作品タイトル不明
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まもなく消灯の時間となったので王子と部屋に戻る。そしていつも通りに歯磨き、軽い筋トレ、瞑想を終えた。
「ところでオミは大丈夫そうか?」
「色んな人とお会いするのは緊張しますが、これもオッタヴィアーノ様のためですからね。大丈夫ですよ」
「いや、違う違う。来週の試験のことだ」
「あ、、、それはかなり不安ですね」
「だよな。この数日は噂話に振り回されて碌に勉強時間が取れておらん。少なくとも次の日曜は何か頼まれてもお断りして授業の復習をしないとな」
「ですね」
試験のことを思い出して腹の辺りに不安の靄がのしかかってきた。こんな感覚は高校受験のとき以来だ。
その夜は苦手な科目のことばかり考えてしまいなかなか寝付けなかった。
翌日、朝飯を食べているとオッタヴィアーノ氏が俺の隣に座った。
「昨夜考えてみたのだが、生徒の中からお付きを探すというのは流石に変に思われそうだ。なので錬金術の助手として魔術が得意な生徒を探すということにしようと思ってな」
「それは良い考えです。魔術の授業をとっている生徒に絞れますし、なんなら同室になる必要すらないですもんね」
「うむ」
「実験室を寄越せなんて例外的な要求をする必要もなくなりますからアカデミー側も協力してくれるでしょうね」
「いや、実験室は欲しい」
「え」
「何やら実験によっては身体によくない成分が出ているらしくてな。東端のあの角部屋は窓が二方向にあるらしいではないか。換気をするのに理想的だ」
そっか。錬金術の実験で有毒ガスとか身体に良くない粉塵とか出る可能性は高いよな。そんな部屋で寝るのは確かに危険極まりない。
しかしそういえば、寮の部屋で実験などするなと禁止されたりしないのだろうか。
「ところで部屋で実験をすることに対しては許可が出ているのですか?」
「もちろんだ。授業で習うことの予習復習は必要だからな」
ふむ、そのうちオッタヴィアーノ王子の部屋の周囲で実験の弊害が起きるかも知れないことを考えれば端の部屋を実験室にするのは合理的だ。隣室が片方減り、上の部屋は無人なのだ。被害者が減る。
上手いこと言って寮での実験を辞めさせたい気もするが、転生者であることを隠して化学実験の危険性を説くのは無理そうだもんなあ。
カナリアでも飼わせるか?
カナリアって売ってる?
「ところで次の日曜なのだがな、ボッシ先生を見舞おうと思うのだがお主らも来ぬか?」
「え、寮長は何かご病気でも?」
「いや? ただ茶でも飲みながら薬草や錬金術の話でもできればと思ってな。その時にこないだのプディングを振る舞えればと思ったのだが」
日曜は試験勉強に当てたいんだけど、、、どうにも断りにくいな。
固まっていると王子が口を開いた。
「是非ご一緒させてください。薬草に詳しい方など中々会えませんから」
「よしよし、そうだろう? 田舎には薬草を普段から使っている産婆なんかが居るらしいが王都ではまず出会えないからな」
ふたりは朗らかに笑い合っているが、誘われたからとホイホイついて行ってはいけないのではなかったか?
それに日曜に試験勉強できないと相当不安なのだが? 約束したよね?
いやでも断れないよな。ただ遊ぼうぜとかなら断れたかも知れないけど、恩師を紹介してくれるってのを断るのは儀礼的にも政治的にも問題がありそうな気がする。
「ではプディングはお任せください。用意しておきます」
「うむ、任せた」
オッタヴィアーノ王子は微笑んで立ち去った。
立ち去ったオッタヴィアーノ氏を見送って王子がこちらを見た。
「すまんな。あれは断れないわ」
「いや、良いんです。あれは無理です」
「え、キミたち嫌なのかい?」
リエトが意外そうに聞いてきた。
「いやいやいや、このところバタバタして授業の復習が出来てないから来週からの試験が不安なんだよ」
「お主らは大丈夫そうなのか?」
「いや、僕らも不安だけど、毎日問題出し合って復習してるからね」
「信じるしかないよ」
わいわい勉強してるのか。ちょっと大部屋も羨ましいな。
仕方ない。今日明日でみっちりやるしかないな。
「日曜は事務所が閉まっているから明日のうちに材料を手に入れておく必要があるな」
そっか。プリンの仕込みもあるのか。いよいよ勉強時間が取れないな。
俺は胃の辺りをそっとさすった。