軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53

翌日、トローリングの準備をしているとロッコに肩を叩かれた。

「今日はお前は2点鐘が鳴ったらこっちはいいから剣術に行ってこい」

「ああ、はい。長官からも言われてます。結構な人数が参加するんですか?」

「手の空いてる奴が集まるんだが半数くらいかな。お前、その様子だと剣の練習とかしてこなかっただろ?」

「ええ。枝切れでチャンバラごっこくらいはしたことありますけどそういうことじゃないですよね?」

「ああ。アカデミーに入るのに剣術のテストは無いんだが、卒業には剣術の試験がある。剣術ばっかりは早くに始めた奴の方が有利なんだ」

「それはそうなんでしょうけど、僕に必要なんですかね?」

正直余り気が進まない。

木の棒で殴られたりするのだろうが、痛いのは嫌いなのだ。

そもそも、こちらを負かそうとする人間に対峙すること自体に苦手意識がある。

敵意剥き出しの人に出会うと夢見が悪い。

達人のおじいちゃんとかが指南してくれるならやらないでは無いが、俺に恥のひとつでもかかせてやろうという輩が混じってるなかで荒々しい稽古とかだとヤバそうな気配がビンビンする。

「長官の御付きといえど、これから軍の人間と付き合っていく事になるんだ。軍では基本的に階級と配属年数で上下関係が決まるが、剣術の腕があるかないかでもかなり扱いが変わるんだ。強い奴はそれだけで尊敬される」

なるほどなあ。

スクールカーストみたいな上下関係ってどこにでも在るからな。

俺の中学時代は走るのが遅くてもゲームが上手ければ男連中の中で尊敬されることはあったが、やっぱり女にモテるのは脚の速い奴だった。

「お前は魔術が使えるからどうしても必要って訳じゃないが、とりあえず1回見てこい」

「そうですね、じゃあ鐘が鳴ったら行ってきます。ところで剣術の稽古のある日とか時間とか決まってるんですか?」

「特に決まってはいないが悪天候でなければ毎日2回目の2点鐘後だ。櫂組はずっと暇ならずっとやってる。ここんとこやってなかったのは体調不良が多くてやってられなかったからだよ。無理を押して参加する奴が絶えなかったから船長に禁止されたんだ」

なるほど。やたらとみんな寝てたもんな。本来なら暇な時間は全部剣術の稽古か。軍人だもんな。

「心配しなくていいぞ。お前みたいな小僧っ子を叩きのめしても全然威張れねえからそんなことする奴は居ねえよ。キコあたりが初心者向けの手ほどきをしてくれるだろうよ」

「そうですよね、それなら気が楽です」

そういえば今日はキコ達は櫂組だから一緒にやれるはずだ。

俺はちょっとその気になってマグロを叩いた棒を手に取って剣道の感じで振ってみた。

「お? お前は両手剣か、まあまだ力もないだろうし当然か」

「両手剣?」

「剣といったら基本は片手持ちで、逆の手は盾を持つことが多い。でもまあ両手それぞれに長刀と短刀って流派もあるし、それぞれだな」

「ふむふむ」

「代々武家の子らは家に伝わる流派があったりするが、結局は体格と好みで武器も戦い方も変わってくる」

「ああ、ソードとかレイピアとかダガーとかそんなヤツですよね?」

「ああ、よく知ってるじゃねえか。しかしまあ、大抵の一般市民出身のカネのない奴はそもそも剣が買えないから棍棒を持って戦場デビューする」

「えっ、武器は軍から支給されないんですか?」

「そんな無駄なことする訳ないだろう? 生き残った奴は倒した相手から剣でも装備でも何でも貰ってくりゃ良いんだ」

「あ、なるほど」

そういえば鉄は高級品なのだった。

一貫取るのに森を山ひとつだっけ?

そもそも一貫がどれくらいなのか分からんし、山ひとつ分の木炭ってのもよく分からない。

ただまあ鉄を作ろうとすると辺り一面が禿山になるのはジブリのアニメで観たから知っている。

「ただまあ、最近は戦争って感じの戦争は起きてないから若い兵士は装備なんて碌に持ってないけどな」

「あ、そうなんですか?」

「俺の若い頃はよ、北部や西部の都市国家との小競り合いがまだあったしサナの連中ともやり合ってたから新人はどっかしらに配属されたけど、今は北西部のロルカノとの争いくらいしか現場がねえから金も稼げないし装備も手に入らねえ。軍に入って一攫千金てな夢はもう見れねえな」

戦場でいっぱい敵を倒せば剣や装備が沢山手に入り、それを鉄の素材として売れば金持ちになれるってことか。

現代の倫理観からするとかなりアウトだと思うけど、それくらいの見返りがないと命は賭けられないってことかも知れないな。

モンスターを倒してドロップする素材を集めるのと同じだが、敵とはいえ死体から装備を剥ぐのは俺はちょっと避けたいな。

そんなこんなでボートを降ろし、トローリングの道具を倉庫から出し終えたら2点鐘が聞こえてきた。

ロッコはボートに乗り込み、俺は剣術に参加するため甲板に向かった。