軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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オッタヴィアーノ王子の部屋を辞して自分の部屋に戻るとまだクスカの連中が待っていた。

「遅いではないか、心配したぞ!」

「そうだよ。やっぱり寮長に捕まったのかい?」

あ、そうだった。魔女伝説の開かずの間を調査しに行ってたんだ。

「三階の東奥も開かずの間だそうです。たまたま上級生の方に注意されたので聞いたのですがボッシ氏に怪しいところはないそうですよ?」

「でもやっぱり開かずの間だったんだ、、、!」

クスカの連中は色めき立った。怖がっているクセに怖くあってくれと願っているようだ。まあ分かる。怖い話は面白いもんな。

「他に寮長の庭が覗ける場所がないか調べてみたらどうだ? 薪置き場の屋根の上とか廊下の窓とか、あとは煙突の掃除をしていた班がないかとか、、、」

「そうだね、ちょっと調べてみるよ」

ようやくクスカの連中が部屋からぞろぞろと出て行った。

「で、オミ。遅くなったのはどうしたのだ?」

「それがですね、たまたま警告を下さった上級生というのが王都第十五王子のオッタヴィアーノ様だったんです」

「ええ! 叱責されたのか?」

「いえ、仲良くなりました」

「は?」

意味わかんないよね。俺もそうだ。しかし俺は今修学旅行について記憶を掘りたいのだ。少しの間ひとりにして集中させて欲しい。

「ちょっと済みません、王子。何か重要な記憶を思い出しそうなので少しばかり集中させてもらって良いでしょうか?」

ちょうどその時、食堂の晩飯のベルが鳴らされた。

クソ、飯か。折角記憶の尻尾を掴めそうなのに、、、

「ああもう、、、僕は食事はいいので王子よろしければ行ってきてください」

「構わぬが、、、飯はどうするのだ」

「干し肉で我慢します。あ、可能であればパンをもらってきてください、、、」

王子は納得のいかないような顔で食堂へ向かった。

お付きなのに申し訳ない。でも火薬のことについて思い出せばポリオリの発展にも貢献できるはずだ。

俺はベッドに潜り込み、毛布をかぶって肘と膝をついて四つん這いになり枕に額を押し付けた。

何だっけ何だっけ? あれは何処だ? でっかい合掌造りの茅葺き屋根の家だ。てことは五箇山か白川郷だ。そうだ。養蚕が有名なんだ。

そうだそうだ。合掌造りの家では一階は住居で二階では養蚕が行われてたんだ。でもって合掌造りの家には必ず囲炉裏がふたつあって、何年かごとに交互に使うんだ。

使わない方の囲炉裏には養蚕で出た蚕の糞を干し草と入れて行くんだ。

俺はガバと毛布を払い除けた。

塩硝の原料は蚕の糞だ!

そこで誰かがガイドさんに質問して塩硝はこの方法でしか採れないのか聞いたんだ。そしたら作れると分かる前は洞窟の壁面から採掘してたとか言ってたんだ。洞窟に住み着いたコウモリの糞尿が蓄積して微生物に分解されて塩硝になるって言ってたんだ!

分かったぞ!

俺はベッドから飛び降りて草鞋を突っかけると食堂へ急いだ。まだ飯に間に合うはずだ。

食堂に入ると王子はディーヌベルクの連中とクスカの連中と同じテーブルについていた。

「王子、もう大丈夫です。僕も飯を食います」

「お、おう、、、」

急いでパンとスープを受け取り、席に戻る。

「お腹、もう大丈夫なのかい?」

「もう大丈夫。心配かけたね」

王子が皆には腹痛と言っておいてくれたんだろう。なるほど、それなら帰りが遅かった説明もつく。流石だな王子。

「それなら聞いてもらいたいんどけどさ、やっぱり他に覗ける場所はなかったよ」

「煙突掃除は?」

「春に終わってるってさ。それに煙突掃除は夜にはやらないよ」

「ふむ」

俺はパンを頬張りスープを流し込んだ。今日のスープはレンズ豆のスープだ。朝はまだ豆の原型が残っているのだけど晩飯となると半分溶けてポタージュのようになって美味い。

「となると誰も見てないのかもね。ただの作り話なのかも」

「東端の部屋が使われなくなる前から伝わる話なのかも知れないな」

「上級生が僕らを怖がらせようとして流したんじゃないかな」

既に噂が沈静化してるな。まあ怪談なんてそんなもんだよな。こうした作り物の恐怖は長続きしない。よくよく考えてみると変な矛盾が見えてきて馬鹿らしくなるのだ。

と納得しつつも少し引っ掛かる。オッタヴィアーノ王子の反応が「ああ、いつものあの話か」というニュアンスじゃなかったんだよな。昔から伝わる怪談なら四年もいる王子は耳にしているはずだ。そして今年作られた新作なら王子のところに届かない気がする。お付きも居なかったし、これは俺の勝手な憶測だがオッタヴィアーノ氏には軽口を叩けるような級友は居なそうじゃんか?

ちょっと検証してみる必要があるな。いや、オッタヴィアーノ王子の友達じゃなくて怪談のほうね。