軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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あれから、俺はジッタをやり込める方法をずっと考えていた。海に立っている時も、魔術の練習(千本ノック)の時もだ。

そうしたら、心此処にあらずというより脳がフローに入っているためなのか、漁もかつてなく調子が良かった。

以前は3日に一匹程度の打率だったが今は毎日三匹くらいは揚げている。

これは大人と同じくらいの漁獲だ。

それもあり、こないだの酒の件もあって俺は大人たちに随分と認められた。

ギルドの塾に行ってる変わった子、という立ち位置でなく戦力のひとりとして扱われるようになったのだ。

それをまたエラく嫌がったのがジッタだった。

奴もまた、子供だけど一応大人の仲間という立ち位置だった為、ライバルのようになってしまったのだ。

更に奴の父である村長のジルが、俺とジッタをあからさまに比較してくる。

「おお、ジッタは二匹あげたか!

うーん、だがオミは三匹あげてるな」

と言った具合だ。

ジルとしては今まで競争相手が居なかったジッタを俺と比較することでハッパをかけてより成長させたかったのだろうがジッタは正に思春期真っ只中、反抗期に入ったところである。

ムッとした顔をして立ち去るならまだしも、俺に銛を投げるそぶりを見せたりもした。

いつか本当に投げそうで怖いから止めて欲しいのだがジルは楽しそうだ。

ジルは村の最年長の30歳。大きな背中、太い腕。割れたアゴ。村で唯一の移住前からの漁師である。漁と言っても湖での投網だそうだが。

それはいいとして、いくら考えてもジッタをやり込めるアイデアは浮かばないのだが面白いことに現実はジッタを追い込んでいるようだった。

そこで俺はその線に乗っていくことにした。

漁の時も食事の時もなるべくジルの近くに居てなるべくサポートするようにする。

ジルがアレと言えばアレを持ってきて、コレと言えばコレを片付ける。

反抗期で父親を避けているジッタの替わりになったカタチだ。

ついでに、とうさんにはこんな話をしておく。

「ギルドの日誌読んで思ったんだけどジルさんの判断はいつも正しいよね。バルドムが言ってたけどジルが村長じゃなきゃこの村はとっくに撤退していただろうって」

そうすると今度はとうさんがその話をジルに伝える訳で、そうなるとジルも「苦しゅうない」感じになってくる。

さらにジルには昔の話を訊いてみたりもした。村の男たちなら誰でも知ってる話だが、敢えてジルに。

「日誌を読むと網漁のほうが魚が多く獲れてたのに、どうして網をやめて銛の漁を選んだんですか?」

「うむ。良い質問だ。網は浜で引くと海藻まで根こそぎ獲っちまう。そうすると小魚が居なくなる。そうするとそれを狙う大きい魚も来なくなっちまう。

川もそうだ。川に網を張ると遡上する鮭を根こそぎ獲ることができる。だが、そうしたら生まれてくるハズだった鮭の子供が生まれなくなっちまう。そしたら次の年、鮭は戻って来るか? 来ないだろ?

ギルドは根こそぎ獲れっていうさ。

でもあいつらは村のことを真剣には考えてない。

魚が獲れなくなったら俺たちを放り出すだけだろう。

オミよ、皆もよく覚えておけ。

その年が良くても次の年が悪いようならそのやり方は間違ってる。

そのやり方は続けちゃならねえんだ」

こうしているとジルと俺が師弟関係のようになってくる。

そうなれば他の大人たちも俺を下には置かない。親しげに話しかけてくるようになってきた。

和気藹々である。

まあ、俺の中身は32歳のおっさんなのだから子供たちより気が合うしな。

一方でジッタは反抗期も相まって大人たちのなかで孤立していった。

偶然ではあるがジッタをやり込めるという意味ではもう充分成果をあげていると言えよう。

しかしイータに近寄らせないという点においては何も対策が取れていない。

むしろ孤立を深めたジッタが荒ぶる性欲を乱暴なカタチでイータにぶつけないか心配になってきた。

最近ジッタは大人も子供も避けて独りでいることが多くなってきていた。

俺を睨みつけてくることこそあまりないが、この世の全てを憎んでいるような目になっている。

そりゃそうか、村の初めての子で村長の長男。大人からチヤホヤされて、子供たちには威張り散らかして生きてきたんだ。

初めての孤立、初めての疎外感。

プライドや思春期特有の気持ちのざわめきも邪魔して誰にも相談できないのだろう。

いやあ、なんだか気の毒になってきた。

冷静に考えれば32歳のおっさんが13歳のガキをやり込めてるんだから、これは良くない。

人として最低なのは俺の方かもしれない。

さて、どうしたもんか?