作品タイトル不明
122回目 乱戦・VSアンデッド
『オオォォォ…………』
『ヒヒヒヒヒ…………』
『…………ギギィィ…………』
声ともならない呻き声をあげて迫るアンデッドを、ボウガンから撃ち出す『回復の弾丸(+4)』から作った矢で撃ち抜いていく。
数体をまとめて貫く回復の矢は、その存在が消える時にキラキラとしたエフェクトを出すのだが、そのキラキラに触れたアンデッドも苦しいのか少しだけ動きが止まる。どうやらアンデッドの弱点が『回復』ってのはゲームだけの話じゃないようだ。マジで効いてる。
だが、俺とトルテが撃ち出す回復の矢よりも大活躍しているのは、バルタだ。
バルタが『スリングショット』で撃ち出す回復弾は、ビー玉程度の玉なのに何故か俺やトルテの撃ち出す回復の矢よりも貫通力がある。しかも跳弾して軌道を変えつつ効率よくアンデッドを撃ち抜いていくのだ。
俺やトルテのボウガンが弦を引いて固定する動作(矢は自動装填)が必要なのに対して、バルタはスリングショットを引き絞るだけでいいのもポイントだろう。メッチャ速い。何せバルタの『回復の弾丸+4』は、すでに二箱目だからな。つまりもう百発を撃ち切っている。
「ザコ相手に+4はちょっと過剰ですぜ! +2をくだせぇ!!」
「お、おう!」
バルタに言われて『回復の弾丸(+2)』を渡すと、撃ち出された弾丸が消えてしまうまでの間隔こそ短くなったが、貫通力は変わらない。確かにここのアンデッドなら+2でも大丈夫そうだ。強化率を変えた物を用意しておいて良かった。これで少しは弾の消費を抑えられるかも知れない。
トルテはもう一心不乱にアンデッドを倒しながら救助者のいる岩の柱を目指しているから無理だが、俺が使う『回復の弾丸』は+4から+2に変えた。うん、俺が使う場合でも+2で大丈夫そうだ。
戦闘は、俺達が優勢のまま進んでいく。
確かにアンデッドの数は多いのだが、武器の性能とバルタがうまく敵を分断しては撃破していくので戦い易い。ティムとアレスの方も、そろそろ決着がつきそうだ。
俺達の攻撃によって倒されたアンデッドは、次々と黒い霧になってはダンジョンに吸収されていく。地上で倒したアンデッドは死体が残り、シエラが魔法で消し去っていたが、ダンジョンの中で倒したモンスターはドロップアイテムと魔石を残して消えてしまう。
なので床にはスケルトンが落とした骨や牙、ゾンビが落とすコインにロウソク、レイスが落とした水晶などと、それぞれが落とした数々の魔石が転がっている。
これらはモンスターから剥ぎ取る素材と一緒で利用価値があるため、ギルドなどで買い取って貰えるが、そのまま放置しておくとダンジョンに吸収されて消えてしまう。
ちなみにモンスターにやられた冒険者の遺体なんかも、時間が経つと消えるらしい。ただし、ダンジョン産でない物は吸収するのに時間が掛かるため、大体七日程度ならダンジョンに残されているそうだ。…………モンスターに荒らされていなければ。
そして当然だが、今の俺達はドロップアイテムや魔石を拾う気がない。俺だって気にならない訳ではないが、そんなのに気を取られていられないのだ。
…………でも、戦闘が終わったら二・三個だけ拾わせて貰おう。
「兄ちゃん! そこにいるのか!?」
アンデッドとの戦闘による騒音によってかき消されていたトルテの声が、たまたま訪れた一瞬の静寂の中で響いた。
「トルテ!? おい、まさかトルテか!? なんで来たんだ!! ここはヤバイ! 早く逃げろ!!」
「兄ちゃん! 兄ちゃんだな!? 助けに来たんだ!!」
俺達の攻撃によってアンデッドの数がどんどん減っていく中で、壁際に何本も密集して立っている岩の柱が見えてきた。
その中に兄の姿を確認したのか、トルテが脇目も振らずに真っ直ぐ走って行く。
「クソッ! トルテのやつ、周りが見えてねぇ! シエラ! トルテの援護を頼む!!」
「はい!! エリアヒール!!」
「みんな! 岩の柱まで走れ!!」
「「おう!!」」
シエラのエリアヒールでザッパ達のいる岩の柱までの道を開き、俺達は集まって岩の柱を背にした。
そして、そこから部屋全体へと広げるように、全力で攻撃を繰り返す。すでに救助対象であったザッパ達を背にしているのでなんの遠慮もいらない。
これまでは間違ってもザッパ達に攻撃を当てない様にと威力をセーブしていたティムとアレスも本気で暴れ始め、広い部屋の中を埋め尽くしていたアンデッドが完全に駆逐されるまでに、それから大して時間は掛からなかった。
「トルテ!!」
「兄ちゃん!! 良かった! 無事で!!」
「ほ、本当に助かったのか…………?」
「あれだけいたアンデッドが全部いないよ。助かった、助かったんだ…………!」
ザッパの仲間の魔法使いが、魔法で作り出した岩の柱をすべて崩すと、中から出てきたザッパにトルテが突進して抱きついた。その後ろからザッパの仲間である二人が出て来た。確か名前はベベントとブームンだったか。その二人も疲弊はしている様子だが無事のようだ。
取り敢えずトルテの兄貴達を助け出せたのは良かった。ザッパトルテ兄弟の再会の抱擁は、その後もしばらく続いていた。