作品タイトル不明
433回目 第三王子コウハキン
死ぬほど酒を飲んで死ぬほど騒いで、そして二日酔いの中でシエラ達にしこたま怒られた次の日。
ドワーフの里のドアルガンの私室には、部屋の主たるドアルガンに招待されて、俺とバゴス王国の第三王子であるコウハキン王子と、その護衛であるダイキョ=ウーキンが今後の事を話し合っていた。
ドアルガン率いるドワーフ達は、全員まとめて『レナスティア』にある『鉱山の浮島』に移住する事になった。
その数、総勢三千人。地球にいた頃の感覚だと少ないようにも感じるが、ドワーフは長命種らしいから、これで普通らしい。それに、ここ以外にもドワーフはいるらしいからな。
「鉱石類の採取と武器や防具、それにアクセサリーの製作なんかはワシらに任せておけ、本職じゃからな。後は、この火山地帯の管理じゃが…………」
「ああ、それはバゴス王国の方で面倒を見てくれるさ。一応ここ、バゴス王国の領土だからな」
「ええっ!? いやあの、確かにここは我が国の領土となっていますが、ドワーフの方とは基本的に不可侵でやって来たんです。それに俺達は、ここが『神獣』の背中だってのも初耳だったんですよ? それをいきなり管理しろと言われても…………」
まあね、いくら自国の領土だと言われても、その場所が実は『神獣』の背中でした、なんて言われたら戸惑うよね。しかもついこの間、バゴス王国はその神獣の背中の端っこで『魔王』と戦って封印しているのだ。…………『神獣』の背中にな。後から言われるとこれ程キツイ事もないだろう。
「安心しろ、ここは神獣の背中でもあるがワシらの故郷でもある。何かあれば、傍観なんて不義理な真似はしねぇよ。それに、ここにいる兄弟だって神獣は専門だからな、相談には乗るだろ」
「まぁ相談には乗るさ。…………コウハキン王子、俺達は必ず来る『方舟』との戦いに向けて戦力も欲しています。『方舟』との戦いへの協力関係を結んでくれるなら、俺も色々と協力しますよ」
「おう、なんならワシらと兄弟の杯も交わすか? 軽々しくやるもんじゃねぇが、ここの管理を任せるならワシらと杯を交わすに相応しい漢じゃねぇと困るんでな、鍛えてやるぜ?」
そう言いながらクイッと酒を飲む真似をするドアルガン。鍛えるって酒の飲み方かよ。コウハキンの歳であんだけ飲んだらアル中になってしまうだろうが。
「取り敢えず、俺はコウハキン王子やそこのダイキョ殿とはフレンドになって繋がりを持とうとは思っていますが、コウハキン王子が望むなら杯を交わしてもいいですよ。…………まぁ俺の場合、杯ってのはフレンドより少し強い繋り、程度の意味しかありませんけど。ドアルガンには悪いけどな」
「杯はワシらの流儀だからな、それでいいさ。ワシが信念を貫きゃいいだけの話だ」
相変わらず侠気溢れるオヤジである。
「うぅ…………、お二人と繋りを作れるなら、それはとても魅力的な話なのですが、俺は第三王子ですので、それをすると兄上達に余計な勘繰りをされそうなので…………」
あぁ、確かに第三王子と言う立場で俺達と強い繋がりを作ると、結構大変な事になりそうだ。御家騒動って意味で。
「俺は、別に王位が欲しいとは…………。いえ、内乱を起こしてまで王位を狙おうとは思ってません。兄上達の下についたとしても、民の為に出来る事は少なくないと思うので…………」
「…………民が一番で自分は二の次か。まぁワシはその考え自体は嫌いじゃねぇがよぉ、…………ちょいとな。いや、批判してる訳じゃねぇんだぜ? その兄貴達ってのが優秀だってんなら、任せるべきだとも思うしな」
「兄上達か…………」
自分の兄貴達に何か思う所でもあるのか、コウハキンは少し顔をしかめた。
「…………王子、よいではありませんか。コウハキン王子が王太子となって下さるならば、我ら一同、筋繊維の最後の一本が千切れるまで、戦い抜いて見せます!!」
「よさないか、ダイキョ」
「ですが! 第一王子たるドーピン様は神聖な筋肉を薬に頼り、第二王子たるチーデイ様は筋肉など見る影もないほどブクブクに…………!」
「よせと言っている! 兄上達には兄上達の考えがあるのだ! それにドーピン兄上は父上よりも立派な筋肉をしているではないか!! それ以上は不敬罪とするぞ!!」
「うぅ…………!!」
「…………見苦しい物をお見せしてしまい、申し訳ありません」
…………見苦しいも何も、途中から筋肉の話になったからポカーンとしてしまったけど?
しかし、よく分からない会話ではあったが、ダイキョが二人の王子を批判した時に、コウハキンは両手を強く握りしめていた。そこから察するに、二人の王子はあまり良い王子とは言えないのかも知れない。
まあでも、コウハキンが何と言おうと、俺は見も知らない王子達とフレンドになったりはしない。その事を伝えると、コウハキンは頭を抱えて悩んだあげく、意を決して俺とフレンドになった。
ついでに、コウハキンが信頼出来る騎士団として、ダイキョが率いる『ダイキョ筋肉小隊』もフレンドになった。…………なんで筋肉って入っているのかは知らない。聞いたりもしない。
とにかく、第三王子と言う微妙な立場にいる以上、コウハキンにも色々とあるのだろうが、俺とフレンドになった事でチャットも出来るようになったし、何かあれば相談には乗るとしよう。