作品タイトル不明
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「やだなあ、オッタヴィアーノ様までそんな真面目な顔して、、、」
「おいオミ。この王都ではほとんど雪が降らぬがそれでも冬の寒さは厳しい。窓から明かりが取れれば皆がどれだけ助かるか」
そうか。寒いから窓を閉めたい。でも閉めたら真っ暗だから蝋燭なりランプなりが必要で燃料代が掛かる。しかも蝋燭も油も高価なのだ。
「王都以北の全ての民が必要としている物なのだ」
「お主も吹き込む風が嫌だったのであろう?」
いやまあ、そうだけど、、、
ボッシ氏が唾を飲み込んでから声を潜めて言った。
「これは莫大な富を産むぞ」
王子とオッタヴィアーノ様がチラリと目を交わす。ボッシ氏は誰とも目を合わせようとしない。
ヤバいヤバい。このままではアイデアの取り合いで、折角できたこの関係にヒビができてしまう。
特に王都の王家であるオッタヴィアーノ氏との仲違いは絶対に避けたい。
俺はアホな振りをして大袈裟に喜んでみせた。
「マジすか、やったあ! じゃあ僕たち大金持ちですね!」
案の定、冷めた空気が俺たちの間を流れた。
脇に汗が流れるが俺は頭を振り絞ってこんな提案をする。
「じゃあ折角ですから僕たちで商会を作りませんか?」
御三方の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「だって折角のアイデアをポリオリやマシュトマに奪われたくないじゃないですか?」
「どういうことだ?」
「お主、我ら個人でその富を独占しようというのか?」
「もちろん! とはいえどうせ儲かるのは他所で真似されるまでの短い期間ですよ。ね、王子?」
王子は慌てて首肯する。
「そうだな。ポリオリも懐中時計など色々と作ってきたが、どれもすぐに他国で類似品が出てしまう」
「ふむ、なるほど」
この世界に著作権がないからな。
「僕ら四人の連名で商会を立ち上げ、資金集めから生産、卸売までその商会で行います。出資者には出資額に応じて儲けの配分を渡すように個別に契約するのです」
「そのような事が可能なのか?」
「先日習った、商取引を定めた都市法というのを使えば理論上は可能です」
ボッシ氏が手を打つ。
「商人が集まって金を募り、街を作るアレか!」
「それです!」
「その法に拘束力はあるのか?」
「一応は。しかしそれなりの力があればいくつかの手を使い反故に出来てしまいます。ですからこれは信頼の上での相互協力ということです」
オッタヴィアーノ氏は俺の目を見つめたまま思考しているようだ。
ボッシ氏が口を開いた。
「私は老い先の短い身。私の取り分は全てオッタヴィアーノ様に委ねます」
「アイデアを出した身ではありますが、僕はクラウディオ王子の下僕です。僕の取り分は全てクラウディオ王子へ」
オッタヴィアーノ王子と王子が見つめ合う。
王子が目を伏せて軽く頭を下げた。
「わたくしはオッタヴィアーノ様を信頼しております」
王子と王子が見つめ合う。
さあ、吉と出るか凶と出るか?
音が出ないように注意して唾を飲み込む。
ゴクリ。
あ、音出ちゃった。
「ダッハッハ! 参ったな、ここへ来て個人の資産だと? お主ら我に父の席を狙えとでも言うつもりか!」
なるほど。資金があれば十五位からでも王の座を狙えるのか。そこまで儲かるかは未知数だけどもさ。
「まあ、家に縛られない自由を得るのも魅力だがな! ようし乗った! 我も其方らを信用しよう。その知恵で我を儲けさせてみせよ!」
王子は立ち上がって手を差し出した。
「市井の商人たちは商談成立の時にこうするらしいですよ。手を握り合うのです」
「ふむ今後、我らは王族と貴族の付き合いではなく商人として付き合うということか」
ふたりは手を取り合い、硬い握手をした。
これが後にタンポポ茶の合意と呼ばれることとなった一幕である。
これを機に我々は十五位王子派として血みどろの政争に深く関わって行くこととなる。
ペロリと漏らした思いつきと、その陳腐なリカバリがこの国の政治を大きく動かす事になるとはこの時のオミ少年は思ってもいないのであった!
と、心の中でナレーションを入れてみたが本当にそういう流れになりそうで怖い。
ひとまず後で王子には謝っておこう。
なんだかまた変なことになっちゃったな。
俺は既に「脳内ウルズラ王妃」に叱責されるシミュレーションを始めていた。
「貴方のその軽率な言動がポリオリにどれだけの損害を与えたかご存知になって? 貴方は只の相談役なのですよ? しかも寄りにもよって十五位王子だなんて! 今まで我が夫や祖父が投じてきた苦労が水の泡ですのよ?!」
すいませんすいません!
そんなつもりはなかったんです!
だってオッタヴィアーノ王子もいい人そうだったし、、、
いえ、本当に反省してしてます!
奴隷落ち。
そんな言葉が頭をチラつき、そのあとに飲んだお茶の味なんてまるで記憶にない。
人生リセットボタンが渡されたらすぐに押してしまうだろう。
ドビーは悪い子!
ドビーは悪い子!