軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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テスト期間が終わった。

結果が気になるところだが、答案が返ってくる事はない。休み明けに合否が発表されるだけだ。不合格だと追試を受けなければならない。追試でも落とすと来年また新入生と一緒に授業を受けなければならなくなる。同級生が実技の授業を受けているあいだにまた座学になるのは避けたい。俺はただでさえ騎馬戦術の稽古をサボってきたのだ。技術的に置いていかれるし、王子の身に何かあってはウルズラ様に殺されてしまう。

「大丈夫だろうな」

「きっと大丈夫です。落としたとしても地理だけかと」

「あんなのただの暗記ではないか」

「僕は長官に拾われるまでこの国のことをなんにも知らなかったんです。アーメリアの地図すら見たことがなかったんですよ」

「大人に教わらなかったのか?」

「村の大人も知らないんじゃないですかね。みんな字も読めないですし。僕はギルドの塾に通い始めて初めて国名を知りました」

王子は感心したような顔をした。

まあ、想像もつかないだろうな。村人全員が無学で字も読めないなんて。しかもあの村は親の上の世代すらいなかったからな。

さておき、俺たちは食堂にいる。

テスト期間中、ずっと食堂はガラガラだった。何故って上級生たちは野営演習に出かけているのだ。この世界の戦争の季節といえば農閑期の冬なのでこの時期に演習を行うのだそうだ。

なのでオッタヴィアーノ様もマルキオッレも居ない。平和といえば平和だ。

俺たちはいつも通りにリ行やダ行の連中と飯を食っていた。

「え、キミらは休みのあいだ居ないのかい?」

「王都に定宿があるんだ。故郷の連中が集まる場所になっててさ、アカデミーで起きた事とかあれこれ報告しないと」

「そうか、、、剣術の基本とか教わりたかったんだけどな」

そうか、平民は剣術は習ってないのか。

「剣術の道場とかってないのか?」

「ディーヌベルクでは聞いたことないな」

「え、そうなのか? クスカでは冒険者街側だけだけど剣術とかを教えるところが幾つもあるって」

「へえ、なんでだろ?」

同じくダンジョンに潜る冒険者の街なのに違いがあるんだな。

「だって、戦えなくてダンジョンでどうするのさ?」

「ディーヌベルクのダンジョンは虫系の魔物が多いからかな? 戦闘技術よりも虫ごとの対処の知識の方が大切かも」

「へえ、例えば?」

「羽虫系なら乾燥ハーブの煙でとか、蜘蛛系なら糸で足を取られないように油を用意したりとか、、、」

「へえ」

「クスカ・ドームではどんな魔物が出るんだい?」

「有名なのはスケルトンとかエクスキューショナーとかかな。でも厄介なのはハーピィらしいよ」

うおお、定番種がいくつも出てきた!

俺は身を乗り出した。

「それは何で?」

「飛ぶのはもちろん、地面でも走るのが速いから」

それは嫌だな。俺はついGを思い出してしまった。害はない筈なのに飛びかかられたりでもしたら凄い嫌な気持ちになる。

「ハーピィは弱いからその場でヤツらに殺されることはないんだけど、爪とか牙で傷を付けられると毒があって治りが遅いんだって」

うわあ、地味に嫌だな。

「ふむ、スケルトンやエクスキューショナーは武器を使うから剣術が必要なのか。道理だな」

「そう、特にスケルトンは時たま凄い強いのが居て、そういう時は懸賞金が掛けられるんだ」

「そうそう、吟遊詩人たちが道場主とかをけしかけて大盛り上がりだよ」

なるほど、吟遊詩人が冒険者街のニュースを市街の方に届けてくれるのか。面白いな。クスカにはいつか行ってみたい。

おっと、話が随分と逸れた。

「話は戻るけど剣術だけどさ、多分だけど変なクセが付く前にアカデミーの教官にやり方を教わった方が良いと思うんだ」

「そうなのかい?」

「剣術って言っても色んな流派があってさ、決闘が前提だったり、軽装が前提だったり、フルアーマーが前提だったり」

「そっか」

「変に出来ると思われて、行きたい兵科に不利な評価が付いたら困るだろ?」

みんな真剣な顔で頷いた。

「行きたい兵科か、選べるのかな?」

「選べないだろ」

「俺はやっぱ前線で戦って金持ちになりたいな」

リヒトは相手の装備を剥ぐ気満々か。

「戦いは嫌だよ、僕は後方支援や工兵が良いな。僕は父の大工の仕事を手伝ってたから多分工兵になるには有利だと思う」

そういえばダリオの家は大工だと言っていたな。それは工兵になったら重宝しそう。変に剣術を頑張らない方が良いかもな。

こうして皆の希望を聞くと概ねディーヌベルク勢は戦場に出て人生の一発逆転を狙う嗜好が強いようだ。対してクスカの連中はシティボーイなだけあって戦場で命を賭す気はさらさら無いらしい。

しかし彼らどちらも、真の希望は多分同じだ。兵役を終えた後の第二の人生だ。

そこへ行くと王子の未来には個人の選択権が存在しない。ポリオリとシュトレニアの両領主の息子として両地域の発展に尽力せねばならない。

それが豊かに生きる王族や貴族の責務といえはそうなのだろうが、自分の人生を自分で選べない立場でどんな気持ちでみんなの話を聞いてるんだろうな。

俺は皆の話を聞きながら自省して首を振った。

気持ちなんてどうあれ、みんな必死に生きているだけだ。俺だってそうだ。選択権なんてあって無いようなものだ。求められるまま善処するのが人生だ。誰からも何も求められない人生なんて意味なんてないのだ、きっと。

ああ、なんか犬か猫をモフりたい気分だ。