作品タイトル不明
648話 サトリと魂繭
イワンとの妖怪探しは、捗り過ぎるくらいに捗っていた。何というか、楽勝?
イワンのパーティが非常に強いのもあるけど、残っていた2体の妖怪と友誼を結ぶには、あまり戦闘力が必要ではなかったのである。
まず最初に向かったのは、東の大山地。ここにはサトリという妖怪がいた。
毛むくじゃらの猿のような妖怪なんだが、こいつはほとんど戦闘をする必要がなかったのだ。
山を歩いていると、猿のような影が前方に出現する。これを延々追っていくと、サトリであると判明する訳だ。何も知らないと、そこからさらに追いかけっこをし続けることになるんだが……。
この追いかけっこが罠だった。なんと、追ってはいけないらしい。サトリの影が見えても無視して違う方向へ行くと、何度もサトリが回り込んで姿を見せてくる。
しかし、それでも無視しているとモンスターをけしかけてくるようになるが、これからも逃げるのが正解だった。
そうして30分ほど完全に無視し続けると、サトリが近寄ってきて友誼を結べるのだ。
浜風は、こんな難解なルートを良く発見したよなぁ。さすがだ。
敵対時はニタニタと笑う不気味な猿の姿なんだが、友誼を結ぶと可愛い子ザルに変化していた。あれならモフれるね。
で、第10エリア最後の妖怪、魂繭であるが、こちらも特殊な妖怪であった。出現するのは、西の大荒地。
俺がウェリスと出会った場所でもある。
ここで魂繭を探すには、まずは蛾を見つけないといけない。この荒れ地を飛んでいる蛾の中に、羽が白ではなく薄青い種類がいる。そして、その蛾の後に付いていくと、魂繭がいるのだ。
それだけ聞くと簡単そうだろ? 俺も最初はそう思ったんだが、この荒れ地には蛾を捕食するモンスターや動物がたくさん生息していた。
そいつらから蛾を守り続けないといけないのである。さらに、蛾がときおり鱗粉を放ってくるのだ。これは、こちらを恐怖、激怒、怠惰など、精神的な状態異常に陥らせる効果があった。
怠惰状態になったせいで動かなくなったクママをみんなで担ぎ上げたり、蛾を攻撃しようとする激怒状態のファウを必死に捕まえたりと、なかなか大変だったのだ。
「クーマー」
「よりによってなんでクママが怠惰に!」
「クーマーマー」
「尻掻くなよ! ボリボリすな!」
「クマー」
「重いー!」
そんな感じで必死に蛾を追いかけていくと、木の股に張り付く魂繭の姿を発見することができるのであった。かかった時間以上に、疲れたね。
魂繭の位置は発見されるたびに変わるらしく、他のパーティに教えてもらうこともできなかった。
魂繭は青白い光を放つ大きな繭の姿なんだが、これでどう戦闘するのか? 気になったのですぐに試してみたんだが、こいつは浮くことができるらしい。
そうしてフワフワと浮遊しながら、状態異常をもたらす鱗粉を放つのである。
因みにサトリは避けタンクだった。ヘイト集めも上手く、陰陽師にとっては一番の当たりかもしれない。能力の効果は、自身の回避率上昇と、敵の状態異常耐性の低下という能力だ。
リリスと相性がいいだろう。
「いやー、本当に助かったよ。イワンに案内してもらってなかったら、メチャクチャ大変だった」
「こちらこそ、道中楽しかったです」
ただ、どう考えても俺が貰い過ぎてるんだよね。道中の素材は折半で、妖怪の情報はイワン持ち。戦闘だって、イワンが主力だ。
血統の覚醒の情報くらいじゃ、釣り合わない。ノンビリモノの情報ったって、仲間にする方法を教えたわけじゃないしな。いや、ノンビリモノの手に入れ方を伝えれば、十分対価になるんじゃないか?
妖怪と友誼を結ぶのにも、積極的みたいだし。
「サトリと魂繭のお礼に、ノンビリモノを仲間にする方法を教えるよ」
「え? いやいや、そんなの聞けないですよ!」
「俺が貰い過ぎだからさ」
俺は遠慮するイワンを宥めながら、ノンビリモノとの出会いを語った。とは言え、俺も全部を把握しているわけじゃない。
ビステスの公園で遊んでいたらビリーさんに声をかけられて、のんびり庵を発見。あとは、そこでNPCたちと偶然出会ったって感じだ。
俺の話を聞き終わったイワンが、疲れたような様子で首を振っている。少し長かったかな?
「えーっと、まずはのんびり庵というお店ですけど、そこに行くにはビステス内ののんびりスポット? そこで一定時間、のんびりするのが条件ぽいですね」
「うん。それで間違ってないと思うぞ」
「その後のNPCですが、プレイヤーの技能や職業が影響しているんじゃないですかね? いくら何でも、テイマー、ファーマー、妖怪と、白銀さんに有益そうなNPCと立て続けにであうのは運が良過ぎますから」
「多分そうだろうなぁ。俺も最初は運が良過ぎると思ったし」
他のプレイヤーの場合、全然違うNPCが出現するんだと思う。のんびり庵の話をしていたら、イワンが手を顎に当てて何やら考え込んでいる。
「どうした?」
「俺、1つ思い出したんですけど、東のドベリアって行きました?」
「いや、まだだ」
「実は、ドベリアのギルドの牧場にも、お爺さんがいるんですけど……。これって、関係ありそうですよね?」
「確かに!」
似たイベントがこのビステスだけでしか起こらないってことはないだろうし、東のドベリアにものんびり庵があるのかもしれない。交換できるアイテムとか、出現NPCが違う可能性だってあるだろう。
「似た公園なんかもありますし」
「イワン、この後はどうするんだ?」
「勿論フリーですよ! お付き合いします!」
さ、誘ったわけじゃなくて、ドベリアに行ったら検証してみてって言おうかと思ったんだけど……。
「ボスも倒さなきゃいけないから、俺のことは気にしなくてもいいぞ?」
「そこも含めてお付き合いしますよ」
「いやいや、そこまでしてもらう訳にはいかんって」
「こっちが貰い過ぎなので、それくらいはさせてください」
うーむ。イワンの好意を無下にするのも悪いしなぁ。
「わ、分かった。お願いするよ。でも、先にビステスののんびり庵に行ってみようぜ」
「いいんですか?」
「勿論だ。ドベリアの解放方法の推測もできるし、検証は重要だろ?」
ここでのんびり庵に辿り着くためのヒントを得られれば、ドベリアでの行動の指針になるのだ。
解放戦を手伝ってもらう代わりに、のんびり庵の発見をお手伝いすればいいだろう。とりあえず、直接のんびり庵に行ってみたんだが、イワンには見えないようだった。やはり、ビリーさんに招待してもらわねばならないんだろう。
「それじゃあ、公園にいきましょうか?」
「おう! 頑張ってのんびりしようぜ!」
「クックマー!」
「シャシャー!」