軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「最後のアレをやったのは君たちの隊かい?」

そう声を掛けて来たのはバルベリーニの黄色い軍服の連中だった。

「我々というか、こちらのオミクロン殿が」

「まさか。だって、こんな子供が?」

「オミ殿はもう成人してらっしゃる」

「馬鹿なことを言うな、あの規模だ。重ね掛けか何かだろう?」

「重ね掛け?」

俺はそこが気になった。

確かに同じ魔術を数人で同じ場所に掛ければ威力が倍増しそうだ。

「ああ、だって見たところ最初は旋風が起きて枯葉を集め、そこにライトニングが落ちて爆炎が上がっただろう?」

確かにそんな感じだったかも。

「俺たちは今年のためにフレイムピラーの重ね掛けの練習をしていたんだ。しかしそれではああはならなかったぞ」

「それは見てみたかったですね。可能なんですか?」

「詠唱が少しでもズレると逆に炎が小さくなるんだ。とても難易度が高い」

ああ、プラス波とマイナス波がぶつかるみたいな事が魔術でも起きるのか。

とても興味深い。

「教えろよ。君たちはあれをどうやったんだい?」

俺たちの隊の一人が憮然として応えた。

「さっきも言ったろう? オミくんがひとりでやったんだ」

「やれやれ、さっきの式典の意味が分かってないのかよ? 僕らはひとつのパンを分つものだ」

「それで?」

「新開発の魔術をこれみよがしに見せつけておいて種明かしはナシってのは無いんじゃないかって言ってるんだ。それとも国軍を通して開示請求をくらって全国の魔術兵にその新技術のネタを知られた方がいいのか?」

ああ、なるほど。

新技を開発してその技術を秘匿してると勘違いしてるのか。

「あの、僕はですね、、、」

「おお、盛り上がっとるな」

「リサ様!」

「長官!」

不意に現れた長官はテーブルに近寄ると無造作にサンドイッチに手を伸ばし頬張った。

「やはりこちらの方が美味いな」

慌てて誰かがワインを持ってきて手渡した。

「うむ、ありがたい」

受け取ったワインをグビリと飲み込む。

一応は王族なんだから毒味とかした方がいいんじゃないの?

しかし俺の心配とは別にこの場は大歓声に包まれた。

「リサ様が我々と同じ食事を摂られた!」

「東方統括部長官が我々と盃を共にされた!」

まあそうか。

王室ってアイドルみたいな側面もあるし、そう思えばこれも突然始まった握手会みたいなもんか。

「長官殿、お聞きください。ポリオリは先の魔術を友好国である我々に秘匿するつもりなのです。この少年が放ったなどと誤魔化して」

「ああ、こいつは私の弟子なのだ。此奴の使う魔術は私のと同じく古エルフの呪われた魔術だ。詠唱が聞こえたのだとしても決して真似しようなどと思うなよ」

長官はベリーとチーズ両方を口に放り込んで、ワインで流し込んだ。

「ううむ、美味い。故郷の味は良いものだな。お前らも食える時に食っておけよ? うっかり国軍などに入ると好きに飯も食えん」

「あの、リサ様、、、」

長官はナプキンで口を拭い、皆の目を見渡して続けた。

「私が魔眼持ちであることは諸君らも知っての通りだ。故に滅多な事では弟子は取らん事にしておる。こいつはおそらく最初で最後の特別だ。なにしろ此奴は魔力を身体に留める事もできず盛大に垂れ流しながら齢十まで生き長らえていたバケモノだ。あの量をお主らが撒き散らしたならおそらく七日と身体が持つまい。お主らも魔力切れの辛さは知っておろう?」

仲間の筈だったポリオリの魔術兵が俺から少し距離を取った。

怖がらなくて大丈夫だってば。

長官もそのくらいでやめてあげて。

長官はひときわ声を大きくしてホール全体に語りかけた。

「バルベリーニ兵。お主らの重ね掛けの研究は無駄にはならん。魔術の進歩の停滞を突破させる可能性がある技術だ。研鑽を続けよ! そしてポリオリ兵。お主らの魔術の精度は非常に高い。オミを見習おうなどと思わず、今のまま精度の高みを目指せ。まだまだその先があるぞ!」

そしてグラスを掲げる。

「聞け、両軍の魔術兵よ! 諸君らの魔術は国軍の魔術兵にも決して劣らんことを私が保証しよう! そして諸君らが働く意義をいま一度思い出して欲しい。領民を豊かにする事は国民を豊かにする事だ。道も開かねば発展も進まん。明後日にはお互いのキャラバンが行き交うことになろう。バルベリーニのワインとポリオリのガラスが交流する。そして組み合わさって他領まで届く。この美味い酒は互いがあってのものだ。それを思い出せ! お互いを称え合い、今宵は存分に楽しもうぞ! キップス!」

「キップス!」

この場に居る百人を超える唱和で耳が裂けるかと思った。

そして全員がグラスを一気に空けてしまったので皆が酒を取りにザワザワと壁際に向かった。

「長官、助かりました」

「こうなることは予測できたしな。それより王子に呼ばれている。ゆくぞ」

「あ、はい」

俺はグラスを置いて長官に付いていった。

後ろを歩いてふと気づく。

長官は海軍の白い軍服を着ていたが、デザインが変わっていた。

上着の丈が短くなっていて、そしてパンツがぴったりとした感じのスリムタイプになっている。

それによりウエストの細さとヒップの丸みが強調される。

俺はハッとした。

「長官、随分とお痩せになったのでは?」

「むふふ、分かるか? お前とやったトレーニングを続けていたら、いつの間にかパンツが緩くなっていたのだ」

「素晴らしい! 継続はチカラなりですね!」

「うむ。しかしお前も随分と肉が付いてきたではないか」

「ええ。よくして頂いてます」

王子との剣術の賜物だろうな。

そしてホールの戸口の前まで来ると長官は振り返ってまた大声を挙げた。

「諸君! 悪いがオミは連れてゆくぞ。此奴が酔っ払って魔術を暴発させ部屋中を皆殺しにするならば上の連中の方が面白かろう?」

俺は驚いた。

なんて不謹慎な呪いジョークだろうか。

そこに王族も含むなら不敬罪とかに当たるのではないだろうか?

大丈夫? 打首とかにならない?

魔術兵たちの多くは大爆笑だが、何人かは苦笑いなのでやはり多分ギリギリのジョークなのだろうな。

俺が言ったんじゃないのにヒヤヒヤする。

誰かが呼応した。

「長官殿に乾杯! キップス!」

「キップス!」

長官は軽く手を上げ、俺たちはホールを出て行った。

俺も頭を下げてから続いた。

クラウディオ隊の皆、紹介できなくてごめんよ。