軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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鮭の遡上もピークを過ぎ、いよいよ秋も深まってきた。水温こそあまり変わらないが風が冷たくなってきた。

この時期からは銛漁と並行して、岩場の方での投網漁が始まる。

銛が上手いエース数名だけが海に立ち、それ以外は投網である。

とうさんは銛が上手いので銛漁である。

俺はといえばジルにくっついて投網を学ぶことになった。

去年までの助手の息子のジッタはもう独り立ちということで新しい助手に選ばれたのだ。

投網での獲物はボラのような魚である。

もちろんこれらも燻製にする。

ところで、投網漁であるがこれが中々にしんどい。

まず、網がキレイに広がらない。

第二に、濡れた網はかなり重い。

第三に、魚が獲れる時間が短い。なのに一回の投網で一匹か二匹しか入らない。

投網漁が行われるのは僅か2時間程度だが投げては引いての繰り返しを何回行えるかで漁果が変わる。

投げる、上げる、魚を外す、網を整える、そしてまた投げるを全力で繰り返すのだ。

ジルの腕の太さと背中のデカさの理由がコレである。

助手の仕事は網を引き揚げる事ではなく、ロープをさばくこと。

網を引いている側からキレイに整えていく。これをしないと絡まったり引っかかって飛距離が伸びなかったりする。

そして網が上がったら魚を外してキレイに整える。

だからそんなにキツイ仕事ではないハズなんだけどエライきつい。

ロープをさばくのも魚を外すのも中腰である所為か足腰に来る。

ジルは網を引き揚げるのも早い為一回のサイクルが短い。

しかもジルの網は早く沈むように他の人より重りが重くしてある。

去年までは「ジルは早くて流石だね」などどのんびり眺めていたが、見るのとやるのは大違い。

家でスクワットその他を毎日やっていた俺は楽勝でこなせると思っていたが初日は早々に音を上げてしまった。

ジルは立てなくなった俺を見ても文句を言わず、変わらないテンポで自分でロープをさばいて魚を外し投げていた。

謝る俺に向かってジルは

「構わん。最初はそんなもんだ」

そう言ってニカッと微笑んで寄越した。

この男が村長である所以である。

辛い仕事をこなしながら微笑む余裕。男でも女でもキュンときてしまうに違いない。

漁の帰りも、ジルは網も魚も両方を担いで岩を飛んで渡って帰っていった。

本来は網を運ぶのは俺の仕事なのだが「疲れた足で岩を飛んで渡るのは危ないから」と、そう言ったのだった。

正直憧れる。

とうさんのような痩身の銛使いもカッコイイが、全身のパワーでゴリゴリに力仕事をこなすマッチョを間近で見ると怪獣を見るようなロマンを感じる。

俺はその夜から普通のスクワットに、足を広げて腰を深く落とすワイド・スクワットと足を前後に開いてやるランジ・スクワットを追加することにした。

食事も変えることにした。

今まではふやけた芋を好んで集中的に食べていたのだが、面倒臭がらず魚の骨に付いた身を丹念にしゃぶるようにした。そして今までは硬いことを理由に避けていた魚卵を我慢して積極的に食べる事にした。

でんぷんよりもタンパク質である。

そしたらやっぱりかあさんに心配された。

「オミどうしたの? お芋いっぱいよそってあげたのに、美味しくない?」

「筋肉を付けたいんだ。俺はマッチョを目指す!」

「ま、まっちょ? ってジルさんのこと?」

「そう、ジル」

とうさんはそれを聞いて、うんうんと頷いていた。あのロマンはやっぱり男には分かるのだ。

「じゃあ次の飯は卵をもっともらわないとだな」

「卵は身体を大きくするって言いますもんね」

「卵ならみんな喜んで取らせてくれるぞ?」

「卵はぼそぼそしますからねえ」

俺は今まで温めていたアレをやってみる時が来たと確信した。

産卵期の鮭が獲れるのにこの村では誰もやらないアレだ。

次の日はちょうど満潮の時刻、つまり投網の時間が少し遅めだったので俺はとうさんと海に立った。

「網漁があるんだから休んでていいんだぞ?」

「いいんだ、ちょっと魚の卵でやってみたいことがあって」

「卵ならみんな分けてくれるって、、、」

「とびきり新鮮なヤツが欲しいんだ。熱い砂に置いといたやつじゃなくて」

「へえ?」

「それも、銀の太いヤツがいいんだ」

「ああ、あれは身ももらえるし美味いからなあ」

「うん」

ここでは何種類か鮭が獲れるのだが、銀の太いヤツは脂が多過ぎて保存に適さないとかで入れないよう言われている。

だから建て前としては紅いのか白いのが良い鮭ということになるが、銀の太いのは味が良く全部俺たちの腹に収めても咎められないので俺はいつも密かに狙ってるのだった。

そうこう言ってたらとうさんがお目当の鮭を上げた。

狙って出来るんだから凄い才能だよな。

一緒に浜に上がってそう言うと、

「太いのは今が時期だから全然凄くない。むしろコイツらを避けて保存に向く魚を獲ることの方が難しいな」

「ええ、そうだったんだ、、、?」

「時期が終わるまでは毎日何匹か上げてやるよ」

「いいの?」

「ギルドの手前、みんな嫌がるが本当は嬉しいのさ」

「そうなの?」

「そうさ、美味いからな」

俺はすぐに腹を割いて卵を出した。海水で洗って血管や厚い膜を取り除くとバラバラにほぐして麻袋に詰め、キレイな海水を汲んである樽に浸け、日陰に置いた。

「撒き餌かなんかにするのか?」

「いや、生で食べてみたくて」

「生で? 腹壊すぞ?」

「壊したらやめる」

「そうか、、、変なこと考えるなあ」

「まあね」

「、、、すぐには食わんのか?」

「昼には食べれるようになると思う」

「へえ?」

俺は卵を漬けたままにして投網漁に向かった。