軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35回目 緊急クエストの開始

緊急クエストの期日があと二日となった今日。俺達はオークキングとフォレストウルフの群れを殲滅すべく、ソエナ村の近くにある森へと移動した。

移動方法は馬だ。箱馬車をそのままマジックバッグへと収納し、馬車を引いていた二頭の馬に二手に別れて乗っているのだ。

…………いやまあ、その気になればソエナ村から馬を借りることは出来たのだが、俺が一人では馬に乗れないので、俺はバルタの後ろに乗っている。

「森に着いたら、この馬達は木に繋いで置いていくんだろ? 大丈夫なのか?」

「繋ぐと言っても魔法で繋ぎやすんで移動範囲は広いんですぜ。コイツらならある程度自由に動ければ、そこいらのモンスターになんざ負けやせんぜ」

「「ブルルルルッ!!」」

バルタの言葉に「その通りだ」とでも返事をするように、馬達が嘶いた。まあ確かに、この馬達は道中でもモンスターを踏み殺していたらしいし、バルタがそう言うなら大丈夫なのだろう。

それからしばらくして俺達が森の入り口に到着すると、バルタが魔法の鎖を出して木へと馬を繋いだ。この鎖は必要に応じて伸び、最大10メートル程まで行動出来る代物らしい。しかも鎖の部分には実体がなく、手で触ろうとしてもすり抜けてしまう。これなら走り回っても邪魔にはならない訳だ。

「…………さて、ここからが本番だ。二人共、気を抜くなよ!」

「へい! 任せてくだせぇ!」

「ぉ、おう!」

「「……………………」」

ティムの檄に、俺は気合いを入れたつもりだったが、声が妙に裏返ってしまった。そして、その事で俺が極度に緊張している事実に気づいたティムとバルタは、無言で俺の背後に回って俺の背中をバシバシと叩いた。

「いっ! 痛ぇよ! 何すんだ!」

「鎧の上なんだから、痛くないだろ。気を抜くのは良くないが、気負い過ぎも良くないぞ?」

「若様の言う通りでさぁ! 旦那、もうちょい気楽に行きやしょうや! なぁに、若様とあっしが居れば負けはありやせんぜ! 旦那は作戦通り、トドメを刺す事に集中してくだせぇ!」

「お、おう。わかったよ…………」

今回の作戦、その肝になるのはバルタである。

まず俺達は普通に森に入る。

そしてバルタの索敵にオークキングとフォレストウルフの群れが引っ掛かると同時に、バルタが自前のスキルと☆4装備『擬態のマント』のスキルを使って姿を隠す。バルタによれば、これ以降バルタは木の上の住人となり、気配を消したまま移動を繰り返すらしい。

残された俺達の役目はと言うと、森を進みながら盾に剣を打ち鳴らし、わざとオークキングとフォレストウルフの群れに発見される。

いわゆる囮役だ。

俺達に気づいて迫るモンスターを、俺は前に立ったまま囮として引き付ける。そこをティムが氷魔弾の弓で迎撃し、射ち漏らしはバルタがひのきの棒の『気絶』スキルを乗せたスリングショットで撃ち抜いて気絶させていく。

そしたら俺は、敵に注意しながら気絶する敵にトドメを刺していくのである。

そう、俺の役目は囮とトドメを刺していく事で、基本的に戦うのはティムとバルタだ。話し合いの結果、これが今のベストと言う事になった。

一見、俺は足手まといのようではあるが、俺には弓を撃つことに集中するティムを『反撃の盾』を使って護るという役目もあり、更にはまだ熟練度は溜まりきってないが、回復系スキルの『癒しの光』が使える癒しの杖で、仲間や自分を回復する役割もある。

癒しの杖自体はティムがもう一本もっているので、これで回復役は二人となった。まあ、気休め程度ではあるけれど。

さらに、俺達は俺のスキル『ガチャ・マイスター』の中で新たに見つけた機能『パーティー編成』でパーティーを組んでおり、パーティー機能の特性として、パーティーメンバーならば距離に関係なく、その姿が見えていなかったとしても回復が届くという利点もあるのだ。

まあ、それは『ガチャ・マイスター』を持っている俺だけの特性であり、ティムの回復スキルは、手が届く場所までが有効範囲である。

ちなみにパーティーのリーダーは俺である。と言うか、スキルのパーティー機能ではリーダーが俺で固定だったのだ。

さらにパーティーの効果として、『俺が持つスキルの内から二つをパーティーメンバーにも付与する』というのがあったので、ティムとバルタには俺が装備しているスキルから『反撃(極小)』と『気合い』を付与した。無いよりはマシだろう。

「……………………!!」

と、森の中を先頭で進んでいたバルタが手を上げて俺達の動きを止めた。そして顔は正面を向いたままで『フレンド・チャット』を開いた。

◇バルタ

《探知スキルに敵が引っ掛かりやした。この前方やや左、だいたい五百メートルってとこで集まってまさぁ》

◇ガモン

《了解。もうしばらく進んだら盾を鳴らすよ》

◇バルタ

《いや、もう少し左に抜けやしょう。そっちにある開けた場所が、戦いやすそうなんで》

◇ティム

《なら、そこまで行ってからにしよう。バルタはもう気配を消しといた方がいいよ》

◇バルタ

《へい。そうさせて貰いやす。ご武運を》

そこで会話を終わらせて、バルタは擬態のマントのフードを被って気配を消した。

それはまるで、その場からスゥーーと薄れて消えるかのようであり、更にはバルタの重みで倒れていた草が元に戻った。

何の音もしなかったが、当初からの作戦通り、バルタは木の上へと移動したのだろう。だが、もはや俺の眼では、バルタの姿を捉えるのは無理だと解った。一流の斥候職とはここまで凄いのか。

流石は『影纏い』のバルタだ。二つ名付きは伊達じゃない訳だ。