軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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真っ暗な部屋でむくりと身体を起こす。

木窓の隙間から差し込む光もない。

このまま朝まで寝るにはきっぱりと目が覚めてしまったので何か食べるものをもらって空腹を満たしてから寝なおそう。

そう思って部屋から出ると居間にはランプの火が灯りふたりのゲオルグが酒を酌み交わしていた。

「目が覚めたか」

「具合はどうじゃ?」

「大丈夫そうです」

答えながら身体の魔力を探ってみても枯渇感はない。

「飲むか?」

「いつもの砂糖酒じゃが」

「今日はやめときます。それよかお腹が空きました」

「ひとまずそこのパンと夏蜜柑を食っとれ。今ハムとチーズを切ってやる」

「パンと蜜柑だけで良いですよ」

「遠慮するな、若造のくせに」

ひとまず喉も乾いていたので蜜柑を剥く。

部屋中に柑橘の匂いが広がった。

「ええ匂いじゃな。ひと房よこせ」

「どうぞどうぞ」

ゲオルグは果汁を酒に絞り入れた。

「うむ、美味い」

「皮を絞るともっと香りが付くんじゃないですか?」

「どれ」

「どうぞ」

「うむ、こりゃ良いもんじゃな。洒落れとる」

夏蜜柑の甘皮を剥いて口に入れると酸っぱい果汁が口に溢れた。

美味い。

オレンジほどの派手な美味さではないが、スッキリとした味わいが胸に沁みる。

「ほれ、ハムとチーズじゃ」

「ありがとうございます」

ハムとチーズはテーブル中央に置かれ、ふたりも手を伸ばした。

俺は甘皮を取った蜜柑をハムチーズの皿に乗せていく。

「甘皮を取っとるのかマメじゃの。うむ、美味い」

俺はこの地味な作業が嫌いではない。

あえて言うならムッキーちゃんが欲しいところだが。

あれがあると甘皮むきが格段に楽になる。

ゲオルグが酒をひと口含んでから言った。

「お主のやった精霊との会話じゃがな、ワシらには出来んかった」

「え、マジすか」

「お主だけの特殊能力かも知れん。だがしかし、お主の深層心理が勝手に返事をしとる可能性も否定はできんがの」

それもそうだな。

「そこを切り分ける検証方法も考えては見たが、これが中々難しい」

「お主の知らぬお主のことなぞワシらは知らぬし、お主の魔術を使わぬ返事の方法も思いつかん」

なんか心霊現象扱いだな。

コックリさんか。

「となるとやはりリサに診てもらうのが早かろう」

「お主、王都に帰ればリサに会えるか?」

「いえ、リサ様はカイエンにいらっしゃる筈ですので次のセイレーン号でいらしたとしても半年後とかではないかと」

「そうか、カイエンと言っておったな、、、」

この世は何かと不便だよな。

手紙も出すなと怒ってたしな。

魔術でメールとか、電信って再現できないのかしら?

「ならばまあ仕方あるまい。お主もアカデミーじゃしの」

「もしその船の者に渡りが付けられたら手紙を託す他あるまい。リサの船ならリサに届くじゃろ」

なるほどそうだな。

ロンド船長に託せば問題はなさそうだ。

それなら軍に怪しまれることもないだろう。

「精霊と会話できるとなると色々と聞いてみたくなるだろうが、程々にしておけよ」

「え、なんでです?」

「お主の求める答えを出す可能性が高い。本当に精霊に知能があったとしても何処に記憶や知識を保管しておるのか不明だ。お主の深層心理が関わっとるとしたら尚更だ」

そっか。

AIを過信しては危ないもんな。

でも、もし電波とかで王都の生きてる方舟のホストコンピュータと繋がってるとしたら最強なんだけどな。

過去の、いや未来のテクノロジーにアクセスできるかも知れないじゃないか。

それこそ異世界大無双状態になれる。

「体調が良くなったら、もう王都に戻るとよい」

「お主は充分、治療魔術を学んだからの。お主は優秀じゃ」

方舟が人工衛星とか持ってて繋がるならそれこそ全世界とスカイネットみたくできるかも。

いや、俺以外の魔術を封じるとか可能なのでは?

全ての精霊を俺専用にできるかも知れない。

いやいや、王都のドームと繋がってるなら王都の機能停止とかできるかも?

何日か止めて脅しをかければ王都の王より偉くなれる!

俺がこの世界の王様だ!!

いやいやいや、そういうのは良くない。

絶対的に不幸になる。

独裁者ってのは身の回りの人々が信用できなくなって疑心暗鬼の塊になって身を滅ぼすんだ。

大粛清とか大革命とかして国をボロボロにするんだ。

最後はクーデターで軍部に一族を根絶やしにされるんだ。

「おい、聞いておるか?」

「まだ調子が戻っとらんのではないか?」

「そういえば頭を打ったと言っておったな」

は!

また妄想の世界に迷い込んでいたか。

「すみませんボーっとしてました。何です?」

「いつ発つか聞いておったんじゃ」

「えっと今日は何日でしたっけ?」

「八月の三日じゃ。余裕を持つならもう発っても良い頃じゃ」

そうか、もうタイムリミットだったか。

王都までは二十日間。

九月の一日までに戻らねばアカデミーに間に合わない。

「では明日発とうかと」

「こやつ全然聞いとらんかったな。堅パンを準備するのに時間がかかるんじゃ」

「そんなに急ぐなら明後日の朝パンを多めに焼いてもらって乾燥に入ろう」

「あ、乾燥なら得意なんでお時間はいただきませんが」

「ワシらだって得意じゃ、アホ」

あ、そっか。

という訳で出発は二日後になった。