軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

446回目 遠目から見た世界樹

壮年のエルフ『イマメルバーン』の後に続いて、ジュエルドラゴンに乗った俺達は島の周囲を護る岩壁の前へと降りていく。

俺達が降りた飛空艇『アベルカイン』は、上空に残したままで待機である。ここが普通の海なら降ろしても良かったのだが、エルフの住む島の周辺海域は広く海竜や海獣の巣になっているらしいので、空の方が安全なのだ。

エルフの里にあまり長居する気はないが、長くなりそうだったらチャットで連絡して『レナスティア』に一度帰す事も考えないといけないな。まぁそれも、エルフの里に行ってみてからの心配だ。

「ここだ。ついて来たまえ」

イマメルバーンはそう言うと、何の変哲も無い岩壁に無造作に入って行った。

「壁に入った? 幻なのか?」

「いえ違うわ。よく見て、あれは樹木魔法だって私の☆5『虹色魔晶石のブローチ』が教えてくれているわ」

カーネリアの言葉にイマメルバーンが通った所をよく見ると、岩壁を貫く形で木の根が飛び出していた。そしてグラックに乗った俺が近づくと、グラックごと通れるように根が岩壁を押し広げ、洞窟のようなトンネルを作ってくれた。

「これは世界樹の根です。世界樹はそれがどんなに硬い岩盤でも無理なく貫くと言われています。それに世界樹には意思もあるので、世話をしてくれるエルフ様の願いを聞いてくれているのでしょう」

「…………マジでか」

エルフや世界樹の事を俺達よりよく知るモメットがそう言うなら、そうなのだろう。ほんの少し恐怖もあるが、俺は涼しい顔で通って行ったイマメルバーンに続いてトンネルを通り抜ける。

トンネルを抜けて見えて来た色は緑。島の中心にある雲が掛かった円柱のような岩山を除けば、その他の全てが森の中に埋もれていた。

「おおっ? ここがエルフの島なのか。見事に一面森だな。こんな深い森の中に集落があるのですか?」

「我らの集落は世界樹の麓から世界樹の表面と、後はウロの中だ」

「世界樹…………。世界樹と言うからには大きいかと思っていたのですが、そうでもないのですか? それらしい木が見当たりませんが?」

「…………何をいっている。あんなに目立つ物が見えないのか?」

そう言ってイマメルバーンが指指したのは、島の中心にある雲の掛かった岩山だ。

「…………うん?」

…………言われた瞬間は理解出来なかった。だって俺にはそれが、岩山にしか見えていなかったから。しかし、イマメルバーンに案内されて岩山に近づく事で、俺はやっと理解した。

それが『岩山』などでなく、とてつもなく巨大な樹木の幹なのだという事を。

「え? …………はあぁっ? あれ木か!? 世界樹って、もしかしてあの岩山の事か!?」

「フム。やはりあれでは世界樹の偉大さは伝わらぬか。いかにもアレが世界樹だ。世界樹は今も成長を続けており、放っておいたなら星を飛び出し宇宙まで伸びるからな。ああして上部に異空間へと繋がる扉を開き、異空間の中で存分に伸びてもらっている」

つまり、あの渦巻いていた薄い雲が異空間への入口であり、世界樹はその中で大きく広がっているのか。うへぇ…………。スケールが大き過ぎて訳が解らないな。

俺の想像を越えてきた世界樹のスケールに驚愕しつつも、俺達はエルフの里までやって来た。

そしてそこでも、俺は驚きに包まれた。

「す、凄いなこれ。こんなの初めて見たぞ…………」

「エルフ様の里は、世界樹と共にあるので、その全てが世界樹で出来ております。人間であるガモン殿には、違和感のある光景なのでしょうね」

ジュエルドラゴンから降りて、エルフの里をモメットの説明を受けつつ歩いた。

ここの家々は特殊な形状をしていて、俺達を驚かせてくれた。

ザックリと家の形状を言うならば木製の丸みを帯びた家だ。だが、ただの木製ではない。言うなれば『世界樹製』だ。

ここにある多くの建物は、地面から生えた世界樹の根が、縦横無尽に張り巡らされて家の形を成している。その特殊な形成の為か、それらの家は少し宙に浮いた様になっており、地面から家の玄関に向かう所には階段があった。…………その階段はキノコで出来ていたが。

ちなみに、窓ガラスらしき物もあった。流石にこれは人の手で作った物かと思いきや、それは世界樹の樹液を薄く伸ばして形成される、硬さを持つシャボン玉のような物であるらしい。

「改めて、ようこそエルフの里へ。長老会の一人として、アルジャーノン様から紹介を受けた君達を歓迎する。まずは私の家に来ると良い。この里には宿屋など無いし、他の長老達がもてなせるとも思えんのでな」

「長老会?」

地面に降りる事なく、空中に浮いたままで先に進むイマメルバーンに歩きでついて行きながら、俺は隣を歩くモメットに説明を求めた。

「ああ、エルフ様方は長寿なので、長老と呼ばれる程に年月を重ねた方々が多いのですよ。それに加えて、おおらかに過ぎる性格と時間に生きておりますので、長老は『何か問題が起きた時に動ける者』が責任をもってあたると、大雑把な取り決めがあるのです」

…………つまり、あのイマメルバーンはその『長老会』に名を連ねる程のエルフで、たまたま今、手が空いていたから俺達の相手をしている訳か。

…………長老は分かるが『長老会』ねぇ。なんで長老が一人じゃダメなのか、よく解らないな。