軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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やらかした。

鹿、キツネで治療魔術のインターンをやってきたのだけど今日はミスってしまった。

今日の犠牲者は猪で、刀傷の治療練習だったのだが止血が間に合わず殺してしまった。

いや、里の皆は「猪を獲って来てくれた」って喜んでるくらいだから構わないのかも知れないんだけどさ。

何が失敗したって、単純に動脈血流の強さを甘くみていた。

精霊にはいつも通りに血管を繋ぐように指示は出していたのだけど、溢れてくる血の勢いで思ったようには繋げなかったようなのだ。

思えば先に患部の心臓寄りを紐で縛るなり圧迫法なりで血流を止めてからやれば良かったのだけど、その時は単純に縫合魔術が上手くいかない事に焦ってしまった。

慌てて魔力を増やして魔術の掛け直しなんかをしているうちに猪は失血のショックで死んでしまったのだ。

冷静になって考えれば止血は基本だよなホント。

そして今になって思えば、刀傷の治療を先に終わらせてそれからライトニングを使ったAED的な蘇生を試してみれば良かったよな。

残酷だとは思うが、それが王子や長官に起きたらと思うと予め実験はしておきたい。

動物実験とかいうとかなりマッドサイエンティスト感があるが、人間の時に失敗しては元も子もないのだ。

必要悪ってヤツかもな。

どうせ腹が減ったらそこら辺の動物を殺して食うことになるのだ。

だからナイーブになるのはやめておこう。

なんなら解体の時になるべく綺麗に開腹して内臓の様子とかよく見ておけば魔術で盲腸の手術くらいできるかも知れない。

とはいえ、気分が良くはないのも確かだ。

殺そうと思って殺すのと、助けようとして死なせてしまうのには大きな違いがあるんだよな。

いやいやいや。

また思考がループしている。

そもそも弓矢に集中できてない。

スタンス、荷重、押し手、引き手、姿勢、呼吸を止めて…

スパン!

放たれた矢は的の中心を捉えた。

「ようやくフォームが落ち着いてきたの」

「初心者ほど成長が早いもんじゃが、なかなかじゃ」

ふたりのゲオルグは酒瓶を持参して俺の弓の練習を見物している。

「そういえば、おふたりはどれくらいの距離で練習するんです?」

「一応、競技としては七十メートルからと決まっておるんじゃが、矢を取りに行くのが面倒じゃから四十メートルでこれくらいの範囲を狙うな」

「的の中心はこれくらいじゃ」

ゲオルグは両手で筒を持つようなジェスチャーをした。直径十センチくらいだろうか。

もうひとりのゲオルグは人差し指と親指で丸を作った。直径三センチだな。

「かなりの精密射撃なんですね」

「それくらい出来んと狩りには使えんな」

「野生動物は近寄らせてくれんからの」

そっか。そうだよな。

「ところでクロスボウとかってないんですか?」

「ワシらは持っとらんが、あるにはあるぞ」

「初心者に優しいのはクロスボウじゃの。筋力が要らず、簡単で、射程距離が長く、正確じゃ」

え、じゃあクロスボウの方がよくね?

「アレは打つ度に弦を巻き上げたり、別の道具を使って弦を張ったりしなければならんから連射が出来んのじゃ。戦争には使えん」

「しかも狩りに使うには張りっぱなしで獲物を探さねばならないから壊れやすいんじゃ。それに複数人で歩くと誤射が怖くての。前は歩けん」

なるほどなあ。

一長一短あるんだなあ。

「おふたりは連射ってどれくらいできるんですか?」

「貸してみい。タブもじゃ。こう矢を地面に立てて置いてな、片膝立ちでやるんじゃ」

つがえては打ちつがえては打ちを繰り返し、あっという間に五本の矢を打ち切った。

もちろん的に全部当たっている。

スゲエ。

こんなんされたら近寄れないわ。

「雨のように降らせる場合は三本とかまとめて打ち上げるな」

「鎧は貫けないが、馬に当たれば効果は絶大じゃ」

そうか、騎馬兵を馬から降ろせればそりゃ効果は絶大だな。

え、やっぱ馬を狙うの?

「おふたりはやっぱそのように戦って来たんですか?」

「違うわい、今のは中世ヨーロッパの古の戦法じゃわ」

「弓兵の基礎的な用法じゃよ」

あ、人族の戦い方か。

馬を狙うなんて人族は残酷だな。

「随分と慣れて来たようじゃから、そろそろロングボウに変えるか」

「そうじゃの。ほれコレじゃ」

別の弓を渡された。

割とただの普通の木の弓。

複雑な形のハンドルとか別パーツのリムとかは無し。プレーンな弓だ。

「お主らが使うのはこうした弓じゃ」

「ウィンドウが無いから斜めに使うんじゃ」

「矢を乗せるのは手の甲じゃ」

「もっと前傾姿勢で」

全然違う打ち方じゃん。

打ってみたら矢は狙いよりも遥か上空を飛んでいった。

「矢が弓の上を乗り越えるようになるから上に飛ぶんじゃ」

「だから放物線を描かせて的に当てるんじゃ」

え、全然違う武器じゃん。

フォームも何でこんな変えるし。

「兵士は様々な防具を身につけるし荷物もあろう? じゃから弦が身体に触れぬように前傾にするんじゃ」

「いままで触ったワシらの弓で、弓と矢がどういう挙動をするモノか分かったじゃろ? それをロングボウに生かすのじゃ」

うおお、難しい!

折角やっと的からの距離が十メートルになったのにまた一メートルに逆戻りだ。

王子もロレンツォも弓は難しいって言ってたけどこんなに難しかったのか。

そこら辺の木で弓が作れないかとか言ったのが恥ずかしい。

なんかウホウホ言ってそうなナントカ原人とかも弓矢って使ってるイメージあったから簡単かと思ってだんだけど俺が間違ってたわ。

これはめっちゃ練習必要。

そして筋肉の使い方が剣とは全然違う。

でもなんだか弓の練習は楽しいな。

出来ないことを練習するのは何というか根源的な喜びがある。

俺は的を外した矢を拾いに夕陽に染まる野原を駆けていった。