軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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長官に付いてホールの前室を抜け、階段を上がっていく。

さっき通った細い裏道みたいな細い階段とは違い横幅が広い。

王族同士が並んで通れるようになっているのだろう。

なので長官の横に並ぶ事はできるのだが俺は身分が低いので長官の後ろを歩く。

目前のヒップが左右に揺れる。

以前の長官はもっと全体的にもったりとしていた筈だ。

長官に筋トレを勧めた時に引き締まった尻という言葉に強く反応していたが、ここまで変わるとは思っていなかった。

軍靴の低い踵が音を立て、長い脚、筋肉質な丸い尻、引き締まったウエストが躍動する。

その先は短ラン(?)に包まれ、長い髪は纏められ白い軍帽に押し込まれている。

華奢な首が目立つ。

下手にスカートやドレスに身を包むよりもよっぽど色っぽい。

いや、これは俺の好みの問題か。

いやいや、全人類の半数くらいは男女関わらずこの良さは理解できる筈だ。

「長官。いい人でもできたんですか?」

「なんだそれは?」

「だって長官めちゃくちゃキレイになってるじゃないですか。よく言いません? 恋する女はキレイになるって」

長官はため息をついた。

「褒められてまあ悪い気はせんが、カイエンには私の眼鏡にかなう者は居らなんだ。むしろネチネチと嫌味を言ってくる新しい副官たちにムカついて、剣術と馬術、寝る前の筋トレが捗ってこうなった」

「それは残念でしたね」

「お主はどうだった? ポリオリでは何をしていた?」

「クラウディオ王子に大変良くして頂きまして、剣術や乗馬を教わっていました」

長官が振り返る。

「そうなのか? 私が聞いたのはお主がクラウディオの教師になって城中の年寄りに鞭打って授業を手伝わせていたのだとか」

「ええまあそういう側面もあります」

俺の返事を聞いてくすくすと笑う長官の横顔はなんだか年若い少女のようだった。

もちろんまだ二十代前半なのだから少女でもおかしくないのだが、こんなだったっけ?

俺が偉い人の口調に慣れただけかも知れないけど。やはり何か一味違う。

何だろう、、、?

「あ、メイクだ! 長官メイクなんて珍しいですね。よくお似合いです」

「煽てるな。軍服だし要らんと言ったのだがメイドに泣いてせがまれて許した。紅はさっき落ちてしまっただろうがな」

ああ、ワイン飲んで口を拭いていたな。

「それでも華やかで若く見えます。お綺麗です」

「大して変わらんだろうが。なのに小一時間は掛かったぞ。意味がわからん」

階段を登り終えると一人の女性が小走りで近寄ってきた。

ホールの前室には多くの執事たちが控えていた。

それに来客者も多くここに居る。

貴族でも位が低い人なんかは王族と一緒の部屋だと場違いみたいのがあるのかも知れない。

「まあリサ様、化粧をした時は飲食はご遠慮なさるよう言ったではありませんか、、、!」

女性がヒソヒソと声を荒げる。

その様子から察するに子供の頃からお世話してたお世話係なのだろう。

女性はドレスを着込んでメイクも髪もゴージャスに決めている。

軍服の長官と一緒だとなんか不釣り合いだ。

きっとアレだな。

普通の軍人として扱うのを嫌がったポリオリの面々が無理矢理お付きの人を付けたんだろうな。

「かつての部下たちと杯を交わすのも仕事のうちだ。仕方あるまい」

「言い訳は聞きたくありません。さ、こちらへ、、、」

トイレだな。

いや、女性用だから化粧室かな。

付いて行く訳にもゆくまい。

俺は端に寄って待つ事にした。

ここはホール前室といえど広々しており、多くの花が飾られ床には絨毯が敷かれてとても豪華だ。

居心地は悪い。

突っ立つ以外にやることがない。

ここに居るひとはみんな俺よりも立場が上なのだろうし変にジロジロ見る訳にもいかない。

仕方なく絨毯の柄を見る。

絨毯は幾何学模様の羅列で大変美しい。

サイズもこの部屋に合わせて作られているようだ。特注なのかな?

この世界は中世ヨーロッパ風なところもあるがこうした所は現代風だ。

本当の中世ならば絨毯は床に敷かずに壁に飾っていた筈だ。

絨毯は中東からの高級な交易品で土足で踏みつけるよりも飾られて目を楽しませたという。

ふと強い視線が気になってそちらに目をやるとポリオリに到着した時にお世話になった門番をしていたミスター偉そう氏がこちらを憎悪の目で睨んでいるのに気が付いた。

あの人、ここに居るってことは本当に貴族階級だったのか。

これも最近知った事だが門兵とは、兵と名は付いているけれども城の警備を専門とする部署であり領軍とはほぼ関係が無いらしい。

どっちかって言うと警備会社みたいな扱いなのだろう。

つまり貴族でも下位の家の者が、兵でもあまり腕の立たない者が就く仕事なのだそうな。

思えば前世でも警備の仕事というと、歳がイってからリストラされたおじさんとかが仕方なくやる仕事のイメージがある。

いやいや、仕事に貴賎などないよ?

門兵でもルドヴィコさんなんかはいい人だったしさ。

しかし交代制で二十四時間、寒い冬も暑い夏も半外で見回りを延々とするなんて辛いよ?

つまり羨望の眼差しで見られる職とは言えないのではないだろうかってことだ。

そう思えばミスター偉そう氏が己の承認欲求を拗らせているのも理解はできる。

理解はできるのでそれをこちらに向けないで欲しい。

こちらに近づいて来ないで欲しい。

目の前に立たないで欲しい。

何も言わないで欲しい。

「お前、ここで何をしている?」