軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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甲板に着くとちょうど準備運動が始まる所だった。

参加人数は20人ほど。

ブリッジの上に立つ副船長の合図で体操が始まった。

この準備運動がなかなか特殊で、脚をガニ股に開いて腰を落とし、両腕は天高く上げ、そのままの姿勢をキープしながら上半身を前後左右にゆっくりと振るというものだった。

いままでの人生でやったことのない動きだったが尻から腰の辺りとウエストの辺りにギンギンに効く。肩も辛い。太腿も悲鳴をあげる。船がゆっくりと傾ぐのも合わさって酔う。

しかも20人で輪になって行うのだが正面にいるパコが、必死なのであろう、変な顔になっているのが笑けてくる。

かく言う俺もあちこちキツくて歯を食いしばり変な表情になっているのが分かる。

いつ終わるのか分からず死ぬかと思ったが3分ほど続くと船長のヨシの号令で次の運動だ。

次は全員で右向け右して腰を落としてゆっくりと行進する。

要はウォーキングスクワットというヤツだ。

さっきの運動でだいぶん太腿が痛めつけられたがコレはさらにキツい。

船の揺れもあってこちらもふらつく。

みんなこんな事を普段からやってたのか。

どうりで揺れる船の上でテキパキと走り回り、縄梯子を登り降りできるわけだ。

軍人だから当たり前に身体が強いのかと思ってたが、ちゃんと鍛えてたんだな。

そんなことにも頭が回らなかった自分を少し恥じる。

俺も頑張らねば。

これも3分ほどで終了。

やっと剣術の本番だ。

どういう順番かわからないが、2人が樽に刺してあった木刀を手に取り脇に置いてあった胴着を着けた。一人は長官と俺の陰口を叩いていたトロンボ。もう一人はイケメンマッチョのカッロだった。

胴着は身体の正面だけを守る木製で、2本のフックのようなもので肩にひっかけるだけ。

木刀はただの真っ直ぐな棍棒で、持ち手以外には厚く布が巻き付けられていて、多少は安全に気を使われているようだ。

重量はかなりありそう。

そりゃそうだよな。本番は鉄の重い剣なのだ。日本の剣道の竹刀の方が武術としてはおかしい気がする。

両者共に左手に小ぶりな木の盾を装着した。

サイズは大きい鍋のフタくらい。

ふたりが正面に向かい合うと、もう既に試合は始まっているようだった。

トロンボが左脚を大きく踏み込むと大きく横薙ぎに木刀を叩き込んだ。

カッロはそれを盾で受け止め、腰を落としながら鋭く踏み込み、肩でトロンボを弾き飛ばした。

バランスを崩しながらもトロンボは突きを返したが、サイドに回り込もうとしていたカッロの肩辺りにかすっただけで、そのままトロンボは脚をもつれさせて倒れた。

倒れたトロンボに切先を突きつけてカッロの勝利かと思われたが、副船長の続けよの声でカッロは剣を引き、トロンボは立ち上がった。

今度はカッロが先手を切り、鋭い突きを放った。トロンボはそれを盾で逸らすと豪快な足裏の蹴りでカッロの突進を止めた。

止まったカッロに対しトロンボは猛攻を開始した。

左右上段から袈裟斬りに切り掛かる。

盾で跳ね返された剣をそのまま逆袈裟に叩き込む。

その攻撃が速すぎてカッロは反撃ができない。

さらにトロンボは蹴りのフェイントは混ぜながらカッロを押してゆきカッロに壁を背負わせた。

カッロの背中が壁に当たるとカッロは背中で壁を弾くようにして前に飛び出すと、鍔迫り合いでトロンボを押し戻そうとした。

トロンボはそれを正面から受け止めたように見えた刹那、身を躱しそれと同時にカッロの脚を引っ掛け、カッロは前のめりにバランスを崩してしまった。

つまづいたそのままのカッロの勢いを利用してトロンボは左手、つまり盾を持った手でカッロの右手を掴み、右手はカッロの肩を押して引き回し、そのまま引き倒すことに成功した。

両の手を地面について這いつくばったカッロの首筋に木刀をあてがうと船長のヨシの声が掛かった。

試合終了である。

内容的には1勝1敗のドローではあるが、ちょっと嫌なやつだと思っていたトロンボが勝って試合が終わったのですっきりはしない。

とはいえトロンボの戦いは天晴れであった。

なんか西洋風の剣の戦いってもっと大味にガンガンやるだけなのかと想像していたのだが、蹴りも掴みあれば押し引きもある高度なテクニックの応酬だった

おそらく甲冑を着込んで戦うことが想定されているため普通に切り掛かっても切れないので相手を引き倒して甲冑の隙間に剣を差し込むといった戦い方が浸透しているのだろう。

相手を引きずり倒すトロンボの技は合気道みたいだった。

試合を終えた二人はというと両者は握手を交わす訳でもなく元の立ち位置に戻っていった。しかし二人の表情を見るにお互い納得の試合だったようで満足げであった。

ひょっとしたらこの二人は仲良しなのかもしれないな。

親友と書いてライバルと読む的なアレだよ。

気づくと隣にパコが立っていた。

「見たか、トロンボさんの脚捌きは凄いだろう! あれがロマ地方に伝わる剣術さ。巧みな足捌きで敵を翻弄する技さ。今の試合には剣術の醍醐味が全てが詰まってた。つまり相手の姿勢をコントロールする者が試合を制するんだ。しかし、だからと言ってカッロさんを侮るなよ。本来カッロさんはハチェットの使い手なんだ。カッロさんがハチェットを持てば安物の剣は折られ、強力な突きで体勢を崩され、まともに戦うことも出来なくなる」

パコの解説は大変ありがたかったが、パコがマウントを取るためにやってきたのか単純に親切で教えてくれているのか判別がつかないのが少し悩ましい。

先日は泣いて怒ってたクセにどういうメンタルなんだろうか?

やたら尊大なのが鼻に付くが、普通に良いやつなのかもしれない。

「そうなんですか、僕は剣を握ったことすらないので何をどうするのかも分かりませんよ」

「そうかそうか、ふーん、なるほどね。まあ僕は小さい頃からお父様に本物の剣を握らせてもらって兄様に訓練してもらっているからね。やれやれ、きっと君は僕と乱取りすることになるだろうから後でじっくりと我が家に伝わる剣術の凄さを知ることになるだろうさ。むふふ」

なんだ、ただの敵情視察だったか。

やっぱコイツはただの嫌な奴かもな。

一応、ご機嫌を伺っておこう。

「そんなあ、僕は初心者なんだからお手柔らかにお願いしますよー」

「なんとまあ、君には失望したな、、、。君は戦場で敵を前にした時にも同じように手心を無心するのかい?」

言ってることはまとも風だが全然ダメだ。

鼻の穴を膨らませて口元は笑いを堪えてピクピクしている。

おそらく兄様とやらに同じことを言われたことでもあるのだろう。

俺は出そうになるため息を堪え、次の試合に目を向けた。