軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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今日も早い時間からいつもの沢沿いを探すが、獲物が見つからない。

この数日、多ければ日に三回も動物の血を流しているせいで近寄らなくなってしまったのかも知れない。

「おらんの」

「もうあきらめるかの」

「うーん、残念ですね。一旦死なせてライトニングで蘇生するのを試してみたかったんですけど」

先行していたふたりのゲオルグが振り返った。

「一旦死なせて蘇生?」

「なんじゃ、そりゃ?」

「心臓が止まってしまった人の胸を押して心臓マッサージすると生き返ることがあるのはご存知で?」

「ああ、知識としてはな」

「幸いそんな場面には出会しておらんがの」

そうだよね。

俺もない。

「その心臓マッサージを電気ショックで代用するんですよ」

「何度もくらわすのか?」

「いえ、一発決めて様子を見るんですよ」

「ふーん、そうした道具があるということか?」

「ええ、AEDっていうんですけど人が多く集まる場所には何処にでも設置してありましたね」

「ほう。じゃあ効くんじゃの」

「方舟にはなかったんですか?」

「無かった。方舟ではエルフは死なぬし、人には関わらんかったからの」

そっか。

病気もしないし、死ぬ時は「長い散歩」の途中なんだっけ。

「興味深いが獲物がおらんくては仕方がないのう」

「あ、そうじゃ! お主こないだどデカいフレームピラーがどうとか言っておったな。見せてみい」

俺は沢の上空を見上げた。

ここは木々の枝が覆い被さっているのでちょっと向いていない。

「もっと広い場所が良いですね。木の梢が焼けちゃいます」

「そんなデカいのか?」

「ほんなら里の脇の牧草地がええかの」

弓矢の練習してる場所ね。

あそこなら空は問題ない。

でも牧草が焼けちゃうよ?

「一番草の収穫がちょうど終わっとるから問題なかろう」

「よし、戻るか」

そういえば数日前、里のエルフたちが死神が持ってるみたいなでっかい大鎌を牧草地の地面スレスレに振るってたっけ。

二〜三日干してから子供たちが刈られた草をひっくり返し完全に干してから収穫するのだと言っていた。

俺はゲオルグたちとくっちゃべったり飲んだくれてたからよく見てはいない。

里に戻るとゲオルグたちは緩いローブに着替えた。

「そういえば何で山に入る時は細身の服に着替えるんです?」

「袖や裾が枝に引っかかるじゃろ?」

「あんなピタピタの服は息が詰まるでの」

そっか。

単純な話だった。

確かにリラックスする時は緩い服の方が楽だよね。

「さて、やってみい」

「ショボかったら貴様今夜は酒抜きじゃぞ?」

この数日は飲んでないけど、そう言われると惜しい気がする。

「それよか牧草に燃え広がるのが怖いんで、そうなったら消すの手伝ってくださいね」

「ああ、じゃあそれも見せてやる」

「火事の消し方にはコツがあるんじゃ」

へえ、水をぶっかけるんじゃ駄目なのかな。

「じゃあ行きますね。数多の精霊よここに立つものが見えるか、、、、、」

「お、ワシらの呪文じゃ」

「ほうほう、こんなふうに空気を集めるのか」

「フレイムピラー!」

空を切り裂くような爆音が鳴り、天を突く火柱が立った。

爆風で飛ばされそうになるが、ふたりのゲオルグは平気そうだった。

「こりゃあ大したもんじゃ」

「あ? 何か言ったか? 耳がイカれちまったわい」

見ればやはり爆心地に火が点いている。

周りに燃え広がってはいない。

これなら俺にも消せるなとウォーターボールを出しかける。

「やめよ! 見ておけ」

「ワシが小さな水滴を飛ばすぞ?」

え、何を見せられるの?

ゲオルグがビー玉くらいのウォーターボールをゆっくりと飛ばした。

ふわりと飛んだ水滴がフレイムピラーが作ったクレーターに落ちると小さく爆発した。

全く予想してなかったからビックリした。

しかし確かに火は消えている。

「何です今の!」

「水蒸気爆発じゃ」

「そんな事も知らんのか?」

え、何だっけ?

その言葉は知ってるけど。

「水がマグマみたいな高温に触れると一気に蒸発して爆発に似た現象を起こすのだ」

「今のはお主の燃えかすに触れさせたが魔術でやるとこうなる。見よ」

さっきの爆心地にふわりと水球が現れ、そこに弾丸のような光を飛ばすと同じように爆発した。

「アチアチアチ!」

今度は弾けたお湯が撒き散られて熱い。

「火炎を消す時は、水よりも爆風が効くんじゃ」

「覚えておけ」

「え、火事の時とかも今ので消す感じですか?」

「状況に寄るが使えん事もない」

ゲオルグは振り返って里を指差した。

「例えばワシらの家が火事になったらお主はどうする?」

「でっかいウォーターボールを落とすんじゃ駄目なんですか?」

「ふむ、まあ確かにお主ほどの魔力の持ち主ならそれが最適かも知れんが、家は粉々に壊れるじゃろうな」

あ、そうか。

何トンて水を落としたら家なんて壊れるか。

でもさっきの爆発でも壊れるよね。

「火事は本当に厄介でな、火を消すことよりも人の無事を最優先に考える方が良いかも知れんの」

「乾いた牧草の延焼や山火事ならさっきの爆風が適しているってだけのことじゃ」

ふーむ、なるほど確かに確かに。

江戸の火消しは火を消すんじゃなくて、燃え広がらないようにお隣さんの家を壊すのが仕事だったって言うしな。

「ちなみに勢いのある山火事は爆風でも消し切るのは難しいな」

「里に寄らせぬようにするのが精一杯じゃ」

そうか、そうだよな。

山火事のニュースの映像でもヘリで水撒いたりしてるの見たけど消せてるのは見たことない。

「火事って怖いんですね」

「そうじゃな」

「エルフの大魔術師でも自然には敵わんよ」

台風や大雪なんかはどうしようも無さそうだもんな。

長官は竜巻を消してたけど、魔力切れ起こしてぶっ倒れてたもんな。

でもあれはやり方を聞いておかなきゃな。

多分爆風では竜巻は消せない。

「ちなみに今ので分かったんじゃがお主の魔力はな、、、」

ゲオルグの方を振り返ったタイミングで里の方で悲鳴が上がった。

見ると里の納屋からクマが走り出たのが見えた。

その口にはエルフの少年を咥えている。

「クソ!」

ふたりのゲオルグが駆け出した。