軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

629話 黄都で叫ぶ猫耳

第11エリアの村を色々と見学して回った俺たちは、再び黄都へと戻ってきていた。しかし、転移陣を出た直後に、驚きで動きを止めてしまう。

「うわっ。なんじゃこりゃ……」

黄都の人口密度が、ヤバいことになっている。どう考えても、ワールドアナウンスを聞いたプレイヤーが、集まってきてしまっているのだろう。

ただ、あのアナウンスでは、第11エリア解放としか言ってなかったはずなんだが……。黄都がバレたのはなんでだ?

俺たちが少し歩くと、ザザッと音を立ててプレイヤーたちが道を空けてくれた。超見られてるんだけど! あれ? 解放したのが俺たちってバレてる?

いや、そうか、出発の時に、大勢に見られたもんな。俺だって、ホランドとコクテンとKTKが一緒に出掛けてくの見たら、絶対に何かあると思う筈だ。

凄い視線の圧力に耐えながら進んでいくと、待ち合わせの相手が見えてくる。

「ユート君! こっちこっち!」

「あ、どーもです。その、凄いっすね」

「そうねぇ。ぐふふふ」

なんか、すっごいいい笑顔! あえて言うなら、強欲商人風?

「じゃ、移動しましょ! こっちこっち!」

「ちょ、アリッサさん? 待って下さい!」

「早く早くっ!」

俺たちが黄都に戻ってきた目的は、早耳猫に色々な情報を売るためだ。事前に連絡してあったんだけど、アリッサさんの勢いが凄まじい。小走りのアリッサさんに置いていかれそうになるし、テンションが高すぎないか?

まだなんの情報を売るかは伝えていないんだけどな。いや、面子が面子だし、期待されているんだろう。

とりあえず今回は、俺、アカリ、コクテン、ソーヤ君、ホランド、KTKでやってきている。正直、「俺いらないんじゃね?」って思ったけど、何故か一番前だ。

俺だって、もう自分が最底辺だなんて思ってないよ? なんせ、最前線の解放に関わっちゃったからね! それに、第二陣もいるし、さすがに底辺ではなくなっただろう。

トップ層――は言い過ぎか? ホランドやコクテン、ジークフリードたちの戦闘を見た後で、トップ層だなんて口が裂けても言えん。上級者――もちょっと重荷すぎる。上級者面してる自分が、想像できないもん。

でも、中堅くらいにはなったよね? 新人テイマー相手に、偉そうに講釈垂れて悦に入るのが許されるくらいには、俺も成長しているはずだ。

だからと言って、この面子の代表者面するのは……。いや、クエスト発生させたのは俺だから、おかしくはないんだけどさ。

支店の応接室のような場所に通された俺たち。ソファには俺だけが座らされる。やっぱリーダー扱い!

「さて、話を聞かせてもらいましょうか?」

「あー、そうですね。どっから説明したもんか」

「全部! 全部話してちょうだい! 最初からね!」

「は、はぁ」

コクテンたちを確認すると、全員が頷いている。いや、事前に確認したから、話してしまっていいかどうかの確認じゃないよ? 代わりに話さないかどうかの確認だよ?

ただ、やはり俺が情報を語らねばならないらしい。

「じゃあ、アカリと一緒に妖怪探しをしていて、ウェリスに会ったところから」

「ウェリス?」

「狼獣人のNPCですね」

「なるほど? スクショは? あるのよね?」

「え、ええ」

アリッサさん、そんな顔を近づけないで! 鼻息当たりそう!

