軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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いよいよ朝晩が冷え込んできて、朝の仕事の畑の草取りが無くなった代わりに薪割りが入った。

先ずは玉切りといって丸太をノコギリで切り分ける仕事だ。

両側に取っ手のついた巨大な鋸で丸太を切っていく。丸太は専用の台に乗せられ、動かないように二人掛かりで押さえて固定する。鋸を引くのも二人掛かりなので四人が一組になって作業を進めていく。

丸太を移動させるのも持ち上げて台に乗せるのも全て人力なので、正に男の仕事といった感じで気合いが入る。

既に玉切りが終わっているものを斧で叩き割るチームも居る。カッコいいし楽しそうなので早くやってみたい。

そして驚いたことに女子たちも応援に現れた。

彼女らは女子寮に割られた薪を運ぶために来ているのだ。馬車に薪を積んで持ち帰るだけだ。

しかし俺たち男子は馬鹿なので、女の子たちにいいところを見せたくてめっちゃ頑張る。玉割りはワッセワッセと掛け声を掛けながら、薪割りは必要以上力を込めて叩き割る。

何もわざわざ女子が来ることもないと思うのだが、力仕事を嫌がって俺たちがダラダラしないように、こうした配置になっているのかも知れないな。

すっかり乗せられて頑張ってしまった。

割った薪は寮の屋根の下に積み、玉割りで出たおが屑は箒で集めて麻袋に詰めて終了だ。

「剣術とは全く違う身体の使い方だな。尻の上部に効いてないか?」

「ですね。僕は結構腰に来てます」

この会話はいつもと同じ会話だ。草取りをしようが水路掃除をしようが、どれでも身体には結構な負担だ。台所仕事を含む大多数の下働き系の仕事は下を向き、前傾で行うものが多いので腰に来るのだ。

ところが貴族の嗜みとされている乗馬や剣術というのは上体を直立させて行うものが多い。

俺たちがヒイコラ言いながらやる作業を平民出は涼しい顔でこなし、逆に俺たちが普通にやれる剣術の脚の運びなんかは膝を曲げて腰を落とすので平民出にはキツイらしい。

ちなみに玉割りはとても楽しかった。丸太を運ぶ時に使う丸太の表面に突き刺して引っ張り上げる名前の分からない謎の道具とか、知らない道具が出てくるだけでもう楽しい。しかも薪割りといえば世界中の格闘家に身体作りのためにトレーニングに取り入れられている訳で、謎にテンションが上がる。明日は玉割と薪割りを交換するらしいので早くやってみたい。明日からの俺はハードパンチャーに生まれ変わってしまうかもしれないもんな。楽しみだ。

そんなことを考えながら朝食を食っていると話したことのない同級生がやってきた。また掛け算の話かしらと見上げると顔色が悪くなるほどガチガチに緊張しているではないか。これは何事かと身構えると彼は唾を飲み込んで話し出した。

「君たちの馬が言うことを聞かなくて迷惑だから厩舎で預かるのはもう無理だって」

それを何故彼が言いに来たのか。アカデミーにも専属の馬子さんが居るのだ。生徒も順繰りに朝仕事で厩舎の掃除はするが、装蹄などの専門的な世話は彼ら馬子さんたちが行う筈だ。

王子が穏やかに対応する。

「ええと、まず君の名前を聞いて良いかな。良かったら座ってくれ」

「椅子はいらない。僕はレヘトネンだ」

「初めましてレヘトネン。クラウディオだ」

「知ってる」

まあ、そうだろうな。わざわざ来たくらいだ。

「出身は?」

「関係ないだろ。言うことは言った。もう行くよ」

「ちょっと待ってくれ。さっきの話だが、それは教官や馬子たちの総意と言うことなのかな?」

「知らないよ。そう言って来いって言われたんだ」

「誰に?」

レヘトネンは口篭った。

「とにかく! もう世話はできないっていってるんだ。すぐに馬を厩舎から出さないとどうなっても知らないからな!」

「その前に馬子や教官に確認を取るけど良いか?」

レヘトネンは返事をせずに立ち去った。

「何だい、今の?」

「そんなの酷いじゃないか」

リ行やダ行は俺たちを思って憤慨してくれた。貴族の多いテーブルを振り返ると何人かが慌てたように目を背けた。もちろんマルキオッレ率いる連中である。マルキオッレ本人は見当たらないが、奴が裏で糸を引いているのは明らかだ。

「ようやく来たか」

「まあ、マルキオッレ氏の仕業でしょうね」

「思ったよりも動き出すのに時間が掛かったな」

「そういえばそうですね」

「オッタヴィアーノ様と一緒に居るのを見て怖気付いたのだろう」

それで自分らでは直接手を下さず、関係ない下級生に嫌がらせをさせ始めたのか。

「マルキオッレってバルベリーニの?」

「喧嘩したのかい?」

リ行もダ行も気になるだろう。何しろバルベリーニといえば新興国ではあるがどんどん名を上げている国なのだ。

「そうなのだ。特に何があった訳でもないのだが、嫌われているんだ」

「そういえば、あっちのテーブルに誘われたのに二〜三日でこっちに戻って来たよね」

実は俺がやらかしちゃったのだ。テヘ。

「ああ、隣国同士だと色々あってな。向こうは勢いのある大きな国だ。我らに義理立てする必要はないからな」

「何を言うんだい。僕らは君らの味方だよ!」

おお、心強い。

「まあ、すぐに何かをして来ることもないだろう。もう時間だ。授業に行こう」

俺たちは席を立って部屋に戻ったが本当は今すぐ馬の安否を確認しに厩舎へ行きたかった。

本当に世話を放棄されて飼い葉も与えられてなかったらと思うと居ても立ってもいられない。

「これはただの宣戦布告だ。ブルーやフルミネにまだ実害はないだろう」

「でも午後には様子を見に行きましょうね」

「場合によってはロレンツォに預けても良いのだが、明日の日曜は無理だしな」

「あ、それに授業後は受付に寄って卵と牛乳を買わないと」

「いかん。危うく忘れるところだった。財布とマグを忘れてはならんな」

俺たちは慌ただしく校舎へ向かった。

「何処かでマルキオッレに出会したらぶん殴ってしまいそうです」

「それこそ奴の思う壺だ。退学になるのは我々だぞ」

なるほど、これが嫌がらせか。

結構効くな。