軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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先頭まで様子を見に行っていたアウグストが戻って来た。

「どうだ?」

「念入りに見ましたが前の方には居ないようです。森の奥に控えていたらマズイですけど」

「ふむ」

報告を聞いていると総髪ともう一人が歩いて来た。

ロレンツォが応じる。

「任せて大丈夫か? まあ、あまり心配はしてないんだが、、、」

「群れが大きいと流石にキツい。長引いているようなら加勢してくれると助かる」

「了解した。しかし本当に良いのか? 街まで全力で駆ければ逃げ切れる可能性はあるぞ?」

「さっきの馬車を見ただろう。車輪が壊れていた。それにこの時間だ、街が門を開けてくれるかどうかも確証があるまい」

「確かに。じゃあ頼んだぜ、勝てよ」

俺たちは徐々に歩みを遅めてキャラバンから距離を取る。

馬達も何かを感じ取ったのか、しきりに後ろを気にして首を振り足並みが乱れる。

俺は首筋を撫でながら語りかけた。

「おい茶ブチよ、その時が来たら逃してやるからちゃんと逃げるんだぞ? でも大丈夫そうだと思ったらちゃんと迎えに来てくれよ? 王都まで歩きは嫌だからな」

「何だ、まだ名を付けてやっていないのか?」

「いやあ、良い名前が思いつかなくて、、、おい茶ブチ、何が良い?」

茶ブチはブルルと鼻を鳴らした。

「馬なのにブルはないだろ」

そうすると前脚で地面を叩きガッツと音を鳴らした。

「ガッツってお前それは強そう過ぎはしないか? 黒い剣士とか呼ばれちゃうぞ?」

王子はため息を吐く。

「お主はいつもそんな調子で馬と喋ってるのか? 矢のように速くと願ってフレッチャとか。稲妻のように速くと願ってフルミネとか色々あるだろ?」

おお、カッコいい。

「王子は天才ですね! フレッチャはスポッチャみたいで嫌なんでフルミネにします。語感も中性的でぴったりですし、、、」

そんな阿呆な会話をしている時ではなかった。

陽が落ち夕闇に包まれ、月が雲に隠れた。

背後から肉食獣の駆け寄る音が聞こえてくる。

俺たちは鞍から飛び降りて馬は逃げるに任せた。

見れば二頭の巨大な獣がこちらへ向かってくる。

あれが黒狼か。

「ルチェ・ソラレ!」

俺は一歩下がって光の魔術を焚いた。

下がったのは王子やロレンツォ達の目を眩まさない為である。

前に居る三人の影が長く尾を引く。

黒狼は光を嫌うというのが本当なら下がってくれる筈だ。

黒狼は左右に別れて森の中に飛び込んだ。

流石に光が苦手ではあるらしい。

俺は馬から降りる時に馬の背から叩き落としておいた飼い葉にキャンドルの魔術で火を付けた。

この火は5分も持たないだろうが気休めだ。

俺たちは火を背に囲み、周囲を警戒する。

息を吐く暇もなく森から黒狼が飛び出して来た。

森に向かって伸びる俺の影から真っ直ぐ俺を狙って来る。

ヤバい。

自分の影のせいで距離感が掴めない。

ロレンツォが前へ出て逆袈裟を切るように長剣を振り上げたが黒狼には当たらなかった。

ロレンツォの攻撃を見切って避けたらしい。

「オミ殿は明かりをお願いします!」

「はい!」

俺は再びルチェ・ソラレの魔術を発動すると指先を高く掲げた。

「うわっ!」

アウグストの方から彼の影を伝って這い寄って来ていた黒狼が照らされ飛びすさる。

慌てて振り下ろされたアウグストの剣も空を切った。

点光源はマズい。

光を背負うとその影を利用されてしまう。

俺の魔力はかなりある方だとは思うが陽はまだ落ちたばかり。ルチェ・ソラレを一晩中発動し続けるのはいくら何でも無理だろう。

「森に火を放っていいですか?!」

誰も返事をしない。

「森に火を放っていいですね?!」

王子が返事を搾り出した。

「いや待て、それは最終手段だ! 火付けは極刑と決まっている!」

山火事になったら流石にマズいか。

ここ最近は雨も降っていないし。

俺は海外の何日も続く火事のニュース映像が脳裏を過って納得した。

しかしこのままでは魔力が枯渇してジリ貧だ。

姿を現した二匹の他に本隊が居る可能性もある。

ヤバいヤバいヤバい。

光源光源光源。

燃料燃料、、、燃料?

ある物に気を取られて魔術の光が弱まった瞬間にまた森から黒狼が飛び出して来た。

王子の放った横薙ぎを軽やかなステップで交わした黒狼はまた森の闇に飛び込んで姿を晦ました。

ヤバいヤバい。

ルチェ・ソラレは微妙なコントロールが必要なのだ。

気を抜くと暗くなる。

もしくは指先を焼いてしまう。

もう飼い葉の炎は消えそうだ。

点光源はよくない。

俺はローブを脱いで丸めて地面に投げ捨て火を点けた。

「一旦魔術の光を消します!」

急がねば飼い葉が燃え尽きてしまう。

「乾け、セッカ! 、、、キャンドル!」

俺はさっき見つけたある物を乾燥させ火を点けた。

それは馬糞である。

家畜の糞が燃料として長持ちする事はリンの村で学んだ事だ。

サナのテント村では牛や羊の糞が貴重な燃料だったのだ。

黒狼の気配を感じて緊張した馬達がしきりに糞やオシッコをしていたが、それがこんな風に役に立つとは。

見渡せば糞はあとふたつある。

どれほど持つかは分からないが少なくとも数分は首が繋がった。

その間に黒狼を倒す算段を立てねば。

それに、この馬糞が燃え尽きる前に次の馬糞までの移動も考えなければならない。

わずか数十歩の距離だが黒狼のスピードを考えると軽々には足を踏み出せない。

さて、どうする?