軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36回目 まずはゴブリン、そしてオーク

「ウオラァーーーーッ!!」

ガンガンと盾を打ち鳴らしながら雄叫びを上げる。

これは『ウォークライ』という技術で、索敵においては有利な地形に敵を呼び寄せ、戦いにおいては自らと仲間を鼓舞し敵を怯ませる、れっきとした技である。

「うーん、まだ照れがあるね。戦いに入るウォークライは気合いの雄叫びだよ。もっと腹から声を上げるのさ。こんな風にね! …………スゥーー…………! ウオォーーーーラァッ!!!!」

俺のウォークライにダメ出しをするだけあって、ティムのウォークライは周囲の空気を震わせる程の雄叫びだった。

そしてティムの雄叫びに応えるように正面の茂みがガサガサと揺れ、そこから五体のゴブリンが飛び出した!

「ゴブリンかよ!?」

「別に不思議じゃないさ! オークの群れが奴隷としてゴブリンを使うのは珍しくない! コイツらは偵察隊だ!」

言いながらティムは氷の矢を連続で放ち、その矢は二体のゴブリンの首を貫いて即死させた。俺もまた、自分に向かって来たゴブリンの一撃を反撃の盾でいなし、銅の剣でそのゴブリンの首を跳ねた。

そして残る二体へと眼を向けると、その二体はビクンッと体を硬直させると、そのまま地面に倒れた。これは恐らく、バルタの仕業だろう。倒れたゴブリンの背中から、めり込んでいた丸い玉が落ちて消えた事からも間違いない。あれがスリングショットで撃ち出された衝撃の弾丸だろう。

「ガモン! トドメだ!!」

「お、おう!」

ティムの叱責を受け、俺は倒れた二体のゴブリンへとトドメを刺した。バルタが倒したコイツらは気絶しているだけなので、トドメが必要なのだ。

クソッ! もっとしっかりしないといけない。今は戦闘中なんだ、呆けている暇なんてない。物事に即座に反応できなきゃ、隙を突かれてアッサリ死ぬのだ。

「ガモン! オークが来るよ、三体だ。少し離れたところにフォレストウルフも…………。いや、そっちはバルタが始末する」

「了解!」

どうやらバルタがフレンド・チャットを使ってティムに状況を伝えているらしい。リアルタイムで情報を伝えられるって、やっぱ便利だな。

俺は銅の剣を鞘に収め、両手で反撃の盾を構えた。オークはゴブリンの何倍もの膂力を誇る。数体のオークを相手にする時は、盾で捌く事にだけ集中し、攻撃はティムとバルタに任せると話はついているのだ。

『ブォホホホッ!!』

重低音でいななきながら、三体のオークが姿を見せた。その手には、丸太を持ち手の所だけ削ったような無骨な棍棒を手にしており、そのうちの一体はデカイ骨を武器にしていた。

『ブォホホッ!!』

『ブォホォッ!!』

「ぐぅっ!!」

振り下ろされる棍棒は躱し、横凪ぎに払われる棍棒は腰を下ろして盾を斜めにして上へと受け流す。

「うおおぉぉっ!? 怖ぇぇっ!?」

『ブギィィッ!! …………ブフォッ!?』

オークの棍棒が、俺が持つ反撃の盾を掠めると、攻撃してきたオークの体がビクンッと震える。これは反撃の盾が持つスキル『反撃(極小)』の効果で、オークの体に一瞬だけ電撃のような衝撃が加わるのだ。

この『反撃(極小)』の効果は俺も訓練の時に体験してみた。攻撃の威力にもよるのだろうけど、それはダメージと言える程の物ではない。ただ、予想外の衝撃が体に走れば、動きが止まるのは道理。例えそれが一瞬だとしても、氷の矢を構えるティムにとってはそれは十分な隙である。

『ブキィィッ!?』

ティムの放った氷の矢を首に受けて、オークの一体が倒れる。そしてそれに他のオークが驚いた隙にもう一体の首にも氷の矢が突き刺さった。

氷の矢は刺さった周囲も凍らせるため、二体のオークは、即死はしなくても呼吸が止まり死んでいく。そして大きな骨を武器としていたオークは不利を悟ったのか背中を向けて逃げ出した。

しかし、それを見逃すティムではない。すぐにその背中に向けて放った氷の矢が命中し、倒れた所に木の上から飛び降りてきたバルタがトドメを刺した。

「バルタ!」

「取り敢えず、前哨戦は終わりでさぁ。この奥で結構な数の大群を見つけやしたんで、情報を共有しやすぜ」

「ここでか? 大丈夫なのか」

「警戒はしてやしたが、偵察隊を出した以上、奴らは様子見しやすぜ。こっちは一匹も逃がしてやせんからね。つまりは、今の内でさぁ」

バルタは、一匹だけこちらに来ていたフォレストウルフをあっさり仕留めて、オークキングが率いる群れが築いた陣地を見てきたのだと言う。

「オークキングも見やしたが、ありゃ若いですぜ。おそらくダンジョンコアを潰したのは、まだ大人に成りきれていない子供だったんだと思いやす。あれならオークキングは驚異になりやせん。問題はフォレストウルフに上位個体がいた事でさぁ」

「なっ!? 間違いないのかバルタ、フォレストウルフの上位っていったらシャドウウルフだろ! こんな場所に居ていい個体じゃないぞ!?」

「正確にはシャドウウルフの成りかけが居やした。おそらく、オークがダンジョンコアを潰した時に側にいたヤツだと推測しやす。ソイツだけ、他のフォレストウルフとは毛色が違いやしたからね」

バルタの話を噛み砕いてまとめると。

オークの子供がダンジョンコアを潰した時に近くにいたフォレストウルフが、消えていくダンジョンのエネルギーを吸収しシャドウウルフ…………の成りかけへと変化した。

なぜそんな事になったのかと言うと、バルタの推測ではダンジョンのエネルギーを全て取り込むには、オークが幼すぎたからであり、オークに入り切らなかったエネルギーがフォレストウルフへと向かった結果だと言う。

進化が途中で止まる。これはモンスターにとっては、とんでもなく苦しい事らしい。魂ごと行われる変化が途中で止まるのだ。それは想像を絶する気持ち悪さだろう。

「このシャドウウルフが、宿場町近くの森からフォレストウルフを移動させた張本人ですぜ。力で押さえつけ、無理やり従えているのが丸わかりでやした。狙いはやはりオークキングでしょうね。オークキングが死んだ所を喰らって力を取り込み、完全なシャドウウルフに成るつもりでしょうぜ」

この緊急クエストは、余計に厄介な方向へ進んでいるようだ。