「これです」

「可愛いわね! それで、この子が何かのイベントの鍵に?」

「まあ、そうですね。ウェリスに、獣人の隠れ里に連れて行ってもらって」

「隠れ里ぉぉ! ええ? あ、新しい村ってこと?」

「は、はい」

いつも以上にグイグイなアリッサさんに、ちょっと戸惑っちゃうぜ。

「ああ、ごめんなさい。これじゃあ話が進まないわよね。続けて」

「で、その獣人の隠れ里で――」

住人は獣人だけしかいないこと。隠れ里ではないと言われたが、結界で隠されていること。洞窟が続いており、その先にレイドボスがいること。村で、ボス戦に必要な色々な情報が仕入れられること。

そして、ボス戦の詳細も色々と開示していく。

いやー、かなり大変だったからね。奇跡的に初回撃破できてしまったが、蘇生薬がなければ全滅していただろう。レイドメンバーも超豪華だったし。

他にも、罠や毒の作り方に、鍾乳石の使い方。事前に必要な準備の詳細などを語っていく。

ちょっと長くなってしまったが、皆が撮影していた映像も交えて、順を追って語る。ホランドやアシハナに奥義については隠さなくていいのかと尋ねたら、すでに早耳猫に情報を売却済みであるらしい。

あと、今回のレイドボス戦、全員が映像を撮影していたので、それも提供する用意があると伝えておいた。

「エリア解放までは、こんな感じですね」

「……」

何故か掲げた両手を左右に開いて、天井を見上げているアリッサさん。プラト〇ンのパッケージみたいなポーズだ。

最初は、碇ゲ〇ドウみたいに、両肘をテーブルについて、手を顔の前で組むポーズだったんだよ。これは前にも見たのだ。

ただ、話が進むにつれて段々と仰け反り始めて、最後には今のポーズになってしまっていた。その状態で、プルプル震えている。

「え? アリッサ君?」

「アリッサちゃん?」

「あの、アリッサさん大丈夫ですか?」

「猫さん、へいき?」

「ど、どうしたんだ情報屋?」

コクテン、アカリ、ソーヤ君、KTK、ホランド、同行者たち全員がオロオロしているな。ははーん、これが狙いか!

いつもの雄叫びをするにはやけに溜めるなーと思ったら、驚かせる対象は俺以外のプレイヤーたちであるらしい。実際、普段から情報屋を利用しない人からしたら、驚く光景なんだろう。慣れている俺でさえ、ちょっとびっくりしたし。

「……ぅぅ」

おお! くるぞくるぞ!

「ぅぅぅぅぅ……」

「ア、アリッサちゃん、どうしちゃったの?」

「情報屋? 回線に何かあったか?」

アカリとホランドが、思わずアリッサさんに近寄ろうとして――。

「うみゃあああぁぁぁっ! 予想こえすぎぃぃぃぃぃっ!」

「きゃぁぁ!」

「うおぉぅ!」

「うわっ!」

「……!」

「ひっ!」

アリッサさん渾身のロールプレイが炸裂だ!

両脇にいたアカリとホランドが、驚きの声を上げて尻もちをつく。

コクテンは軽く飛び上がり、KTKの尻尾タイプアクセサリーがブワッと膨れ、ソーヤ君が悲鳴を漏らした。いやー、さすがアリッサさん。トッププレイヤーたちをこれほど驚かすなんて!

「はぁはぁはぁ……。ごめんなさい、ちょっと取り乱したわ」

「あ、ああ。いや、アリッサ君、大丈夫なのかい?」

「ふ、ふふ。いつものことだから」

「あ、あれがかい?」

「ええ。ユート君を相手にするときはいつも出ちゃうの……。ふふふ、笑いたければ笑うがいいわ」

「いやいや、気にしなくていいから。その、いつもお疲れ様」

「お疲れ」

「お疲れ様です」

「お疲れ様、アリッサちゃん」

「情報屋のお陰で、俺たちは助かってるぞ?」

皆がアリッサさんを労っている。うんうん。アリッサさん渾身のロールプレイだもんね。でも、まだ情報はあるんだよね。ふふふふ、先走りましたねアリッサさん!

「あの、まだ情報があるんですが……。ある意味、ここからが本番っていうか?」

「……?」

「第11エリアの村まで行ってから、イベントが発生しまして」

「……!」

アリッサさんが百面相している。新しいリアクションを出してきたな!

「それがなんと、種族転生クエストなんですよね。いい情報でしょ?」

「……ぅうみゃぁぁぁぁ! やっぱたんないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

おお! 本日二回目! ダブルうみゃー出ました!