
「ま、まさかドラゴンに乗る日が来ようとは…………! だ、大丈夫なのですね!? 落とされたり食べられたりしませんよね!?」
「グラックは人なんて食べませんよ。大好物はシュークリームなんですから」
『キュァーーッ!』
俺とモメットが二人で乗れる程に大きくなったが、グラックは『シュークリーム』という単語に反応して可愛く鳴いた。はいはい、後であげるからな。
「そ、それにしても宝石のようなドラゴンとは…………! お仲間も乗っているようですが、私はこんなドラゴンがいるなど聞いた事がありません。ガモン殿のお仲間は、皆ドラゴンに乗るのですか?」
「いや、まだ全員と言う訳ではありませんね」
まぁしかし、俺達のジュエルドラゴンを見て羨ましくなった仲間達は、ほとんど全員が☆5『ジュエルドラゴン制作キット』を使ってジュエルドラゴンを所持している。そのほとんどがまだ大きくなれないドラゴン達なので、乗れるまでになるにはまだ時間が掛かるだろう。
エルフの住む島に降りるジュエルドラゴンは四体。俺の『グラック』とアレスの『リュウゼン』、ティアナの『フリージア』にカーネリアの『セキ』だ。
そして俺の後ろにはモメットが乗り、アレスの後ろにはバルタが、ティアナの後ろにシエラが乗り、カーネリアの後ろにはトレマとイオスが乗っていた。
つまり俺のパーティー『G・マイスター』のメンバーに、バルタ兄妹がついて来た形だ。
たまたま俺達がエルフに会いに行くと知ったトレマとイオスが、エルフに会いたいと言い、妹達に甘いバルタに頼まれてこうなった訳だ。
「お待ちなさい、外の者達よ」
その声は、俺達がエルフの住む島に近づいた時にどこからともなく聞こえ、その一瞬後にはその声の主だと思われる壮年のエルフの男性が、宙に浮いた状態で現れた。
急に、そして当たり前のように空中に出て来たな。これがエルフか…………。魔力量が随一の精霊種族ってのは伊達じゃないな。
「イマメルバーン様!!」
「イマ…………? えっと、知り合いのエルフですか? モメット殿」
「ん? モメットではないか。先日ぶりだな」
突然、空中に現れたエルフはどうやらモメットと顔見知りらしかった。…………確かモメットって、エルフに会うのは十数年ぶりと言ってたよな? それを先日ぶりって言ったか?
モメットの言う通り、エルフの時間感覚は少しおかしいようだ。
「フム。我らエルフの島に近づいた者に警告がてら、その顔を見に来たのだが、モメットがいるとは予想外だったな。…………まぁいい。警告だ外の者共よ。この先には我らエルフが長年をかけて編み込んだ結界が張ってある。不用意に近づくと命は無いぞ」
そのエルフの言葉に思わず振り返ってモメットを見ると、モメットもこの先の結界の事は知らなかったのか、首を横に振った。
「イマメルバーン様! お願いします! どうか通しては頂けませんか!?」
「…………なにか事情があるようだが、それを聞く訳にはいかないな。正規のルートで出直して来るが良い。その時はその人間達共々、里に招いてやろう」
「ちょっと待って貰えますか。こちらにもこう言うのがあるんで」
踵を返したイマメルバーンに消えそうな気配を感じた俺は、アルジャーノンから預かった紹介状を出してイマメルバーンを引き留めた。
「うん? その手紙から感じる魔力は…………。 外から来た者よ、その手紙を良く見せて貰おう」
「はい、どうぞ」
イマメルバーンは俺から手紙を受け取ると、そのアルジャーノンからの紹介状をよく読んでから顔を上げた。
「…………まさかアルジャーノン様の紹介状を持って来る人間がいるとは…………。アルジャーノン様の紹介では、我々に否やは無い。だが、ひとつ確認はさせて貰おう」
「確認、ですか」
「なに、簡単な事だ。アルジャーノン様が紹介状を書く程の者ならば、アルジャーノン様のフルネームを聞いているだろう。答えてみてくれ」
「うっ…………!?」
アルジャーノンのフルネーム!? …………あーー、いや確かに聞いた覚えがあるな。…………あるにはあるけども…………なんだったかな?
「…………あーーと、一度聞いただけなので…………」
「ならばまた次の機会に。紹介状は無効とはならないので、アルジャーノン様にフルネームを確認して来るといい。手間をかけるが、歴史を考えると我々エルフも無警戒ではいられないのでな」
仕方ない。こうなったら『フレンド・チャット』でアルジャーノンに教えて貰うか。などと考えた時、意外な事に助け船が来た。
「アルジャーノン=メルディロッタ=パスフィミア=エルミウィット。ですぜ、ガモンの旦那」
「バルタ!? お前、覚えてたの!? 一度しか聞いてない長い名前を!?」
「あっしもこれで、お偉いお貴族様に仕えていやしたんでね。こういった名前で家名まで覚えるのは、貴族に仕える者の嗜みでさぁ」
なんと、俺と同じく一度しか聞いていなかったバルタが、あのアルジャーノンの長いフルネームを覚えていたのだ。
「…………ウム、確かにアルジャーノン様との交流があるようだ。…………失礼した事を詫びる。結界の一部に穴を開けるから、私の後について来てくれ」
こうして俺達は、イマメルバーンの案内で島へと入る事が出来たのだった。