作品タイトル不明
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それから数日、俺の治療魔術の特訓は順調に進んだ。
鏃の付いた矢傷はやはり患部の損壊が大きく治療が難しかった。
ここで俺の勘違い。
鏃と聞くと矢印的な形のカエシの付いたものを想像していたのだが、ああいった形は加工が難しいうえに引き抜くのが困難なのでスリムな菱形の鏃が主流ということ。
そもそも、真っ直ぐで扱いやすい矢というものがそもそも貴重なのでなるべく使い捨てにはしたくないらしい。
確かに。
これも一本一本一手作りだもんな。
矢の素材は杉や、真っ直ぐ育つ種類の松みたいな白木を使う。
できれば数年干して、節のない良いところだけを使い、なるべくなるべくキレイに真円の円柱を目指して削り出す。
これを面倒臭がっていい加減な形にすると湿気や乾燥で矢が曲がってしまうのだそうだ。
もちろんその辺の枝なんか使い物にならない。
そして矢のお尻に付いている羽は必ず三本。
俺は何となく四方に付いてると思い込んでたんだけど射出するときに羽が弓の本体に当たる影響を最小限にする為に三本なのだそうだ。
それなら二本の方がと考えてしまいそうだが、二本は羽の曲がりや取り付けの曲がりがあまりにシビアに軌道に反映されてしまい真っ直ぐ飛ばないのだそうだ。
ちなみに、弓矢の練習の為に毎日里に帰る事になった。
弓矢の的である麦藁を束ねたものが重くて持ち運べないからだ。
麦藁を束ねただけなら軽そうに思えるが直径一メートルほどの塊となると、転がすのも一苦労である。
そういえば牛とか飼ってる高原のど田舎とかで見かける藁をラップでぐるぐる巻きにしたヤツ(麦稈ロールとかいうんだっけ?)もヤバい重いもんな。
練習の的にこのロールを使うのはもちろん矢をなるべく傷めない為だ。
最初、初めて射たせてもらった時は的からの距離は一メートルくらい。
こんなに近く? と馬鹿にされてるのかと思ったのだが俺は見事に外して的の後ろの野原に矢を拾いに行った。
外す度に野原を五十メートルくらい、場合によっては百メートルくらい歩かねばならないので練習にならない。
弓矢を拾うのが大好きな犬とか欲しい。
しかも涎で矢を濡らさないヤツ。
一メートルで絶対に外さないようになったらようやく二メートル。
格段に難しくなる。
左腕の伸ばし方、弦を引く肘や肩の角度、引いて固定させる位置、狙いを定めて動かぬ筋力。
どれかひとつが甘くなると矢はとんでもない方向へ飛んでいく。
この弓矢というのは精密な射撃ができるように色々と工夫がしてある。
矢のお尻をつがえる弦の位置というのはしっかり決まっており、弦の真ん中に印が付きその両側には糸が巻きつけてあって絶対に間違えないようになっている。
ハンドル上部は矢が通るように空間が開けてあり、矢を乗せる為のガイドも付いている。
至れり尽せりなのだ。
射手のフォームだってちゃんと教わった。
立ち方は的に対して真横。
足への荷重は左右均等。
首だけ捻って的を見る。
ハンドルは握り込まずに親指の付け根あたりで受け止める。
矢は人差し指と中指の間で、薬指も使った三本指で弦を引く。
弦を引いた右手は必ず同じ位置にくるように人差し指が口の端に引っ掛かるようにする。
弦を放つ時は指を緩めるのではなくパッと開くようにする。
そこまでしっかりとポジションを決めているのに、いざ矢を放つと上下左右にずれて草原へと矢は姿を消してしまう。
ふたりのゲオルグからみると俺のフォームはグニャグニャのフラフラらしい。
射る度に足の位置と荷重バランス、ハンドルを持つ手の位置と肘の角度、背筋の伸ばし具合と首の角度、引き手の指の力み具合と弦の離し方がバラバラなのだそうだ。
俺は毎回全てを確認して真面目にやってるのにだ。
そんな訳で、弓矢の練習は始めてから数日経つのだけど、的との距離は二メートルから成長しない。
「はじめはそんなものだよ」
「そうだよ、僕らも弓を引くのだけの練習を何年もやってからやっと矢を番えるのが許されたのだもの」
里にいる以上、エルフの子供たちが見物に来る。
ふたりのゲオルグはとっくに飽きて家で酒を飲んでいる。
甘くて飲めないとか言いつつ酒なしには時間が潰せないらしく暇があれば延々と呑んでいる。
暗くなる前にしっかりと弓の練習をしたいのだが、今日も早くも背筋が疲れてきている。
弦を引くための背中の上部の筋肉よりも、姿勢を維持するための腰に近い辺りが疲れてしまう。
あまり気にした事がなかったけど、俺は普段の姿勢が悪いのだろうか?
「僕って立ってる時、こう猫背だったりする?」
「うん。背中が丸まってて顎が前に出てる」
「あと左肩が少し上がってる」
エルフの少年が俺の立ち方を真似してくれた。
大袈裟にやっているのだろうが、そんなに不恰好だったのか。
よし、少しの間ゲオルグたちに付き合って酒を飲むのを辞めよう。
筋トレに酒は良くないってマッチョの人たちはみんな言うもんな。
走って、ストレッチして筋トレして身体のバランスを整えよう。
初心忘るるべからず!
筋トレ、勉強、女に優しく!
筋トレ、勉強、女に優しく!
筋トレ、勉強、女に優しく!
ヤー!!!!