作品タイトル不明
652話 のんびりでうみゃー!
やってきました早耳猫。アリッサさんに暇かどうか連絡してみたら、「今すぐでも大丈夫! むしろ今からきて! 今すぐ! ハリーハリーハリー!」と言われたので、即行でやってきたのだ。
イワンたちとはもう分かれている。一緒に行って分け前を渡すって言ったんだが、それも辞退されてしまった。
イワンも少しは情報料を受け取る資格はあると思うんだがなぁ。まあ、土下座してまで拒否されたら、強くは言えないのだ。というか、土下座って……。
「どうも」
「待ってたわよ!」
早耳猫の店舗に入ると、仁王立ちのアリッサさんが迎えてくれる。両腕を天に向かって高々と突き上げているのは、何故だ? レッサーパンダの威嚇ポーズ? 万歳で歓迎してくれてる?
まあ、テンションが高いのは分かった。
「それで! 情報よね? 売ってくれるんでしょ? その黒い子の情報と、ドベリアの公園の情報!」
おっと、ある程度知っているらしい。まあ、メルムは目立つし、ドベリアではイワンたちと一緒に遊びまくったしね。どこかで誰かに見られて、それがアリッサさんの耳に入ったのだろう。
俺は頭上でポヨポヨしていたメルムを両手で持ち上げると、興奮した様子のアリッサさんの前に差し出した。
「ニュ?」
「ス、スライムなの? それとも違うモンスター? あ! 浮いてる! 浮いてるわよこの子!」
「ニュー」
「プニプニ! この子プニプニしてる! 可愛い!」
どうやら、アリッサさんはプニプニ好きだったらしい。メルムを前に、興奮が収まるどころかさらにテンションを上げている。
その後数分。メルムをプニプニし続けたアリッサさんは、ようやく落ち着きを取り戻していた。
「こほん。ごめんなさい」
恥ずかしそうにしている。まあ、気持ちは分かるけどさ。ここはスルーしてあげるのが人情ってもんだろう。
「この子はメルム、アイネとリリスの卵から生まれた、闇の精霊です」
「闇の精霊! いるとは思っていたけど!」
曜日に関する伝承に闇と光が出てくるので、その属性の精霊がいることは予想していたらしい。
「風精ちゃんと悪魔ちゃんの間に生まれたのよね? やっぱり、悪魔ちゃんが闇属性ってことなのかしら」
「多分そうだと思います」
「最初から覚醒持ちって言うのも、凄いわね。初めて見たわ」
「それは、覚醒孵卵器のおかげですねぇ」
「ああ! なるほど!」
覚醒系のアイテムは色々確認されているが、孵卵器の効果が判明したのは今回が初めてであるらしい。
「悪魔は現状リリスちゃんだけしか見つかっていないけど、精霊の可能性を感じる良い情報だわ」
確かに、光の精霊を生み出す方法も想像できるし、色々と考察が捗るからね。
さらに、血統の覚醒についても、情報を伝えておいた。
やはり、ドリモがダメで、メルムには使える理由が気になったらしい。ただ、アリッサさんも正確な理由は分からないようだった。
「蜂の王ね」
「犬の王ってスキル有りましたよね。あれと同系統のスキルだと思います」
「実は、蛙の王って言うスキルも発見されてるわ。蛙に関係するスキルの威力が上昇するってやつなんだけど」
話を聞くと、毒関係や水魔術。さらに、魚の養殖にもボーナスが入ったという。僅かに入手できていたレアな魚が生まれる確率が大幅に高まり、今まで見たこともない珍しい魚がゲットできるようになったそうだ。
「クママちゃんの養蜂にも、絶対影響があると思うわよ」
確かに、ロイヤルゼリーよりもレアなアイテムがゲット可能かもしれんな。これは楽しみになってきたぞ!
さらに、もう1つ面白いことを教えてもらった。
クママと同じようにロイヤルハニーベアに血統の覚醒を使ったプレイヤーがいたらしいんだが、そのプレイヤーのクマには蜂の隊長というスキルが発現したという。
これは、完全に蜂の王の下位互換のスキルだった。どうも、隊長、将軍、王の順番で効果が変わっていくらしい。
同じモンスなのに個体差があるのは、親の遺伝子の性質が影響しているのだと思われた。うちのクママは購入した卵から孵ったから正確には分からないけど、特殊なご両親だったのかもしれない。
「さて、結構情報のやりとりしたけれど、これだけじゃないわよね?」
「おっと、そうでした」
「もう忘れないでよね」
「はは、すいません」
満足しちゃって、すっかり忘れてたぜ。
「えーっとですね、きっかけはビステスの公園だったんですけど」
「うん? ドベリアじゃないの?」
「はい。ビステスです」
なんか、アリッサさんの背筋が急に伸びたな。顔は笑顔のままだけど、ちょっと迫力が出たように思える。背筋が伸びて印象が変わったからか?
まあ、俺の気のせいか。俺はとりあえず、ビステスの公園でビリーさんに出会ったところから、ドベリアののんびり堂に案内されたところまでを、ノンストップで一気に語る。
のんびりしてたらビリーさんに声を掛けられ、のんびり庵に連れていかれたこと。そこで、のんびりポイントの存在を知り、様々なNPCと出会い、色々なアイテムをゲットできそうだということ。その中には、4次職の秘伝書があったこと。ああ、あとは妖怪のノンビリモノとの出会いも忘れちゃダメだろう。
のんびりしてただけなのに、色々な出会いがあったよなぁ。
なんかアリッサさんがずっと同じ表情だから、急かされるように語り続けてしまった。やっぱ、笑顔に妙な迫力があるんだよね。不機嫌にも見えるけど、なんか悪いことやっちゃった?
全部語るつもりだったからいいんだけど、超早口でまくし立ててしまったぜ。
「って感じなんですけど……」
「……ぅぅ」
お? これは?
「ぅぅぅみゃぁぁぁぁ! 過去1レベルのやばさなんですけどぉぉぉぉぉ! ぬあぁぁぁ!」
よかった。いつものやつだ。不機嫌に見えてたのは気のせいだったか! いやー、今回もいいうみゃー頂きました!