作品タイトル不明
649話 商人?
「どうも、プレイヤーごとに別々になるみたいだな」
「ですねぇ」
俺は、のんびり庵の甘味処でイワンと情報を交換し合っていた。
実は、既にイワンはのんびり庵に入れるようになっている。公園でのんびりして、ビリーさんに声を掛けられることに成功したのだ。
ただ、のんびり庵の奥に、一緒に入ることができなかった。同時に歩を進めたはずなのに、イワンの姿が消えていたのである。数秒待っても、イワンが後から入ってくるようなこともなかった。
甘味処まで戻ると、イワンが少し遅れて戻ってくる。
それから何度か行ったり来たりして試したが、奥へと通じる通路の途中で、別々の場所に割り振られているらしかった。パーティを組んでいても、同様であるらしい。プレイヤーごとで分けられてしまう。
「NPCはいたか?」
「まだいなかったですね」
「やっぱ、少しのんびりしないとダメか。どうする? 俺も興味あるし、のんびりしてく?」
「いいんですか?」
ということで、俺たちは2手に分かれてのんびりすることにした。一応、3時間経ったらここに戻ってくるように約束している。
「さて、俺たちものんびりするか!」
いやー、最近のんびりしてばっかで何もしてない気がするけど、これも検証とイベントのためだからねぇ。仕方ないよな。ガンガンのんびりするぜ!
「あー……足湯最高ー」
「――♪」
「ヒムー」
皆でゆっくりとお茶していると、入り口からこちらに向かって歩いてくる人影があった。仕立ての良いゆったりとした服を着こんだ、恰幅の良い男性だ。
「やあやあ、初めまして」
「初めまして」
「のんびり庵の新しいお仲間ですかな? 私は商人のノルジンと申します」
「お、俺はテイマーのユートです」
商人さん? 次に出現するNPCがいるのなら、料理や調合関係かと思っていたんだが……。そもそも、俺は商人に関係したスキルなんか、全く持ってないぞ?
なんで商人?
俺が首を傾げている内にも、ノルジンがさらに話しかけてくる。
「お近づきのしるしに、イベントに一緒に行きませんか?」
やっぱり、他のNPCと同じようにイベントに誘ってくれた。スキルや職業に関係あるNPCが出現するんだと考えていたが、そうじゃないのだろうか?
でも、テイマー、ファーマー、妖怪と、ここまで関係あるNPCばかりなのだ。これが偶然とは考えにくい。
「うーむ」
「都合が悪かったかな?」
「あ! いや、そういうわけじゃないっす! ぜひご一緒させてください!」
「おお! それは嬉しいですね!」
ノルジンさんが俺を連れて行ったのは、町の外れの森の中であった。そこで焚火会が行われるという事だ。
まあ、特記することもない、名前通りの会だったね。薄暗い森の中で焚火を見つめながらボーっとするのは、無心になれて楽しかったけどさ!
そうしてのんびり庵に戻ってくると、すでにイワンの姿があった。
「おお! 待たせちゃったか?」
「大丈夫です。俺も5分前に戻ってきたばっかなんで」
「やっぱ、テイマーのノモルさんが出たか?」
「はい。まさに」
ただ、連れていかれた先は原っぱではなかったそうだ。まあ、この時間じゃ星見なんてできないもんな。
イワンが連れていかれた先は浅い露天風呂のような場所で、そこで寝転がって空を見るというイベントだったらしい。それはそれで楽しそうだよね。
「のんびりテイマーの秘伝書は追加されてたんで、あとはNP溜めるだけです」
「おー、転職したらぜひどんな職業か教えてくれよ」
「……いいんですか?」
「なにが?」
「いえ、白銀さんならそう言うだろうなって思ってました。それよりも、そちらはどうだったんですか?」
「実は、ちょっと謎でさ――」
俺は、何故か商人のNPCが出現したという話を聞かせる。
「どう思う?」
「うーん? 交換アイテムはどうなってるんですかね?」
「そうだな! ちょっとチェックしてくるから、待ってくれ!」
俺は奥へ向かいササッと交換リストを開く。すると、そこにはしっかりと『のんびり商人の秘伝書』が表示されていた。
他にも、スキルが増えている。
「と、いうわけで、他のNPCと同じだったよ」
「でも、白銀さんの所持スキルに、商人系はないと……」
「そうなんだよ」
「じゃあ、所持品とか称号はどうです? 特殊なアイテムとか、商人に関係してそうな称号とか」
「ほほー、なるほどね」
言われてみると、その辺が関係してる可能性はあるか。少し調べてみると、これが関係しそうだなって言う称号がいくつかあった。
「宵越しの金は持たない、宵越しの金は投げ捨てる、ミリオンダラー、ミリオネア辺りが怪しいな」
「うわー、それ全部持ってるんですか?」
「うん」
「でも、確かにそれだけあれば、商人系のフラグ立っててもおかしくはないかもしれませんね」
イワンの言う通りかもしれない。となると、のんびり庵に出現するNPCは意外と多いのかもしれない。俺ももう何度か、のんびり庵に通わないとダメかね?
まあ、とりあえず今回のビステスでの検証はこんなもんでいいだろう。
「それじゃあ、東にあるドベリアを目指しますか?」
「おう! とは言え、ボス倒さなきゃならんけど」
「そこは任せてくださいよ!」
イワンはすでに解放戦を突破しており、周回さえしているらしい。
「必要なアイテムとか、ハメ方とかも分かってますから!」
「おー、頼もしいな!」
経験者がいれば何とかなりそうだ。ドベリアっていうのは、どんな都市なんだろうな?